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神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] エンド・ゲーム

2011-04-26 22:16:43 | SF
『エンド・ゲーム』 恩田陸 (集英社文庫)




常野物語の3冊目。『蒲公英草紙』とまったく違って、サスペンスホラーチック。

拝島家は「オセロゲーム」(『光の帝国』収録)に出てくる一家。彼らのその後の“戦い”が描かれる。洗濯屋の火浦家は初登場か。

なんだかこれを読むと、常野の一族は古来から敵(あれ)と戦ってきたように読めるんだけど、常野物語ってそんな話だったっけ(汗)

実際、常野じゃない(ネタばれ)っていう話にもなるし、常野物語じゃなくてもよかったような気が……。

記憶が“洗濯”されているおかげで、真実を知っているはずの人物が信頼できない証言者になってしまっていていたり、さらに常野の能力「裏返す」「消す」「包む」が、発動者の意図を超えた効果を与えてしまっていたり、物語は混沌に吸い込まれる。はたしてこの結末は本当に書かれた通りのものなのかというところに一番うすら寒さを覚える。

常野物語はオカルトというよりはSFの系譜だと思っていたのだが、この作品はかなりオカルト、理不尽寄り。唐突に出てきた謎の生命体仮説は一体何なのか。

しかし、良く考えてみれば、ゼナ・ヘンダースンの〈ピープル・シリーズ〉というのは露骨に常野物語のキーワードになっており、最後には映画『ヒドゥン』のビデオが登場する。まぁ、要するに常野の人々は宇宙人であるということが、再確認されただけというわけだ。

さらに言えば、この小説だけでは、肇と暎子のどちらが「あれ」なのかわからないという処がポイントなのではないか。薬局のおばちゃんたちもわけのわからないことをやっているし、彼らは本当に常野?

となれば、「あれ」こそが「常野」という逆転のオチも見えてくる。裏返して、裏返されて、すべては混じり合い、混沌の中へ……。


ところで、輪廻しの少年は『蒲公英草紙』にも出てくるが、不吉の使者か何かなのかね。恩田陸のトラウマか何かだったりして。


『20億の針』が『ウルトラマン』を生み、『ウルトラマン』が『ヒドゥン』を生み、『ヒドゥン』が『エンドゲーム』を生む。こうしてミームが受け継がれながら育っていくのもSFの面白いところのひとつだろう。

#そこ、パクリとか言わない!



[映画] エンジェル ウォーズ

2011-04-26 22:08:43 | 映画
エンジェル ウォーズ - goo 映画



(C)2010 WARNER BROS. ENTERTAINENT INC. AND LEGENDARY PICTURES


ニーハイミニスカへそ出しセーラー美少女戦士が、巨大サムライやらドイツ軍ゾンビやらドラゴンやらロボットやらと戦う映画。なおかつ、まだ人権無視な頃の精神病院へ、強制的に入院させられる悲惨な少女の物語。

戦う美少女系のポスターなので、『キルビル』とか、『プラネット・テラー』とか、はたまた『片腕マシンガール』みたいな映画かと思っていたのだが、名作『パンズ・ラビリンス』と同じ構造をもった映画という話を聞いて見に行ってみた。

まぁ、確かにネタばれでもなんでもなく、『パンズ・ラビリンス』と同じ構造そのままなのだが、受ける印象はまったく異なる。

少女の悲しみが伝わってくるというよりは、「こんなシーンを撮りたかったぜぇ!」という叫びの方が強く聞こえてきてしまうのだ。

そもそも、この主人公、なんと20歳である。義父が精神病院の申込書に記載するところが露骨に映像化されている。それってやっぱり、児ポ法対策と言うか、「この映画に登場する人物はみ~んな20歳以上だからね、お兄ちゃん!」ってことなのか。

敵がすべてロボットやらゾンビやらで、銃で撃っても刀で切っても、吹き出すのは血糊ではなく蒸気や光というあたりにも、異常なまでの気の使い様が見える。

しかし、義父の陰謀により精神病院に入れられて、すぐに妄想へ逃避するなんて、20歳の女のやることか?

しかも、精神病院→キャバレー→女戦士の二重妄想だ。実はどれが現実かわからないという作りになっているのならば、もっとストーリーとしても楽しめたのだろうが、ここでも、物語の整合性よりも撮りたいもの優先な意識を垣間見てしまう。

主人公は最初から本当に狂っていて、妹を殺したのも主人公本人だった。それが故に、罪の意識からロボトミー手術を受け入れたという物語の方が面白かったんじゃないか。

それはさておき、映像は凄い。美しさと迫力とイマジネーションの奔流にヒャッホーと叫びだしたくなるような戦闘シーンだ。

RPG的とか言われて、評論家には酷評されたらしいが、これはゲーム的じゃないんだよ、深夜アニメ的なんだよ。エロかわいい美少女が戦っている映像が見たいのであって、美少女を操作したいんじゃないんだよ。カッコいい美少女にあこがれるのであって、美少女を思いのままに制御したいんじゃないんだよ。

それに気づいた日本語版スタッフが、声優陣にアイドル声優グループ、スフィアを持ってきたというのは炯眼である。そう、まさしく、そのノリだ。

しかし、映画ファンから見ると、なんで吹き替え版ばっかりなのかという文句たらたら。確かに、俺も字幕版で見たかったぜ。

しかも、肝心の声優ファンにはリーチしていないという悲しさ。マーケティングのミスマッチかな。

どちらかといと、やっぱりグラインドハウス的なヒーハーなノリな映画にした方が良かったんじゃないか。主人公は16歳で、血糊もドバドバ飛んで、誰が狂っているのかまったくわからないカオスな映画だったらよかったのに。

いや、最初に想像したのはその方向で、本当にそうだったら見に行かなかったんだろうけどね。