西村眞悟の時事通信 平成28年12月14日(水)
プーチンを日本に入れるな
読売新聞が、十五日に来日するロシアのプーチン大統領と七日に会見して聞き取ったことを、今日になって一面で報道している。
そのプーチン大統領が七日に読売に話した内容の中心は、
ロシアに領土問題はない、だ。
読売は何故、七日にプーチンから聞き取ったことを、
一週間も伏せて報道せず、本日に一面で大きく報道したのか。
それは、読売が、プーチンの「報道統制」に従ったからであろう。
もちろん、プーチンは、
対日交渉を自分に有利に展開させるように読売を統制をした。
読売は、それに従った。
つまり、読売は報道機関であることを放棄して、
自らプーチンの対日工作活動の道具になったのだ。
プーチンは、
我が国がロシアに提供するものを全て両手で抱えてから、
ロシアが我が国に提供するものは何もない、
つまり、ロシアに領土問題はない、と言っている。
そして、それを日本国民に伝えるタイミングを、
安倍が後戻りができなくなる十四日だと見越して読売に命じたというわけだ。
その上で、プーチンは、
日本側のすがるような思いを肌で感じながら、十五日に日本に乗り込むつもりだ。
なめやがって。
とはいえさすが、プーチンは、
KGB(カーゲーベー、ソビエト国家保安委員会)の対日工作員だ。
では、安倍総理は、
如何に対処すべきか。
本日直ちに、モスクワのプーチン大統領に、
日本とロシアに領土問題があるという認識が、
あるのかないのか確認をとり、
「ない」という答えならば、
「では話しあう議題がなくなったのだから訪日無用」と応答し、
プーチンの対日外交の失敗を天下に曝すべきである。
そして、この失敗はプーチンの領土問題に関する不誠実な認識不足からもたらされたものであることを国際社会の天下に知らせなければならない。
さらに、我が国は、
西ではウクライナのクリミアを武力併合し、
東では我が国固有の領土を不法占領している
無法国家ロシアの非を国際社会に示すべきである。
国際社会は、
現在の対ロシア経済制裁をさらに強化すべきである、と。
そこで、KGBに入局するには
ソビエト共産党に入党になければならないのであるから、
共産党員のプーチンが忠誠を誓った共産党の親分であるブレジネフが
日ソに領土問題が「ある」ことを認めたことを記しておきたい。
このことを知らずして日本に来るな。
即ち、昭和四十八年(1973年)十月の田中・ブレジネフ会談である。
ソ連の目的は現在と同じ、日本の経済協力で、
日本の目的も現在と同じ、領土返還。
以下、その時の会談を外務省東欧第一課長としてコントロールした
新井弘一氏から私が直接聴いたことと
氏の著書「モスクワ・ベルリン・東京、一外交官の証言」をもとにして再現する。
まず、出発前に、新井課長は、田中総理に、
コミニュケ作成交渉を含め、
決裂も辞せぬ態度をソ連側に示す必要性を強調する。
それに対して田中総理は、
「俺の腹は決まっている。
ソ連が頑迷ならば何も結ばす帰るだけだ。
コミニュケを作る必要もない」
と明確に答えた。
第一回首脳会談
田中首相、
「ソ連の領土は広い、上空からバイカル湖が見えたが、
ソ連から見れば、北方領土などは湖に浮かぶ流氷みたいなものではないか」
ブレジネフ、
「それは私の責任ではない」
第二回首脳会談
冒頭から二時間にわたり、ブレジネフは、
シベリアの産業地図を前に、満面を紅潮させ、拳を振り上げて、高圧的にテーブルをたたき、立て続けにしゃべり続けた。
ブレジネフがしゃべり続ける最中に、
新井課長は、煙草を大きくふかしながら時計を見て不快感を示し、
田中首相に、
「彼の発言を無視して、こちらの主張をぶちまけてください」
と紙に書いて渡した。
果たして、田中総理はドスの利いた声で言った。
「経済協力、大いに結構。
しかし、自分はもっと大きな目的のためにはるばるやってきたのだ。
それは日ソ間の未解決な領土問題を解決する為である。
この問題を解決することは、
両国の政治家に課せられた責務であり、宿命である」
第三回首脳会談
ソ連側の、シベリア開発協力、漁業、安全操業などが延々と取り上げられ、
領土問題の進展はなかった。
ただ、北方領土水域での操業問題が取り上げられたが、
ブレジネフとコスイギンの堅いブロックを破ることができなかった。
グロムイコは官僚の権化であり、
ブレジネフが不用意な発言をしたと思えば、間髪を入れず、それを打ち消す発言を始める。
その都度、新井課長は、
「まだ通訳が終わっていない」といってコスイギンの発言を制止した。
大平・グロムイコ外相会談
共同コミニュケ作成に関し、
日本側は意見の不一致を確認するや、サッサと退出し、決裂の意思を示した。
最終首脳会談
コミニュケ案にある「日ソ間の未解決の問題」に関して、
コスイギンが、
複数の「未解決の諸問題」にしてくれと要求した。
田中首相が、
「領土問題」という言葉を入れることを要求した。
コスイギンは
「不同意」と答えた。
直ちに田中首相がブレズネフに、
「では聞くが、『未解決の諸問題』と複数にする理由は何か。
日ソ間に未解決の問題というのは領土問題しかないではないか」と言った。
ブレジネフは、一瞬、口ごもりながら
「漁業とか、経済協力とか・・・」と答えた。
その時、田中首相は、四本の指を突き上げて、
「では、この未解決の諸問題に、
四つの島が入っていることを確認されるか」
とブレジネフに迫った。
ブレジネフは、
「ヤー ズナーユ(私は知っている)」と答えた。
田中首相は、
「もう一度、ハッキリと確認願いたい」と迫った。
ブレジネフが肯いて、
「ダー(そうだ)」と答えた。
この瞬間、
「日ソ間の領土問題は、ヤルタ以来、一連の国際協定によって解決済みである」
とするソ連の立場が崩れた。
つまり、日ソ(ロシア)間に「領土問題が存在する」ことを日ソ両国は確認した。
重ねて言う。プーチンは、この認識なくして日本に来るな。
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【プーチン露大統領訪日】
「露に領土問題ない」プーチン大統領、交渉長期化を示唆
http://www.sankei.com/world/print/161214/wor1612140006-c.html
【モスクワ=黒川信雄】ロシア大統領府は13日、公式サイト上にプーチン大統領と日本テレビ、読売新聞との会見の詳細を掲載した。プーチン氏は「ロシアに領土問題はない」と発言するなど、15日からの自身の訪日を前に、北方領土交渉に対するロシア側の厳しい立場を明確に示した。
プーチン氏は、北方領土問題以外にロシアには国境線の問題はないとの認識か-との質問に、「ロシアにはそもそもいかなる領土問題も全くないと思っている。日本がロシアとの間に領土問題があると考えているのだ」と述べ、北方領土がロシアの主権下にあるとの認識を改めて強調した。
安倍晋三首相が示した8項目の経済協力プランについては、「(平和条約締結の)条件ではない。これは必要な雰囲気作りだ」と語り、平和条約締結には直接結びつくものではないとの考えを示した。また、中国と40年間にわたり国境問題を交渉した事例を挙げ、交渉が長期化する可能性を示唆した。
プーチン氏は北方領土での共同経済活動について「検討する用意がある」としつつも、「重要なのは条件だ」と指摘。日本の主権の下での経済活動に否定的な見解を示した。
1956年の日ソ共同宣言で示された平和条約締結後の歯舞、色丹2島の引き渡しがどのような形で実施されうるのか-という質問には、「それを話し合うのは時期尚早だ」とする一方、「もし首相と日本政府がこの宣言に立ち返るというのなら、われわれは話し合うだろう」と発言。
ただ、宣言にはどちらの主権で、どのような条件で引き渡されるか明記されていないとの従来の主張を繰り返し、「共同宣言の枠内だけでも、まだ非常に多くの作業が必要だ」との見方を示した。国後、択捉両島を含めた四島の議論は「全く別の状況で別の問題提起だ」とも強調した。
日本が欧米諸国とともにロシアに科している経済制裁に対しては、「なぜウクライナ、シリアの問題を日露関係に結びつけるのか」と批判的な考えを示した。
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■読売、会見6日後に掲載
読売新聞は、インタビューは7日に行ったとしている。「プーチン氏のロシア語での発言を和訳し、精査を重ねた」ため、13日付で掲載したとしている。これ以外に理由はないのか尋ねた産経新聞の取材に対し、読売新聞グループ本社広報部は「記事で説明している通りです」と書面で回答した。
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