「米は世界の警察官」と云われているが、やや衰えが見え始めている。
中東ではそれを見透かしたように混乱が続いている。
中共も南シナ海、東シナ海へ侵略せんと虎視眈々と狙っている。
敗戦後、米に安保を依存し経済発展を遂げた日本もようやくこれではいかんと先日集団的自衛権を容認することにした。
何かと云えば歴史を振り返れという反日中韓の御用達メディアは「軍靴の足音が聞こえてきた」とかなんとか・・・コメンテータが日々「解説」をしているらしい。
米の押しつけがましさはあるにしても、衰えが亢進すれば世界の秩序はより一層乱れるだろう。
その時、日本はどうするか。
■「加瀬英明のコラム」メールマガジン
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「米国は世界の警察ではない」は本当なのか?
オバマ大統領が、よろめき続けている。
昨夏に、シリアに「制裁攻撃を加える」と発表したが、どの世論調査も「国外の紛争に介入する」ことに反対したのに怯(ひる)んで、立ち往生したために、50%以上あった支持率が、40%まで急落した。
オバマ大統領はシリアへの軍事制裁を撤回した時に、2回にわたって、「もはや、アメリカは世界の警察官ではない」と、言明した。
その後も、大小の失点が続いたうえに、この春、プチン大統領がウクライナからクリミアをもぎとったのに対して、手を拱くばかりだったので、内外で無力な大統領だとみられるようになった。
オバマ大統領は、就任時に高かった人気が褪せて、大衆の前に姿を見せることを避けるようになった。与党議員も11月の中間選挙が迫っているのに、大統領を見限っている。
今年に入って、ヘーゲル国防長官が財政を再建するために、アメリカの軍事力を大きく削減する計画を発表した。軍全体に大鉈(おおなた)が振われるが、陸軍は前大戦後最少の規模となる。
アメリカが超大国であるのをやめて、孤立主義の殻にこもろうとしているのだろうか。
だが、
アメリカが頂点を過ぎた国で、力を衰えさせてゆくと見るのは、早計だ。
これまで、アメリカは周期的に、アメリカが衰退するという、危機感にとらわれてきた。
私はずっと“アメリカ屋”で、アメリカの脈を計ってきた。
1957年10月に、ソ連がアメリカに先駆けて、人類最初の有人衛星『スプトニク』を打ち上げて、地球軌道にのせた。
アメリカ国民は、強い衝撃を受けた。アイゼンハワー政権だった。「ミサイル・ギャップ」として、知られる。このままゆけば、ソ連が20年あまりうちに、アメリカをあらゆる面で追い越すことになると、まことしやかに論じられた。
1960年の大統領選挙で、民主党のジョン・ケネディ上院議員が、ニクソン副大統領と争った。ケネディ候補はソ連がアメリカを凌駕してゆくという恐怖感をさかんに煽って、アイゼンハワー政権の失政を非難した。
結果は、デマゴーグのケネディが勝った。だが、ソ連はそれから30年後に倒壊した。今日、このままゆけば、20年以内に中国が経済、軍事の両面でアメリカを上回ると、真顔で説く者が多いのと、よく似ている。
ケネディが暗殺され、ジョンソン政権が登場した。
1968年の大統領選挙で、ニクソンがハンフリー副大統領に勝った。ニクソンは「このままゆけば、15年以内に西ヨーロッパ、日本、ソ連、中国が目覚しい経済発展を続けて、アメリカと並び、アメリカはナンバー・ワンの座を失うことになる」「アメリカは絶頂期にあるが、古代ギリシアとローマの轍を踏む破目になる」と、危機感を煽った。
ニクソン政権はケネディが始めて、ジョンソン政権のもとで泥沼化したベトナム戦争の始末に、苦しんだ。ニクソン大統領は「もはや、アメリカは世界の警察官ではない」といって、キッシンジャーとともに、ソ連と「平和共存(デタント)」する新戦略を打ち出した。
その後も、アメリカの振り子は、果敢に外へ向かってゆく時代と、羹(あつもの)に懲りて、内へ籠る時代が交互してきた。アコーディオン奏者に、似ている。今後、アメリカが畏縮してゆくときめつけるのは、早やとちりだ。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成26年(2014)7月23日(水曜日)通巻第4300号
http://melma.com/backnumber_45206/
「アメリカは世界の警察官ではない」とオバマ大統領は公言したが、ペンタゴンにも軍事力衰弱、中国の西太平洋支配を予測する悲観論が現れた
戦争疲れと言える。あるいは国防予算が大幅に削減され、士気が弛緩している。
オバマ大統領は国防戦略にあまりにも無頓着で、シリア介入をためらい、ウクライナ問題では、口先介入と経済制裁で逃げ切る構え。「アメリカは世界の警察官ではない」とする発言は、真実みを日々濃厚にしてきた。
中国に対しての口先介入は、かなり激しい。
「現状の秩序破壊は許されない」「法の支配に随うべきだ」と国務長官、国防長官が声を荒げたが、中国の国防高官たちの口から出てくるのは「アメリカ、何するものぞ」と硬直的かつ勇ましい。畏れを知らない傍若無人ぶりである。
ペンタゴンの作戦立案関係者が、いま最も憂慮する事態とは南シナ海のことより、尖閣諸島のことである。
オバマ大統領は4月下旬の訪日時に「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲だ」と明言したが、だからといって「断固守る」とは言わなかった。
米海軍太平洋艦隊の情報主任であるジェイムズ・ファネルは「中国は迅速で鋭角的攻撃を準備している」とサンディエゴの海軍会議で発言したことは小誌でも紹介したが、これは尖閣諸島への中国軍の上陸を想定したもので、離島奪回作戦を日米が訓練しているのも、こうした背景がある。
ともかく米軍が用意したシナリオが大幅に書き直されているようである。
▲「東方21D」という驚異的ミサイルの登場
最大の脅威を米軍は、中国の謎の新兵器「東風21D」と見ている。
まだ写真が公表されておらず、西側が正確に確認しているわけではないが、この「東風21D」は中国第二砲兵隊(戦略ミサイル軍)が2011年頃から配備につけており、トラック発車型の移動式。1500キロを飛翔する対空母破壊ミサイルである。米海軍戦争大学のアンドリュー・エリクソン提督は、このミサイルを「フランケンウエポン」と命名した。
東欧21Dは海洋に向けての発射実験がされていないが、ゴビ砂漠で実験に成功したとされる。
米空母に搭載されるF35新型ジェット戦闘機は航続距離が1100キロである。空母は7万トンから10万トン、搭載機は70機から110機。乗組員は平均5000名で、空母の周囲を潜水艦、駆逐艦、フリゲート艦、輸送艦が囲む一大艦隊を編成する。F35はまだ実験段階である。
「これまで米空母艦隊で世界の安全を見張ってきた。いつでも紛争地域に派遣され作戦を展開できたのだが、こうした空母優位思想は、東風21Dミサイルの出現によって根底的な意義を失う」(TIME、2014年7月28日号)。
「空母を破壊もしく決定的な損傷をミサイルが与えるとすれば、米空母は中国から1500キロ離れた海域での作戦行動を余儀なくされるため、従来、安全保障を提供してきた意義が失われる。」
「とくに西太平洋で危機が濃厚になる」
この議論はペンタゴンの奥の間で秘密裏に行われ、封印されてきた。
すなわち米空母は中国から1500キロ離れた海域で作戦行動をとるが、F35が1100キロの航続距離となると南シナ海、東シナ海の係争戦域には到達できないことになる。日本の尖閣諸島が有事となっても米軍は空母の支援が出来ないことになる。
費用対効果を比較すると、中国の「東風21D」は一基が1100万ドル(11億円)。これから1227基が量産されるという。
米空母は最新鋭の「ジェラルド・フォード」が135億ドル(1兆5000億円)。
1996年台湾危機のおり、米海軍は空母二隻を台湾海峡へ派遣した。中国はミサイル発射実験による台湾恐喝をやめた。空母を攻撃できるミサイルを中国軍は保有していなかった。
トゥキディデスの罠とは、ペロポネソス戦争で急速に力をつけたアテネが、スパルタに立ち向かい周辺国を巻き込む大戦争となった故事から、たとえば日本へ大国の傲慢さで挑戦する中国が、この罠に嵌るとアメリカが舞き込まれるという逆転の発想、つまり悲観論につながる。
そして「ゲームが変わった。中国は危険な挑戦を始めたが、アメリカは依然として空母優先思想に捕らわれ、従来的な軍事作戦の枠のなかでしか対応できないことは、なおさら危険である」(同TIME)
鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 第155号(7月24日)
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*集団的自衛権と戦争
安倍内閣の支持率が急落したという。それはそうだろう。左派系メディアの「明日、戦争が始まる」とか「徴兵制が復活する」といったネガティヴ・ャンペーンを毎日聞かされていたら、普段、外交や安全保障に関心を持たない一般国民は何となく不安を感じてしまうであろう。
勿論、不安を感じさせる状況にあることも事実だ。ウクライナで旅客機が撃墜され、イスラエル軍はガザに侵攻し、北朝鮮はスカッドを連発する。だがこれらは安倍総理が集団的自衛権を一部容認したから起きた訳ではない。
戦後秩序は米国によって支えられてきた。これを「アメリカによる平和」すなわちパックス・アメリカーナと呼ぶが、米国が軍事介入して警察官役を買って出ることで、良くも悪くも秩序が維持されてきた。
だがイラク戦争では米国は世界中から非難された。ならばもう軍事介入しないぞと登場したのがオバマ政権だ。警察が決して来ないと分かれば町は無法状態になるように、米軍が介入しないと分かれば、たちまち世界は無秩序状態という訳である。
だが、その米軍の首に縄を付けたのが安倍総理だ。集団的自衛権とは互いに助け合うことであり、日本もパックス・アメリカーナに協力するから米国も引き続き東アジアの平和維持に尽力せよと約束させた訳だ。
今月1日に安倍内閣は集団的自衛権一部容認に関する閣議決定をした。
10日に米国務長官のケリーは北京で習近平主席と戦略対話に臨んだ。
同日、米上院は南シナ海、東シナ海における中国の拡張主義を非難する決議を採択した。
15日に中国は南シナ海における石油掘削作業を中止した。この掘削作業はベトナムと深刻な対立を引き起こしていて、もし継続されていれば戦争に発展することは確実な情勢だった。
このように見てみると
安倍内閣の集団的自衛権を容認する姿勢は、戦争を引き起こすどころか、逆に戦争を未然に回避する働きをしている事が一目瞭然で分かる。マスコミがこの安倍総理の快挙を伝えず、イスラエル軍のガザ侵攻という今まで何度も繰り返されている戦闘を事新しげに報じているのは如何なる訳か。
要するにマスコミは平和より戦争が好きなのである。