流れが速い場所でコサギがヤマベを捕ったようです。
傀儡師は操り人形を操る人のことで、「くぐつし」というが、もはや死語に近い。女性の専業になってからは遊女の意味にも用いられた。操り人形やマリオネットといえば通じると思う。忍者は、頭領なる者の手先となって働くスパイであるが、この頭領を指して、傀儡師と呼ぶこともあったようである。時代は現代の今であるが、新車の購入に際し、抱く思いは、もはやディーラーの営業マンが傀儡師となり、お客であるマリオネットを自在に操るテクニックを垣間見ることが出来る。
新車を目にし、語りかける営業マンは、お客の深層心理までも見抜き、自在に操る術(すべ)をいかなる場所で習得するのであろうか、当然どこの自動車メーカーでも、車の販売においては、営業マンにノルマを課す。具体的には、毎月の新車契約件数であり、販売台数、契約金額等であろう。四半期なのか、決算時期なのかはメーカーによって異なるが、営業マンごとの地域割りも営業成績となって、競争原理が働くことになるが、優秀な営業マンは顧客との意思疎通を図り、将に傀儡師への変貌を遂げる。
昔、流行った歌謡曲の中に、夢追い人という歌があったと思うが、空想の世界を演出できる人でもあり、夢の世界へ誘う(いざなう)人がいることも確かなことである。宮沢賢治は銀河鉄道で、メルヘンの世界を作り上げた。岩手県の貧しい自然環境と北国の冬の厳しさの中に凍える生活が同居していた時代のことである。地獄を知った人間だからこそ、そこからの精神的脱却を図り、夢として表現することが出来たのかも知れない。厳しさ故に知り得る想像の世界があったのであろう。
営業マンの話に戻るが、人は格好良さや、人力でははなしえないスピード感や、移動性を時間の尺度を変えて考えることが好きなようである。新幹線しかり、リニアモーターカーもしかりである。科学技術の賜である。自家用車は手の届く範囲にあり、あこがれを現実のものとすることが出来る対象でもある。若者の車離れの話もあるが、夢の世界であったマイカーを持つ魅力は、単なる移動手段ばかりではない。マイカーによって、移動距離を縮めることが可能となる。流れるようなフォルム、6気筒エンジンが静かな走行性を約束する。安全性を加味した各種新技術の結晶は、時代を先取りした気持ちにさせる。
顧客の満足度を測る傀儡師まがいのテクニックはどこから学んだものなのか、明らかに、マリオネットの顧客は幻想の世界へ迷い込み、興奮と異次元空間を彷徨う(さまよう)のであり、傀儡師の虜となってしまうのである。