落葉松亭日記

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プーチンの孤立

2023年01月07日 | 世相

22年2月ウクライナ侵攻から間もなく一年を迎えようとしている。
当初3日で制圧と豪語していたが、いまや膠着状態だ。
都市破壊し、多くの人命が失われた。何のための侵攻だったのか。
ロシアは昔から、文学や哲学、音楽では著名な作曲家や演奏家など文化の香り高い国と思っていた。

ロシア人は現在のこの状況をどう見ているのだろうかと気になっていたが、やはりプーチン支持に陰りが出てきたという。
当たり前だろう。
早く民の力でこの暴走を終息させてもらいたいものだ。

国内でも支持を失うプーチン大統領、懸念される八方塞がりの「暴発」
米国で詳細に報道された独裁者の“新年の孤独” 2023.1.4(水) 古森 義久
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73364

写真:化学工場立ち上げの式典にオンラインで参加したロシアのプーチン大統領(2022年12月28日、写真:代表撮影/AP/アフロ)
(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領が、ロシア国内で政治的にますます孤立を深めつつあるとする分析が米国で詳細に報道された。

 プーチン大統領はなおロシア国内で強大な権力を保ち、ウクライナの軍事屈服を目指す意図に変わりはないが、年来の側近とされる勢力との間に新たな距離が生まれたというのだ。プーチン氏の新情勢下での孤独は軍事面でのさらに大胆な攻勢にもつながりかねない、とも警告されている。

盟友の言葉からも浮かび上がる国際的な孤立

 プーチン大統領の新たな孤立についての分析は米大手紙ワシントン・ポスト(2022年12月30日付)の長文の記事で伝えられた。「敗北に慣れていないプーチンは戦争の行き詰まりとともに孤立を深める」という見出しの記事だった。

 筆者は、同紙の国際報道部門での長年のロシア報道で知られるキャサリーン・ベルトン記者である。現在同記者はロンドン駐在だが、ロシア勤務が長く、『プーチンの支持者たち』という著書でプーチン氏の政治経歴をKGB時代から詳しく追い、同氏の支持者や側近に光を当てて国際的な注目を集めた。今回もロシアやウクライナで現地取材を行い、とくにロシア側の関係者多数に直接インタビューしたという。

ベルトン記者のこの記事は、まずプーチン大統領の国際的な苦境を強調していた。同大統領は2022年12月19日にベラルーシを訪れ、国際的に唯一の完全な盟友ともいえるルカシェンコ大統領と会談した。その際のルカシェンコ氏の「プ―チン氏と私は、いま世界中で最も有害で有毒とされる共同侵略者だが、唯一の問題はどちらがより有害か、だ」という自虐的な半分冗談めいた言葉を引用し、プーチン氏の孤独を比喩的に描写していた。

 同記事はさらに、プーチン大統領が12月26日にロシアのサンクトペテルブルクで開いた旧ソ連共和国諸国の首脳会議でも、温かい連帯の対応が得られず、中国やインドへのウクライナ問題での協力要請も前進していないことを指摘して、「プーチン氏は1999年にロシアの大統領代行となって23年目の2023年、国際的にも国内的にもかつてない孤立の状態に至った」と総括していた。

保守系エリート層のプーチン支持が大きく減少

 そのうえで同記事は、プーチン大統領の最近のロシア国内での孤立について、複数のロシア政府関係者の言葉からとして以下の骨子の考察を伝えていた。

・プーチン氏は元来、少数の堅固な支持者や側近だけを信頼して、依存し、最終的には自分の判断を下すのだが、最近はこの支持者と側近の数が減ってきた。その理由は、プーチン氏のウクライナ戦争での挫折により、プーチン信奉者の数が減ったことと、その側近の間でウクライナでのさらなる軍事エスカレーションを求める勢力と停戦の検討を求める勢力の対立が激しくなったことが挙げられる。

・ウクライナ戦争でプーチン氏は、至近の強固な支持者たちに「軍事的に数日、あるいは数週間で決着をつける」と告げたにもかかわらず、いまや300日が過ぎて、支持者たちの落胆が顕著となった。プーチン氏は和平や停戦に応じると述べながらも、なおウクライナのインフラへの激しいミサイル攻撃で軍事威嚇を続ける以外の方法を見せていないことが、さらに側近との溝を生むようになった。

 さらにベルトン記者は、米国でロシア事情分析の権威とされるカーネギー国際平和財団上級研究員のタチアナ・スタノバヤ氏の最新の見解も紹介していた。

 スタノバヤ氏はロシアに生まれ高等教育を受け、フランスや米国でも学術活動を続けてきた女性のロシア研究の専門家である。ロシア人ながらプーチン政権に対しては客観的な立場の学者として米欧でも信頼されてきた。そのスタノバヤ氏の見解は以下の通りだった。

・年来、プーチン大統領を支持してきたロシア国内の保守系エリート層の動向は重要だが、この層でのプーチン支持が目立って減ったことが、プーチン氏の孤立という印象を強めている。ウクライナ侵攻に関してこのエリート層はプーチン氏が独自の戦略を有することを信じてきた。だが、ここにきてその戦略への信頼が極端に減ってきたことが明白だといえる。

・プーチン大統領の最近の言動には、疲れが目立つようになった。従来のプーチン氏支持のエリート層からも、ウクライナでの苦戦によるプーチン氏の心労の重さが同氏の本来の能力を減速させているとの観測が表明されている。その結果、エリート層でもプーチン氏の言明を言葉どおりに受け取らない傾向が生まれ、実はウクライナ戦でプーチン氏は具体的で現実に沿った対処策を持っていないのではないかという懐疑が表明されている。

軍事攻撃をさらにエスカレートさせる懸念

 ベルトン記者のこの記事は、プーチン大統領の元政策顧問だった政治学者セルゲイ・マルコフ氏の見解も引き出していた。マルコフ氏はウクライナ攻撃を支持するロシア国粋派でプーチン大統領の信頼も厚かったとされる。同氏の見解の骨子は以下の通りである。

・ウクライナでの軍事行動で敏速な勝利を得なかったことが、プーチン大統領の今日の孤立と呼ばれるような苦境を生んだことは明白だ。これまではロシアの軍隊がウクライナで全力で戦闘しながらも、ロシアの一般国民は年来の正常な生活を送ってきた。だが2023年からはかつての第2次大戦のように、国家、国民を挙げてウクライナでの戦争に総力を注ぐ方向へ進まざるをえないだろう。

・2022年秋のロシアでの軍事動員令で新たに徴募された約30万人の軍事要員は、まだ十分な訓練と兵器を得ていない。この新兵力をいつ、どのようにウクライナでの戦闘に投入して、実効ある戦果をあげるのか、その具体的な方途をプーチン大統領はまだ持っていないようだ。同大統領の国内での地位や権力を左右する最大要因はウクライナ戦での勝敗だから、現在の戦況が同大統領の影響力に影を投げることは当然だといえる。

 ベルトン記者の報道は以上のように、プーチン大統領の支持勢力からも同大統領の最近の孤独が指摘される現状を伝えていた。

 この報道でさらに注目されるのは、ロシア政府の外交官の懸念として「プーチン大統領は現在の苦境を脱するためにウクライナでの軍事攻撃をさらにエスカレートさせることも考えられ、そのエスカレートには戦術核兵器の使用という危険な可能性も含まれる」という言葉を紹介している点だった。

 この四面楚歌と呼んでもおかしくない状況をプーチン氏自身はどう打破するのか。2023年の世界の最大の不安定要因ともいえるだろう。