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近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

樺細工

2015年04月06日 00時00分01秒 | 紹介

 山桜の皮を加工して装飾性を持たせた民芸品である。秋田県角館の名品であり、桜の皮を張り付ける製品は世界的にも珍しいとのことであり、日用品では、茶筒や角盆、硯箱などの箱物に利用されている。机やタンスなどの大形製品もあるが、多くは小物である。元々は、困窮武士の手内職として、地元で採れる山桜の皮を剥いで、乾燥させ、煙草・きせる入れや、刀の鞘の装飾等に用いていた。最近では引き出物に利用されているが、剥いだ皮を重ねて彫刻し、漆で仕上げたペンダントやループタイなどへの工芸もある。

 

 桜の皮を用いているのに何故、樺(かば)というかというと、古くからサクラのことを樺桜と呼んでいたのに由来している。源氏物語にもその記述があるようである。既に、秋田県の山桜の皮は採取し尽くしていて、近隣県からの供給でまかなっているそうで、植栽も行われていると聞いている。

 

 一時、戦争等で職人が居なくなり、「工芸文化」「手仕事の日本」等の著者であった柳宗悦が伝統文化を守るために東京の自宅を研修場所として、樺細工の重要性を説き、職人の養成を行ったそうで、これによって、現在まで技術が伝承されている。樺細工は型ものと板ものに分けられる。装飾用に貼り付ける山桜の外皮が出来映えに影響する。

 

 表面の模様は自然に形作られるため、同じ物が二つと出来ない。外皮には汚れや凹凸があり、如何に平坦で美しい模様がでるかが最大の加工となる。後は意匠的に外皮を組み合わせ、加温した膠で貼り付ける。仕上げは、木賊(とくさ)磨きや、砥の粉で胴刷りを行う。磨き上げると深い光沢を発するようになり、桜の皮とは思えない優雅さがある。

 

 伝統工芸品は我が国のそれぞれの地域で、独特の進化を続けてきた。後継者問題もあるが、素材の良さや、丁寧に扱うことによって、生涯使えるものも多い。その制作には、多くの時間と手間を必要とし、製品の付加価値は高いのであるが、その分価格が高くなる。日常生活の中で、誰しも使うかというと、残念ながら、他の製品で代用が効くため、購入者が限定されてくる。ここら辺が解決しないと後継者問題も解決されず、負のスパイラルとなって、何れは博物館入りとなり、伝統が継続しない運命を持ち合わせていると言える。

 

 ニーズがあってこその製品制作であり、大量消費化へ向かうか、工芸美術品としての価値を高めるかの選択が常につきまとう。世の中の動向と多くの方へ周知するという情報戦略があって、始めて、地場産業の継続と伝統が維持できるのである。