天に昇る階段
天に歩いて上っていく階段があった。
その階段を最後まで歩いて上れば誰でも願うものを得ることができるという話が人々の間に広く広がっていった。
人々はそれぞれ成し遂げたい願いを持って階段を上って行った。
しかし、最後まで階段を上った人が誰もいなかった。みな途中であきらめて降りてきた。どんなに階段を上っていってもずっと階段だけが続くだけで、階段の終わりが出てこないということがその理由だった。
結局最後まで上ってみた人がいない中で人々はだんだん、階段を忘れていった。だが、決して階段を忘れない一人の少年がいた。
「天に上がる階段を最後まで一度上がってみなさい。」
おばあさんが亡くなる時に言った言葉を少年は決して忘れないでいた。
少年はおばあさんに会いたいと思う時、おばあさんが話したその階段の上に一度上ってみたかった。
少年は休まなかった。風邪が吹いて、雲が前をふさいでも終わりない階段を上っていった。どんなにつらくてもあきらめなかった。階段を最後まで上がろうということの外には何の願いもなかった。
階段を上っている途中に少年の頭はいつの間にか白く変った。
少年が老人になってやっと階段の終わりにたどり着き、また階段を下に下りて来た。
記者が老人にインタビューするためにぞろぞろ集まってきた。
「おじいさんは何の願いがあって階段を最後まで上ることができましたか。」
一人の記者があわててマイクを向けました。
「何も願いはありません。ただ階段の最後まで上っていくことだけが私の願いでした。」
「階段の終わりには何がありましたか。」
老人はしばらく目をぎゅうと閉じていましたが、人々を見回した。
「何もありませんでした。あったとしたらただ人生があっただけです。」