鳥!連続写真!掲載中!

近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

雪つり

2015年11月06日 00時00分01秒 | 緑陰随想

  積雪地域の冬景色は、風情がある。実際の生活では風情などと脳天気なことはいっていられないことは承知している。樹木を豪雪から守る知恵が、雪つりであり、雪囲いなのであるが、この他にも防風林、防雪フェンス、雪崩防止柵、融雪装置、凍結防止のための設備、二重窓、排雪設備等、冬場の天候に応じた対策が取られている。雪のほとんど降らない関東の都市部では考えが及ばない世界であり、雪国に住んだことがない人には疎遠といっても良いであろう。しかし、雪が積もった公園等の雪つりや雪囲いは冬だから必要な対策で、美しい物である。植木職人が行う風物詩でもあり、丁度今頃から作業が始まる。

 

 雪つりや雪囲いの頭頂部には、「さんだらぼっち」という編み笠を被す。さんだわらともいうが、米俵の両端にある、わらで編んだ丸い蓋のことである。何ともおとぎ話の世界に引き込まれたような名前である。いつの時代から雪つりなどの世界が生まれたのであろうか、古人は、樹木であっても、寒さから身を防ぎ、雪の重みで枝を折らないようにと気を遣ったことで生まれたのであろう。北国では高木は針葉樹であっても落葉する。黒松や赤松の高木は、温暖な地域から移送した物であろうが、金沢の兼六園には立派な黒松を見たことがあり、雪つりの松は、人工の力を加える美ともいえ、贅沢の極みかもしれないが、手間は掛かるが、雪国の世界に定着し、より美しい樹姿を愛でることが出来る。

 

 4月上旬には札幌でも雪つりや雪囲いは取り去られる半年の命である。雪景色と通じる盆栽の世界があるが、もっと世界の人々に知ってもらいたい日本の美である。盆栽が世界中に知れ渡り、愛好家が増えていると聞く。5年後のオリンピックには世界各国からの旅行者が来日する。樹木を愛する気持ちは本来人間が持っている感情と思うが、我が国で育った樹木が作る宇宙観を縮小した盆栽は、おそらく多くの人に共感を与えることであろう。樹木や石が作る世界は、自然と同化した精神性まで行き着く。借景などのその一つで、世界へ発信したい風景の愛でかたである。

 

 これらの根底には、ただ美しいばかりではなく、一種の畏敬の念が含まれているようである。自然界に人工的な加工をした部分がないとはいえないが、雪つりなども自然の一部とした風物詩であり、我が国だから生まれた世界であると思っている。自然界のあらゆる物には人間と同じ血が通い、魂を持つとの神仏への昇華を年代という量と質が兼ね備わって、神格化していく過程をかいま見ることが出来る。