ケベックリタイヤ日記

ケベックでリタイア暮らし。ながらえば憂しとみた世も今は忘れた。毎日悦びの種をみつけてぽりぽりかじりたい。

夏花

2019-07-22 09:11:03 | 聴く
 夏花を次々咲かす指揮はだれ

 何もかも値上がりするのに7年間凍結の年金生活。さて何を削ろうかとなるとコンサートや美術館などの文化費。夫が、コンサート行くの楽しみなんだろう、なんでもかんでもケチらないで行きなと言うので行きたいプログラムあれこれみたらどれも完売だった。アレクサンドルタローなどいつのまにか切符が150ドルになっていた。まだ知名度が少なかった頃は50ドルでも席はかなり空いていたのに今やドル箱スター。

 が、落胆するには及ばない。MEZZOという番組があり24時間、クラシック音楽、オペラ(字幕付き)、ジャズからクラシックバレー、モダンバレーまで流してる。アレクサンドルタロー、ルカデユバルグ、ランラン、カティヤ、アルゲリッチ、ポリーニ、、、、新人から中堅、ベテランまでごちそうづくめのライブ演奏がテレビで観れる。が、年のせいか飽きっぽくなって最後まで魅入られ思わず拍手する演奏と言うのは稀。その稀な演奏に出会うと幸せで血のめぐりが良くなり活力が出てくる。

 昨日それに出会った。ベートーベンの交響楽で好きなのは第7と8、第7のコンサートライヴを録画しておいた。結成10年というが全く知らなかったLES DISSONANCES(不協和音オーケストラ)によるもの。驚いたのが指揮者がいない。おまけに演奏者同士が時に顔を見合わせてほほ笑んだり、楽しそうにニコニコしてる。演奏も実に快活で生き生きしており、ベートーベンだって年中苦虫を嚙み潰したような顔してるわけじゃなし、喜怒哀楽の喜や楽の心躍るときは子供のように弾んでたんだろうと思わせる演奏だった。

 なんだこのオーケストラはとネットで調べるとDAVID GRIMALというヴァイオリ二ストが創設した「縦社会や統制の少ない各楽団員の自由に任せるコラボレーションによる楽団」。最初は混とんとしたが練習を重ねるとともにうまくゆき、今では観客動員に四苦八苦するコンサートホールを満席にする人気楽団の一つ。

 楽団員の一人は「指揮者なしでの演奏は、各人が最後の音符の一つの演奏まで責任があり、曲を深く探るようになり新発見があります」。観客の一人は「第一ヴァイオリンが楽団を導くがごとく鳴ると皆が秩序のなかに入るんです、でもそれはコントロールすると言うんじゃないんです、みなさん陽気で笑顔で、それが私達観衆にも伝わるんです」。

 つい先だって、故ケベッククラシック批評家の第一人者CLAUDE GINGRAのルポルタージュがありました。そこで彼は、今の時代は人権やら労働基準法やらでトスカーニやシャルル・デュトワのような高い演奏ヴィジョンを持つがゆえに楽団員を怒鳴ったり指揮棒を投げつける指揮者がいないと演奏の質の低下を嘆いていました。LES DISSONANCESは従来とは正反対を行くオーケストラです。それ故にいまだに門戸を閉ざしている有名コンサートホールもあるとか。この指揮者不在のオーケストラは毎回毎回どんな演奏になるかわからないです。なにしろ指揮者のカラーというのがないので。しかし音楽の世界もつねにムーヴメントの中にあり新しくうまれいずるものってあるんですね。

 彼に賛同し参加した演奏家の顔触れは一流どこが勢ぞろい。中に以前から良くMEZZOで聴き魅かれていたチェリストがおり名前を控えておらず探すのに苦労しましたが見つけました。YAN LEVIONNOISという若手です。アマゾンでCDの値段をみてびっくり、高すぎ。

 今年、あれこれの花を無秩序に買って植えてるが、指揮者なきオーケストラの演奏のように私の無秩序な菜園とも花の園ともつかぬ裏庭はいったいどんな音楽をかなでるのだろうか。自由な無秩序から生まれる何かはわからない。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿