キューピーヘアーのたらたら日記

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『砂の女』 安部公房

2020-10-30 13:01:45 | 
若い頃、安部公房の小説・戯曲を何作か読んでいて、

面白かった記憶があったので手に取ってみた。

本作を読んだのは初めてである。


主人公は教師、昆虫採集が趣味である。

ある日、砂丘に生息するハンミョウの新種を求めて

海岸辺りの村を訪れ、宿を求める。

紹介された宿は、砂の穴に埋もれそうな民家で、

寡婦が一人で住んでいた。

その女は、夜ごと家に被さってくる砂を掻き出す作業に追われ、

日中は疲れて寝ている。

翌朝、男は縄梯子が引き上げられた砂の穴で、

閉じ込められたことに気付く。

男はあらゆる手段を講じて脱出を試みるが、

いずれも失敗に終わり、最終的には

牢獄で監禁されているような生活になじんでしまう。


僕には、安部公房がなぜこの小説を書いたのかがよくわからない。

我々の一生とは、この主人公が課せられたような、

毎日砂搔きをして過ごすようなものである、と言いたいのか?

貧富の差というものも、気晴らしの多さの違いに過ぎないのか?

僕にはよくわからない。

だが、僕は願う。

僕の一生が砂搔きでないことを。


多感な時期を仏教の高校で過ごした僕にとっては、

人生は悟りを得るための旅なのだ。

旅行をしたり、本を読んで知見を広めるのも、

単なる気晴らしなんかじゃない。

すべては悟りのためなのだ。

確かに、現実は砂搔きのような仕事ばかりしていた。

生活費を稼ぐためにやむなく就職した日東電工で、

会社主義思想と熾烈な戦いを演じたが、

一度だってそれに染まることはなかった。

キリスト教に傾倒したこともあったが、

60を越えて、仏教に回帰した。

僕にとって、一生は、

魂の意味・目的を悟るためにあるのだ。

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