米も不景気には勝てず、国防予算削減。
米にお任せの安全保障、日本は「自分のことは自分で」「集団安保体制」を迫られている。
米国防費、5年で20兆円削減 TBSNews(27日08:47)
http://news.tbs.co.jp/newseye/print4937757.html
アメリカのパネッタ国防長官は、陸軍や海兵隊の兵力削減などで国防費を今後5年間でおよそ2600億ドル(日本円でおよそ20兆円)削減する計画を発表しました。
「この削減計画は困難で、現実的で、明らかに痛みを伴うものです」(パネッタ国防長官)
パネッタ長官はすでに今後10年間でおよそ4900億ドルの国防費をカットすると発表していましたが、今回は当初5年間の削減計画を明らかにしました。具体的には今後5年間で2590億ドルをカット、陸軍の14%、海兵隊の10%の削減や、旧型兵器の廃棄などを進める一方、ビンラディン容疑者殺害などで成果を挙げた特殊部隊や無人攻撃機は増強する方針を示しました。
また、オバマ政権が掲げるアジア太平洋重視の方針を受けてこの地域での海軍や海兵隊の展開能力は維持するとして、中国に対抗する姿勢を改めて明確にしています。
悲観論
米国防費1000億ドル削減で、抑止力が低下 2011.10.2 19:39
http://sankei.jp.msn.com/world/news/111002/amr11100219410006-n1.htm
【ワシントン=古森義久】米国政府と議会の新方式による歳出削減案が11月下旬までにまとまらない場合、来年度の国防費が自動的に1000億ドル(7・7兆円)以上、削減され、米軍の世界全体での抑止力が大幅に減る見通しが2日までに明らかにされた。下院軍事委員会の調査結果で、米軍の朝鮮半島や台湾海峡での有事の対応能力も減るという。
米国では財政赤字の増大を防ぐために議会に超党派の特別委員会を設け、今後、10年間に合計1兆5000億ドルの支出削減と増税による赤字削減案を勧告させることが8月に決まった。同超党派委員会が11月23日までに合意を得ない場合は、合計1兆2000億ドルの支出削減が自動的に決まり、その多くが国防費からとなりそうな展望をめぐり、議会での論議が激しくなっていた。
こうした中、米国下院軍事委員会(バック・マキーオン委員長)の共和党側スタッフが作成した調査報告によると、自動的な支出削減が実行された場合、2012会計年度の国防費は現在、予定される5960億ドルから4910億ドルへの大幅削減となる。
この結果、ここ数年のうちに陸軍と海兵隊の合計兵員がいまの70数万から20万人分の縮小となると予測。
米軍は一地域の戦闘で確実に勝利を得ながら、もう一地域での国家利益を防衛できる軍事能力を保つという現在の基本戦略に十分な兵力を保てなくなる上、北朝鮮、イランとの有事に十分に対応する能力や、台湾、イスラエルを防衛する能力を危険にさらす?などの事態に直面するという。
同報告はさらに、米軍の軍事能力の低下を予測する具体的な戦力減の実例として
(1)空軍の戦闘機がいまの約3600機から約1500機へと減る
(2)戦略爆撃機が153機から約100機へと減る
(3)新鋭のF35戦闘機の配備が危険にさらされる
(4)海軍の艦艇が300隻から238隻へと減り、空母も現有より2隻減る
(5)大陸間弾道ミサイル(ICBM)も現配備450基から350基程度に減る?ことなどを指摘した。
楽観論
国防費減、安保に影響せず 米太平洋軍司令官 2011.9.24 14:15
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110924/amr11092414160012-n1.htm
米太平洋軍のウィラード司令官は23日、ロイター通信とのインタビューで、米軍が直面する大規模な国防費削減は、アジア太平洋地域の安全保障には影響を及ぼさないとの考えを表明した。
ウィラード司令官は「米国はアジア太平洋地域を重視している」と述べ、太平洋軍は十分な予算を維持できると楽観的な見通しを示した。
司令官は、アジア太平洋地域での前方展開は「最も重要だ」と指摘し、国防費削減をめぐる議論では「米国と同盟国にとって、安全保障上何が重要か」を念頭に置く必要があると訴えた。
米議会は、今後10年間で3500億ドル(約26兆8千億円)の国防費削減を決定。今後さらに削減額が増える可能性もある。(共同)
【主張】
集団的自衛権 行使容認を決断する時だ 同盟強化せぬと国を守れない 2012/01/04 03:29
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/540745/
2012年の東アジアは、昨年に輪をかけて不透明で不安定な年となりそうだ。金正日総書記死亡を受けた北朝鮮の新年共同社説は「先軍政治」の継続を掲げた。中台関係も緊張をはらんだまま14日に台湾総統選を迎える。
中でも朝鮮半島情勢は北の核・ミサイル開発で一層悪化し、金正恩体制の新たな暴発に備える必要がある。中国の軍拡と強引な海洋進出も進み、日本の安全保障環境はかつてない危険にさらされている現実を認識しておきたい。
一方、これに立ち向かう日米同盟の現状は、民主党政権下で空洞化が進み、同盟深化には程遠い。流れを逆転させ、日米安保体制を飛躍的に強化しなければ国家の安全と平和は守れない。
≪自らリスク担う覚悟を≫
そのためには、日本も自らリスクを負う覚悟が必要だ。具体的には積年の課題の集団的自衛権の行使を可能にすることである。
産経新聞社は昨年9月、集団的自衛権行使を軸に日本が米国を守り、対等な同盟を築く日米安保条約再改定案を発表した。不透明な年だからこそ、現状に甘えず、抜本的に見直すことで「新たな責任を担う元年」としたい。
集団的自衛権の行使へ道を開く論議が皆無だったわけではない。最近の政治で少なくとも機会が3度あった。だが、その都度、「憲法上、行使できない」とする現行解釈に安住し、決断を先送りすることで、結果的に同盟の実効性がむしばまれてきたのが実情だ。
第1は北の金日成主席が死去した1994年、羽田孜政権の外相と防衛庁長官が朝鮮半島核危機に直面し、「政府解釈で日米同盟が機能するのか」と提起した。
第2は2001年4月、小泉純一郎首相が「米艦船が攻撃されて(自衛隊が)何もしないでいいのか」と同盟の実効性を高めるために集団的自衛権の行使容認を示唆した。連立与党への配慮などで小泉氏はそれ以上踏み込まなかったが、「さまざまな角度から研究していい」と、「研究」を初めて明記した政府答弁をまとめた。
第3は、これを受けて安倍晋三政権が設けた首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)が08年6月、「従来の解釈では新たな安全保障の重要課題に対処できない」と明記した報告を公表したことだ。
同懇談会が具体的に、日本が
(1)日米共同行動中に攻撃された米軍艦船の防護と反撃
(2)米国を狙った弾道ミサイルの迎撃
(3)国際平和活動を共にする友軍への攻撃に対する反撃
(4)国際平和活動に参加する他国への後方支援
?を可能にするために、従来の政府解釈を改めるよう提起したのは重要だ。
弾道ミサイル迎撃は当時のシーファー駐日米大使らが「同盟国日本の責務」と訴え、また米艦船の防護や国際平和活動時の対処も、米知日派の「アーミテージ報告」などで繰り返し求められてきた。国連憲章に照らしても、国際社会では当然かつ「普通の行動」といわざるを得ない。
≪封印を解く勇気示せ≫
懇談会報告が福田康夫政権下で実質的に封印されたのは極めて残念だが、提起された解答は今も有効といえる。「同盟重視」を掲げる野田佳彦首相は速やかに封印を解き、米軍普天間飛行場移設問題の迷走などで空洞化しつつある同盟の実効性を抜本的に高めるための決断を下すべきだ。
ただでさえ、軍事・経済両面で制約を抱える米国の相対的な力の低下は否めない。
日本が北の核・ミサイル、中国の海洋進出、ロシアの威圧的外交などに対処するには、もはや「米国頼り」ではすまない深刻な現実もある。
それでも、オバマ米政権は台頭する中国に対抗するため、太平洋からインド洋に至る海洋安全保障を軸とする本格的な「アジア太平洋シフト」に乗り出した。
日本が自らを守る意思と能力を高めた上で同盟を強化し、豪州やインドなどと連携する態勢を固めることが今ほど必要な年はない。その第一歩は、安保条約再改定と集団的自衛権の行使を中心とする安保体制の見直しだ。
日本の安全を委ねる米国の「核の傘」を強化するための非核三原則の見直しも急がれる。武器輸出三原則の見直しに踏み切った首相は、長期的な日本の安全と同盟強化の戦略に立って、もう一歩も二歩も大胆に踏み出してほしい。
参考
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世界の軍事支出(Wikipedia)