退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

泣かないで花を見なさい

2014-07-25 05:53:17 | 韓で遊ぶ

一番きれいな花
夫が死んだ。結婚してから1年もたたないのに、交通事故で死んだ夫があの世の人になった。明け方の京釜高速道路で大型トラックが夫の車に衝突したしまった。
涙も出なかった。気持ちが動転した中で葬式を執り行った多くの人が慰めの言葉をかけてくれて、夫の死が既存の事実化したが、認めることができなかった。夏の休暇の時、息子を抱いて故郷の海辺に行こうと言っていた言葉だけが浮かんだ。
彼女は妊娠中だった。どうしても神様を理解することができなかった。本当に恨めしかった。貧しかったけれど、まじめな気持ちで一生懸命世の中を生きていこうと努力していた夫だった。
通っていた教会へ行かなくなった。そして苦痛の中で出産した。夫が望んでいた男の子だった。
彼女は息子を抱いて夫の故郷を訪ねた。東海が見える山裾に夫は眠っていた。彼女はおくるみを開いて夫が眠っている墓を子供に見せてやった。波の音が絶えることがなかった。夫を早くに連れて行った神様がまた、恨めしかった。息子を得た喜びより夫を失った悲しみもっと大きかった。
「今日が日曜日なのに、なぜ教会に行かないの。」
山を降りてくるなり義父が彼女を呼んだ。情にあふれた、日差しのような暖かい声だった。
「いやだからです、お義父さん。」
「なぜ。」
「あの人をこんなに早く連れて行った神様が恨めしくて。」
「こんなにかわいい息子をくれたのに。」
「はい、それでも、恨めしいです。」
彼女が言葉もちゃんと終わらないうちに涙をいっぱいにすると義父が彼女に庭の前の花畑へつれて行った。花畑にはバラ、ダリア、松葉ボタン、鶏頭、などがいっぱいに咲いていた。
「ここで、とりたい花があったら一本とっておいで。」
義父は恐ろしげに口を開いた。
彼女は一番きれいに咲いていたバラの花を一枝とった。
そうすると義父がまた口を開いた。
「その花をとって花瓶に挿すように、神様も一番美しい人間を先にとって天国を飾るのだと言う。もう、あまり悲しむな。」
コメント
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