落葉松亭日記

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ウクライナ政変の実相

2014年05月04日 | 政治・外交
3月、ウクライナ南部クリミア自治共和国は住民投票の結果を受けて、17日にウクライナからの独立を宣言し、ロシアに編入を要請した。米国と欧州連合(EU)は同日、ロシアやクリミアの当局者らを対象とした制裁措置を発表した。(CNN)
その後、ウクライナではクリミアに呼応するかのかのように親ロシア派とウクライナ軍との衝突が各地で起き、死傷者が出ている。
ウクライナ各地で衝突 死者40人超、ヘリ2機撃墜
2014.05.03 Sat posted at 12:46 JST
http://www.cnn.co.jp/world/35047432.html?tag=top;topStories

ウクライナ南部で衝突
ウクライナ・スラビャンスク(CNN) ウクライナ東部で2日、同国の治安部隊が親ロシア派武装勢力に対し、これまでで最も大規模な制圧作戦を開始した。親ロシア派は、ウクライナの約10の都市・町で政府関連庁舎を占拠しているとされる。南部でも衝突が起きており、各地での死者は計40人を超えている。
ウクライナ東部ドネツク州スラビャンスクでは、ウクライナ政府のヘリコプター2機が親ロシア派に撃墜された。ウクライナ防衛省が明らかにした。ウクライナ軍がスラビャンスクで行った軍事作戦で、親ロシア派5人と市民2人が死亡したという。
ウクライナ防衛省によると、スラビャンスク近くの村でウクライナ軍が攻撃され、ウクライナの兵士2人が死亡したという。同省は、親ロシア派の武装勢力が、同地域の橋を封鎖するために女性を含む地元住民を人間の盾として使ったことを明らかにした。
黒海沿岸の都市オデッサでも親ロシア派とウクライナ軍が衝突し、地元警察によれば、少なくとも4人が死亡、40人が負傷した。
警察によると、戦闘の最中に労働組合の建物で火災が発生し、さらに31人が死亡したという。当局は当初、死者は38人と発表したていが、その後修正した。
親ロシア派と、ウクライナ軍およびキエフ政府支持派の衝突を受け、国連安全保障理事会は2日、緊急会合を開いた。ロシアはウクライナによる攻撃の停止を求めたのに対し、西側諸国はロシア政府が親ロシア派武装勢力に資金提供を行っていると非難した。

日本のマスコミでは、EU・米の制裁が善、ロシアが悪といった論調だが、実相はそうではないらしい。
ロシアと欧米、馬淵論文に注目せよ 2014/04/18
http://www.n-shingo.com/cgibin/msgboard/msgboard.cgi?page=960

 ウクライナ情勢とロシアのクリミア併合に関して、我が国に入る外電は、ほぼ全てウクライナのこの度の事態を、 親欧米の民主勢力と親ロシア勢力との衝突と観たうえで、 ウクライナの民主勢力をロシアのプーチン大統領が武力で弾圧しようとしている、 プーチンのロシアは、百五十年前にクリミアに軍隊を南下させた帝政ロシアに回帰して再びクリミアを武力で併合した、 と伝えている。
 しかし、民主勢力と専政勢力との衝突というお決まりの次元で、このウクライナ情勢を眺めて対処するだけでは、我が国は国策を誤る。
 このウクライナの危機の本質を、見事に摘出した論文がある。  それは、「正論」五月号に掲載された  元ウクライナ大使の馬淵睦夫氏が書いた論文 「『ウクライナ』で怯むな!   対露外交を深化させる世界的意義」である。
 この馬淵論文を、諸兄姉に、是非お読みいただきたい。

 とはいえ、本論文の骨格を私なりに記しておく。
 ウクライナ危機の本質は、ロシアの石油と天然ガスの天然資源を誰が支配するかを巡るロシアと欧米との戦いだ。
 その上で、馬淵氏と親しいウクライナの大学教授は、 「今回のウクライナの騒動は、マフィアとマフィアの争いだ」 とシニカルに見ていた。
 ウクライナの政変は、「民主化運動」ではなく民主化の衣を着た 「民族政権転覆活動」で、その背後にアメリカがいる。

 ソビエト崩壊後に生まれた新ロシアは自由主義経済を目指し、急激な市場経済化を実施したが、これを主導したのはアメリカの新自由主義経済学者のグローバリスト達だった。
 その結果、価格統制を外したので年率三百倍というハイパーインフレが起こりロシア庶民の生活は窮乏し、 同時に石油を含む国営企業の民間への払い下げは、一夜にして新興財閥成金を生み出し、ロシアは超格差社会に一変する。
 そして、エリティン時代の八年間でロシアのGDPは半減した。
 この状態を放置すれば、疲弊したロシアの天然資源は、アメリカが背後にいるグローバル資本家の手に落ちる。  よって、二〇〇〇年に大統領に就任したプーチンはロシアを建て直す為にロシアの天然資源を守ろうとした。ロシアのGDPの半分を占めるに至った天然資源を欧米の多国籍企業に牛耳られてロシアの建て直しは不可能だからである。
 よって、この時からアメリカを中心とした欧米つまりグローバリストとロシアつまりスラブとの戦い、即ちグローバリズムとナショナリズムの戦いが始まった。

 このように見てみれば、今までの西側報道には腑に落ちないことがある。
 今回のウクライナ危機が、ヤヌコビッチ大統領がEUとの連合協定を拒否したことを切っ掛けに起こったことは確かであるが、 親欧米の大統領の時は、EUの方が、ウクライナの加盟に反対していたのだ。EUの側がウクライナの加盟に反対していたという事実は意図的に報道されない。

 西側の報道機関は、ヤヌコビッチ大統領は、二〇一〇年の民主的な選挙で正当に大統領に選ばれた大統領であることを、何故か報道しない。
 この民主的手続きで選出された大統領を、欧米の支援のもとに暴力で転覆させたのが今の暫定政権であることもあまり報道されない。

   二月のソチオリンピックの開会式に欧米首脳は欠席したが、その理由はプーチン大統領が同性愛結婚を認めないからだという。
 しかし、二〇〇八年の過酷な人権弾圧を実施している中国の北京オリンピックの時には、欧米首脳はいそいそと出席していた。

 このように、欧米グローバリズムは、明らかにロシア・プーチンのナショナリズムに対して不当なレッテルを貼ろうとしている。
 このグローバリズムとナショナリズムの相克というウクライナ危機の本質を観れば、我が日本は、両者の共存のはかれる立場にある。
 ここに独自の日本外交創造の文明論的可能性が開かれている。
 以後詳しくは、  是非、今発売中の「正論」五月号の馬淵論文を読まれたし。

ウクライナの政変と情報戦の行くへ①』馬渕睦夫 AJER2014.3.7(5)
http://www.youtube.com/watch?v=4x2qZ-HYUJI