靄のかかった空が今日は夏の青空になった。例年の近畿の梅雨明けは7月19日だそうで、もう間もなく梅雨も明けるだろう。
公団の1階に転居し母との二人暮らしを始めて1ヶ月になった。
20代で両親の元を離れて以来、40年ぶりの同居である。
母は「何故自分たちが建てた家を離れなければならなかったのか」という疑問が2,3日置きに去来し、沈んだ表情になっている。そのたんびに30分あまりを費やして答えるのだが、今日はそれを文章にして渡しておいた。
これが認知症というものであろうか、数時間前にしたことも記憶には残らない。「90にもなると、こうなるで、あんたもその時が来たらわかるさ」と笑っている。「誰でもそうなるとは限らないよ、100歳近くになってもスキーをやる人もあれば、絵を描く人もいる。この間は90代のお爺さんが雪下ろしをしている写真を見たよ」とやりかえす。もっとも私自身は「そんなに長生きする気はしないなぁ」と云っている。
生活に支障はないというものの、叔父などから電話やはがきが来てもきれいさっぱり翌日には忘れているのだ。毎日の生活を締めくくる意味で日記を書いてもらうことを始めた。字を書くこともおっくうになっているが、なんとか続いている。
翌日になると、気になるのだろう、自分の書いたことを読み返しているところみると、作戦は成功しているようである。
市街地よりやや涼しいところに来たためか、季節の感覚もなぜか2ヶ月先行し、9月と思っている。「涼しなったなぁ」「なんの、これから暑い暑い夏がくるんやで」と毎朝の会話だ。
足が弱くなり散歩もままならなくなったが、私のワンパターンのヘタな男料理も美味しいと云って食べてくれ、身の回りの事も出来る。読書に飽きれば、簡単な雑巾などの裁縫もやっている。
この調子で過ごしてくれればと願っている。