「やめ楽天」草刈り場に 格安スマホが値引き合戦、5カ月無料も
動画配信のUSEN-NEXT HOLDINGSとヤマダホールディングスが共同出資するY.U-mobile (東京・品川)は9月、サービスブランド「y.u mobile」で、楽天から契約を移す場合に基本料が最大5カ月無料になるキャンペーンを始める。
USEN・ヤマダ連合が攻勢
同社はヤマダデンキの店頭で申し込みを受け付けており、22年4月から5GB(ギガは10億、GB)の通信量で月1070円(税込み)などとしている基本料について、最大3カ月無料にするキャンペーンを実施してきた。楽天が5月、1GB以下の通信量なら基本料を0円とするプランの廃止を発表したため、公式サイトから契約すれば最大2カ月無料となるキャンペーンの開始予定を前倒しし、7月から導入していた。
さらに9月以降は、楽天の自社回線サービスからの乗り換えに限り、無料期間を2か月分上乗せする。楽天からの乗り換えニーズが高まっており、鹿瀬島礼社長は「ユーザーの取り合いに参戦したい」と話す。
楽天の自社回線サービスの契約数は6月末時点で477万件となり、4月から約23万件減った。0円廃止は財務改善のためで、楽天グループは23年1~12月期中のモバイル事業の単月黒字化を目指している。大和証券の石原太郎アナリストはレポートで「(1契約あたりの売上高である)ARPUの上昇と、(KDDIとの)ローミングの費用減少で赤字縮小が続くだろう」とコメントした。
楽天の0円プランは8月いっぱいで終わるが、9~10月も基本料などに相当する楽天ポイントを携帯契約者に還元するため、10月末までは実質無料と言える期間が続く。ただ、その後は契約を見直す人が再び増えるとみられている。
MMD研究所(東京・港)の6月の調査では、楽天からの乗り換えを検討しているユーザーのうち、MVNOへの移行を考えている割合はおよそ16.8%だった。移行先を決めていない「浮遊層」31.1%も合わせると、5割に及ぶ。こうした需要を取り込むべく、各社が策を練る。
最大手IIJ、基本料半額も
MVNO首位で「IIJmio」などを展開するインターネットイニシアティブ(IIJ)は8月の間、音声通話付きプランを申し込む人に、基本料を半年間、毎月440円割り引くキャンペーンを実施。基本料が月850円の2GBプランは半額以下の410円となる。
総務省によると、MVNO事業者の全回線数に占めるIIJのシェアは3月末時点で18.1%。同社の個人ユーザーの契約数は4~6月期に1~3月期比で約3%増え、約113万回線となった。
関西電力子会社のオプテージ(大阪市)は、6~7月の「mineo」の契約数が前年同期比で6割以上増えた。そこで8月下旬、月額990円からのプラン「マイそく」に新たに660円の「ライトコース」を加える。12月ごろの開始を検討していたが「各社の動きが活発化する中で前倒しした」(同社)。
ソニーネットワークコミュニケーションズ(東京・品川)は2月から、携帯の「NUROモバイル」を光回線「NURO光」と併せて新規契約した場合に、基本料を1年間毎月330円割引いてきた。このキャンペーンサイトの閲覧数が5月に急増したため、6月から割引額を一挙に2倍以上の792円とした。月792円の3GBプランなら1年間、無料になる。同社の6~7月の1日当たりの乗り換えユーザー数は、5月上旬と比較し約3倍に増加した。
MVNOは通信回線を大手から借りるため初期投資が少なく、異業種が数多く参入してきた。総務省によると22年3月時点で1648社ある。だがNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの壁は厚く、存在感を示せていない。移動系通信の契約数に占めるMVNOの割合は13%にとどまる。
しかも、大手は今やMVNOと正面からぶつかる敵と言える。KDDIの格安プラン「povo」は、必要な分だけデータ量を買う仕組みで、基本料は0円。契約者を増やし、定着させる魅力的なプランをどうつくるか。MVNOの課題は今まで以上に重みを増している。
ドコモ回線のMVNO