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近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

五感

2014年10月08日 00時00分01秒 | 紹介

 人は経験したことを良く覚えている。経験は五感を使い、経験した状況を記憶として脳へ蓄積するが、始めての経験や強烈な印象があれば強く記憶に焼き付く。しかし、繰り返さない経験は時間の経過と共に徐々に記憶が薄れ、忘れてしまう。五感で感じることであっても、つまり継続的な刺激は五感の麻痺によって刺激の強さが変わってくる。脳への刺激は、記憶力を強めるために五感をフル活用すると良いといわれている。

 五感とは目で見る、耳で聞く、舌で味わう、手で触れる、鼻で匂いを嗅ぐ、の五つの感覚で、視覚、聴覚、味覚、触覚、臭覚である。感覚は、言葉で表すと意外と難しい。例えば「盲人が象をなでる」という話がある。数人の盲人が動物の象をそれぞれの部位をさわり、足を触った者は柱のようで、爪を触り硬い石のようだといい、耳を触った者は大きな団扇のようだといい、鼻を触った者はゴムホースのようだといい、しっぽを触った者は、ふさふさした筆のようだという。誰一人、象だと言った者はいない。つまり、詳細は分かっても全体像が分からないと言うことの喩えとしてよく使われる話である。木を見て森を見ずということである。

 舌の感覚も人によって大きな違いがある。食生活は家庭によって明確に好き嫌いが分かれ、地域によっても差がある。味覚は甘い、しょっぱい、酸っぱい、苦い、辛いくらいは他人にも伝えられるが、複雑な味や隠し味にとなると、表現も難しい。スパイス類は特にそうで、味わった経験がないと名前すら分からない。ワインのソムリエが、ブルゴーニュワインの味を地中海の土の香りなどといっていたが、何のことかさっぱり分からない。

 耳で聞く音声は同じ言語を話す者同士には若干、訛りがあったとしても聞き分け、理解できるが、言語が異なると数回聞いて真似することが出来ず、発音やアクセント、イントネーションなどを再現できない。英語が苦手な国民として自らも自認している。

 手で触れる触感は訓練によって表面の微妙な凹凸を判断することが可能となるが、温度や湿度も影響し、人によって差が出る。指の感覚は、力仕事をしていると皮膚が厚くなり、感覚が鈍る。匂いは更に難しい。シクラメンの香りはどのような香りであったのか、歌では何となくイメージできても香りとなると嗅いだことがない場合や、元々香りがないのかも知れない。我が国に香道が道として発達したのを不思議に思っているが、嗅いだことがなければ伝えることは不可能である。匂いの認知は短時間であることも難しくしている一因であり、臭気は継続しない。長く嗅いでいると臭覚が麻痺するからである。

 五感について簡単に述べたが、人間は他人に五感を正しく伝えられないことの原因は、感覚はインディビジュアルで、個人差があり、言葉で再現できない困難さがある。経験があれば共有できるが、経験がなければ判断できず、感覚の伝達が難しいことを知っておかなければならない。