鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
第340号(8月18日)
http://melma.com/backnumber_190875/
*スターリンの葬送狂騒曲
映画「スターリンの葬送狂騒曲」が3日、封切られた。昨年、欧州で公開されて話題を呼び、今年3月には米国で公開されて、今月ようやく日本での公開となった。英仏合作でスターリンの死を題材にした喜劇である。
(上映劇場 http://gaga.ne.jp/stalin/theater/ )
スターリンが虐殺した人数は1600万人、毛沢東の6400万人に次いで世界第2位だが、現代史全体に与えた悪影響は毛沢東をはるかに凌ぎ世界史上、最大の極悪人と断定して差し支えあるまい。
第2次大戦直後はスターリンを英雄視する風潮が日本を含め世界中に横溢していたが、これは共産党のプロパガンダであり、蓋を開けて見ればソ連の独裁者スターリンは戦勝国である筈のソ連の国民を含めて誰一人幸せにしていない。
彼の家族や側近も同様で、誰一人幸せな人生を送った者はいない。一時的に幸せであったという時期すらない。これはスターリン本人にも当てはまる。つまりスターリンは自分を含めて世界中の人間を一瞬たりとも幸せにしなかったのである。
こうした人物が具体的にどの様な人であったのか?常識的な想像は困難であり、従って今まで映画やドラマに積極的に描かれることは余りなかった。この点、繰り返し映画などで描かれたヒトラーと対照的であろう。
常識的な想像が困難な人物を敢えて描こうとすれば、常識を逸脱した描写にならざるを得ない。この映画がコメディである理由は明白だ。常識的には想像もできないような状況が当時のソ連では展開しており、それを敢えて描こうとすればコメディにならざるを得ないのである。
いうまでもなくスターリンを師匠として崇めていたのが中国の毛沢東であり、北朝鮮の金日成である。この二人の独裁者の死もいまだに謎に包まれたままだが、共産主義独裁体制の本質から考えて、同様のコメディが展開していたに違いあるまい。
現在の中国と北朝鮮の二人の独裁者の地位が揺らいでいる。中国の北戴河会議で、あるいは北朝鮮の視察先の工場で、コメディの序幕がすでに繰り広げられていよう。
軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
動画配信中:「戦争の常識」第1回無料
http://www.nicovideo.jp/watch/1494517092
上記動画のテキスト本
「戦争の常識」(文春新書)
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上記動画のテキスト本
「領土の常識」(角川新書)
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上記動画のテキスト本「超図解でよくわかる!現代のミサイル」
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2017年12月、韓国で韓国語訳が出版。
その他の著書:
「国防の常識」(角川新書)
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「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)