神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 希望

2011-10-16 23:08:22 | SF
『希望』 瀬名秀明 (ハヤカワ文庫 JA)




瀬名秀明の、なんと第一短編集。これまでのものは連作短編だったので、短編集にはカウントされないらしい。

これまで雑誌やアンソロジーに掲載された作品を集めた作品集なので既読が多い、というか既読だらけ。今回初見だったのは「魔法」と「静かな恋の物語」の2篇。この二つは前半に掲載されていて、後にいけばいくほど“濃く”なるという趣向の中では軽い方。いわゆる濃い方はSF専門誌に掲載されたものだったりするので、どうしても既読が多くなってしまう。

今回読み返してみて強く感じたのは、これらの濃い作品が持つ物語性が意外に再読に弱いということ。テーマ性や問題提起の部分はビンビン感じるのだが、それは以前に読んだときから感じているものであり、追体験に過ぎない。再読で初めてわかる深い部分みたいなものが、あまり感じられなかった。

いや、それはちょっと違うか。なんというか、初読の時よりもさらにわからなくなった感じ。前面に出てくるわかりやすい部分は知っている話なので新鮮味がなく、その奥の部分は再読でもさっぱりわからない。俺の読み方が悪いんですかね。通勤電車で寝ながら読んでいる時があるので、読み落としが多いことは否定しないけど。

はっきり言ってしまうと、テーマ性や文学性に凝りすぎて、物語の持つ力を失ってしまってるんじゃないかということ。

解説にも書かれているが、瀬名秀明といえば、デビュー作の『パラサイト・イヴ』がSFファン達に酷評されたことをきっかけに、ゲットー的に先鋭化したSF界から距離を置こうとした時期があった。クズSF論争、サイファイ論争にも巻き込まれていたはずだ。

それが今では、彼自身の作品が一般人を置き去りにして、先鋭化したSFファン、文学ファンにしか読み取れないようになっているんじゃないかと思う。

たとえば、「ロボ」なんてケンイチくんが何者なのかわからずに読んでも、さっぱり意味不明な物語のはずだ。いくらテーマが似合かよっているからといって、唐突にケンイチくんを持ってくる必要があったのか。このようなマニアだけにわかる小説をどう取るべきか?

さらに「鶫と鷚」は『サイエンス・イマジネーション』で言語、コミュニケーション、意識といった題材を科学的に討論したパネルのアンサー小説として書かれたものだ。これを知らずに、これだけ読んでテーマが分かるとは思えない。さらには、内容が暗喩に満ちていて、というより、暗喩しか無くて、物語を追おうとしても、まったくもって何が起こっているかわからない。

表面的な物語がわくわくするほどおもしろく、そこに秘められたテーマが浮かく考えさせられるほど興味深く、他の作品とのつながりを知っているとちょっと楽しい。瀬名秀明にそういった作品を期待するのは間違っているのだろうか。

帯に“文学と科学の境界線を越え、日本SFの最前線に立つ”とある。これは否定しないし、瀬名秀明は今やSF界にとって欠くことのできない存在である。しかし、SF界隈での評価が高ければ高いほど、これをSF初心者や、非SF読者がどう読むのかということが気になる。これは逆の意味でサイファイ論争を引き起こすトリガーになりうるのではないか。そういう作品を、“あの”瀬名英明が書いてしまうのはどうなんだろう。

振り子が振れるように、右へ行ったり、左へ行ったり。試行錯誤なのか、無意意識の反動なのか。この振り子がちょうどいいところで止まった時に、ものすごい名作が生まれるんじゃないかと思うんだけど、短編集にそれを期待するのは無理か。



「魔法」
マジックの“アラカザールの教え”という視点から、究極の義手は何かという科学技術的テーマをラブストーリーに変える魔法。この作品は割とバランスが取れているといえる。
アラカザールはこの作品で初めて知ったが、いいこと言うなぁと感心した。調べてみたら、『大魔法使いアラカザール マジックの秘密』という本は実在するらしい。今度読んでみようか。

「静かな恋の物語」
“恋に落ちる”という慣用的表現を重力という物理現象に直接重ね合わせてしまうという荒業。これは似非科学でよく使われる手法なのだけれど、短い短編にこのような連想クイズみたいなものがてんこ盛りになっている。こんなの、企業誌に書いて、どんな反応だったんだろう。


既読の作品の感想は、意図的に省略。手抜きじゃないよ。


[SF] 砂の惑星

2011-10-16 21:07:22 | SF
『砂の惑星 [1]~[4]』 フランク・ハーバート (ハヤカワ文庫 SF)


『DUNE 砂の惑星』のタイトルで映画化もされた、言わずと知れた名作。

最近、SFマガジンのスタンダードSF特集などで、過去の名作を再評価する流れが出てきた。これは、いったん冬の時代と言われたSFが復調し、新しい読者が入って来ているという意味もあるのだろう。ただ、2chとかはてなとかで、おもしろいSFを教えろ系のまとめが上位に上がってくるのを見るたびに、いったいおまえら本当にSF読みたいのかと思ったりもするんだけど。

そんなことを言いながらも、自分も読んでない名作がいくつもあるので、人のことは言えないのだよな。と、思って一念発起してamazonマーケットプレースで買ってみた。本当は石森章太郎カバーが良かったんだけど、amazonでは通常版の発行年の区別がないので、1巻だけ石森章太郎明記の高いやつで、その他は適当に安いのを買った。おかげで、1巻のみ石森章太郎カバーで、2~4巻は映画表紙。しかも、カバーだけ付け替えなのかと思ったら、中の挿絵まで映画版でやんの。今度復刊することがあったら、ぜひ石森章太郎版で復刊して欲しいものだ。あの腐れ映画カバーで喜ぶ人は今さらいないでしょ。


そこで、読み終わった感想ですが……。

結局のところ、中世(近世?)の貴族お家騒動を未来社会へ持っていったもの。SFとして読むには荒唐無稽な面が多く、これはやはりファンタジーとしか思えない。

別に貶めるつもりではまったくなく、緻密に構築された異世界を描くハイファンタジーとして、非常にしっかりとした土台の上で物語が進展するため、多くのSFファンがこのシリーズに魅了されたのは不思議ではない。

ただ、やっぱり想像科学小説というよりは、魔法の世界の延長線上にある物語だと思う。

富の源たるスパイス、不老長寿の麻薬メランジは人類に秘められた能力を覚醒させ、恒星間を駆けるパイロットにも不可欠な物である。しかし、主人公の覚醒っぷりは行き過ぎのように見える。これはもう魔法使い級。それが用意周到な遺伝子操作(交配!)の結果であり、物語的にも父親を殺された少年が復讐のために成長するという重要要素であるにしてもだ。

女たちの秘密結社ベネ・ゲセリットもわけがわからない。声で周囲の人間を操ることができる能力など、理屈の裏付けが弱すぎるように感じる。彼女たちはまさしく魔女であり、期せずして性別の異なる“魔男”を作ってしまったというのが、主人公のポウルということか。

しかし、砂漠に生きる不屈の民フレーメン、宦官を連想させる人間コンピュータのメンタート、牢獄惑星の中で子供の頃から殺し合って育ってきた(蠱毒かよ!)最強戦士軍団サウダルカーなど、心躍るような民族設定や、これはもう萌えるしかない天才幼女の妹など人物設定はバラエティーに富んでいてなかなか楽しい。

“砂の惑星”の造形に関しては、希少な水をめぐって生まれた文化の描写がすばらしい。富める者の水の使い方、貧しく厳しい環境でい来る者の水の使い方、それぞれに現実味があり、よく考えられていると感心してしまう。

一方で、砂虫に代表される砂漠の生物の生態系はよくわからなかった。名作紹介としては生態系SF、環境SFとして名前が上げられることが多いのだが、そこまで読みとることができなかったのは自分の読解力不足なのか。これについては、謎がまだ多いので、後続の巻に期待したい。


それから、1巻の訳者あとがきに全6冊って書いてあるんだけど、いつの間に全4冊になったんだろう?


10月15日(土)のつぶやき

2011-10-16 03:21:40 | つぶやき
06:31 from Tweet Button
読んでおく“べき”SF小説なんて無いし、過去の名作が万人にお薦めできる訳でもない。なんてことを言えるようになったのは30過ぎてからだな(笑) →読んでおくべきSF小説 http://t.co/OhsxJ7zd
06:33 from Tween
なんか窓の外が台風並みにうるさくて起きちゃったんだけど、そんなに風が強いわけじゃないな。風向きのせいなのか?
06:35 from Tween (Re: @space_biz
おい、宇宙ビジネス!それは「きんせい」じゃないぞw QT @space_biz: 天皇杯、大金星!!! - 完全に雑食的なアレ。 - 楽天ブログ(Blog): 天皇杯、大金星!!! ... 天皇杯、大金星!!! 「サッカーあれこれ(137818)」.
07:04 from Tween
来年、夕張開催の日本SF大会プログレスレポート出ました。さすが夕張な開催場所(夕張北高跡地のひまわり)。そして、明らかに寝るなというタイムテーブル!
08:29 from Tween
『ルー=ガルー2』が出てたのでポチッちゃったけど、前巻がどんな話だったか覚えていない(汗 レンガみたいな本って言われてたのは覚えてるんだけど。ちなみに買ったのは通勤用に文庫版。単行本・ノベルス・文庫・電子書籍同時発売っていうのは実験的で新しいな。どれが売れたのか結果も知りたい。
10:33 from Tween
セブンチケット回線弱いな。俺もローソンで買った。同じセブンイレブンのちけぴじゃないのが味噌。
17:25 from twicca
ひさしぶりにカミカゼビール来た。近くに引っ越してきてからは初めてだな。ビールの釜は暗くて写真に写らん。
17:36 from Twitter for Android
クリームエールはこんなんだったっけ?って感じだったけど、アンバーエールは旨いわ。っつーか、日本でも普通にエール売ってくれんかね。 http://t.co/JTfvC2Pt
17:45 from twicca
この店、プロジェクターあるんだけど、DVDしか繋がってないっぽい。使えねぇー。
17:47 from twicca
みんな、湘南戦のチケット、とっとと買えよ。売り切れないと、エリアが広がらないだろ! #consadole
17:51 from twicca
日本のビールがピルスナーだけになったのは誰が悪いんだっけ? 責任者出て来い。
17:55 from twicca
来年、レッズとやれないのか、残念だなぁ……いや、こっちも昇格しますので、落ちないでねというエールですよ。ピルスナーじゃなくw
17:59 from twicca
地ビール工場のビアホールで焼酎のお湯割りを頼む極悪非道な行為を見た!
18:14 from twicca
葬式帰りらしい謎のうるさい集団が来たので帰る!
19:41 from Tween
72年生まれで鬼奴とはるな愛が同い年というのはいろんな意味で衝撃だなw
19:45 from Tween
70年生まれの俺としては、村下孝蔵の『初恋』をお薦めしたいが、はまった人は少なそうだなw
19:49 from Tween (Re: @naoya_fujita
禁止されていないところは七輪ジンギスカンでミステリーサークルができる。 QT @naoya_fujita: 自由すぎる
http://t.co/El7R0NbP
19:53 from Tween (Re: @koo918
たかよちゃんもいれてやれよ。向こうからお断りか。 QT @koo918: 限定復活のZONEが活動継続を宣言(デイリースポーツ)- Y!ニュース http://t.co/vPNJPJLJ
19:55 from Tween
イチ押しは会員番号16番でしたw
19:57 from Tween
間違えた! 18番だった。
20:07 from Tween (Re: @koo918
@koo918 え、そうなん!? とおもったけど、もしかしてMIZUHOと間違えてない?
20:17 from Tween
浅香唯といえば、モッコリバカ一代
20:19 from Tween
マッチはうちのおねぇちゃんが好きだったので、一緒にスニーカーぶる~すの映画に連れていかれましたw
20:20 from Tween
斜里からの転校生がシャリバンと呼ばれていたのを思い出す。
20:29 from Tween
東京に来て、フィギュアスケートはいてくるくる回ったら、「すげぇ、光GENJI」みたいって言われた思い出w
by kats_takami on Twitter