まるでレースのカーテンのようです。
年度変わりとなり、4月1日付けで、新たな職場へ出向や転籍の辞令を受け取った方も多いと思う。自分も38年間の勤務であったが、現職の時に転籍はなかった。13回の転勤を行い、そのうち2回は関係する団体へ出向した。平均すると3年に1度は異なる職場であった。受け持った仕事も毎回異なる内容であった。同僚と比べると多い方であるが、自分よりも異動回数が多い者もいた。3000人規模の組織であったが、職員の人事を担当する部署がいかに大変であったか、今になってよく分かる。
大企業で多く見られる所属企業外への人事異動の方法が、出向・転籍である。主として中高年齢層の余剰人員対策として用いられる場合もある。出向とは、これまでに在籍していた異動元企業、多くは親会社であるが、そこに籍を置きながら、休職して、異動先企業、多くは子会社・関連会社の使用者の指揮、命令に従って、仕事に従事することである。
異動元企業と異動先企業の双方で、雇用関係ができ、結果的に考えると二重契約が発生する。定年退職後に関連会社へ転出する場合は出向といわない。一方転籍は、異動元企業を退職し、異動先企業と新たに雇用関係を結ぶことになる。転籍であっても、異動先企業での就業年数が決められ、その満期がくれば異動元企業への復職となる場合には、実質的に出向と変わりがない。どちらにせよ、雇用契約の変更が生じるため、事前に、本人の承諾が必要である。
人事は企業で一定ではないが、人事異動を希望する現況調査や希望調書が事前に配布され、本人の希望が表明されるのが普通である。そうはいっても必ずしも希望通りには行かないが、高齢者の介護や、通勤に時間が掛かりすぎる場合などは、人事部門で考慮されるであろう。そのほか、人事異動に合理性がない場合、業務上の必要性を欠く場合、復帰が予定されない場合、労働組合との出向協定に定められた手続きに違反する場合などは、出向や転籍を拒否できる場合があるため、人事部門と十分相談する必要があり、出向や、転籍命令が権利の乱用となれば、無効になる。
特に、最近の傾向として、生産部門が海外に移転している場合が多く、子会社や関連企業の経営や技術指導を行う必要性が高くなっている。また、従業員の能力開発やキャリア形成のための人事異動もあるので、出向や転籍の意図についても明らかにした方がよい。