ケベックリタイヤ日記

ケベックでリタイア暮らし。ながらえば憂しとみた世も今は忘れた。毎日悦びの種をみつけてぽりぽりかじりたい。

秋に寄せ

2018-11-22 10:57:05 | ニュース
 秋に寄せ 舞い滑る君 倭子に似て

 羽生結弦は何故かくも人の胸を打つんだろう。ロシアでのフリープログラム、涙がこみ上げた。たぶん、もし過酷な運命というのがあるならば羽生は果敢に次から次と襲う暗雲に立ち向かう。幼少からの病歴、怪我歴をたどれば、あたかも運命が、「お前に成功などさせてたまるか」とばかりに刃向かってくる。だが羽生は運命を呪いもしなければ怨みもしない。むしろ自分の力量のなさと受け止める。異星人扱いされる羽生とて人間、そう遠くない時期に矢折れ力尽き果て無念の涙を流す日が来ると思う。それでも羽生の演技をみてると遠くの未知なる地平線に向け視界が果てしなく広がる思いがする。彼はどれだけの人を勇気づけ生きる悦びを与えたことか。

 羽生にもフィギュアスケートにも全く興味のない夫がたまたまテレビに映った松葉杖姿の羽生をみて、「これが羽生か、子供じゃないか」と言った。そういえばSP(秋に寄せて)を終えてオーサーコーチに向かう羽生の顔は、これまでになかった笑顔、最初にロシアでロミオとジュリエットを演じた時の笑顔とだぶるものだった。久々に見せたその子供のようなきれいな笑顔にはっとさせられ心打たれた。私たちは才能を与えられたがゆえに課せられた試練を生きる天才の心の内を知ることはできない。