中国監視社会の“三種の神器” 個人の自由はもはやない
2018.06.17(liverty web)
《本記事のポイント》
- 監視システム(1)信用度で人民をコントロール
- 監視システム(2)AI監視カメラで大衆監視
- 監視システム(3)ネット検閲で、世界へのアクセスを遮断
中国の監視システムが、テクノロジーの発展によって大きく進歩していることは、近年、メディアでも報道されるようになった。中国の監視社会を支えるシステムについて、次の3つを取り上げたい。
まず一つ目のシステムは、「信用中国(クレジット・チャイナ)」だ。習近平政権が、百度(バイドゥ)の技術協力を得て、2015年に稼働を開始した。
同システムは、個人情報に基づき、利用者がどれほど「信用」できるかを数値化している。今月1日には、航空機や鉄道の利用を拒否された計169人のブラックリストを公開。一方で、信用が高ければ、中国当局から表彰される仕組みとなっている。
このシステムは、監視というネガティブな側面よりも、中国政府にとって望ましい人民をつくり出す方向に主眼を置いているのが特徴的だ。
中国では、そうした信用力で人々をコントロールする考え方が広まっている。
その象徴が、アリババの関連会社である「芝麻信用」。同社がつくる信用度の指標と他社のサービスを連結することで、例えば、信用度が高ければ、優先的に予約できたり、金額の面で優遇されたりするサービスが始まっている。
大衆監視の「天網」
二つ目は、「天網(スカイネット)」。
これは、2012年に北京市から本格導入されたシステムであり、AIの監視カメラと犯罪者のデータをリンクさせ、「大衆監視」を効率的にしたものだ。13億人の中から1人を特定するのに、約3秒しかかからないという。
中国の都市部には、2000万台を超える監視カメラが設置されているとされ、2020年までに、そのカバーエリアが全土に拡大されるとしている。
さらに香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、このシステムが、マレーシアの警察に提供されたと報じられており、監視網は、中国だけでなく、世界にまで広がりつつあるという。
ネット監視の「金盾」
三つ目は、インターネットを監視する「金盾(いわゆるグレートファイアウォール)」。
中国は1993年に、情報化・電子政府化を目指す戦略を策定し、その中に「公安の情報化」を盛り込んだ。このシステム開発には、多くの多国籍企業が協力。検索ワードやメールの送受信、人権活動、反政府活動などを「検閲」し、ネットのアクセスの自由を厳しく制限している。
昨年、「くまのプーさん」が、習氏に似ているとの理由からネットで表示されなくなった騒動は記憶に新しいだろう。当然、オンラインにおける自由度は、「世界最悪」と評価されている。
中国は、こうした"三種の神器"とも言える監視システムを駆使して、人民をコントロールしている。興味深いのは、一部のシステムは、海外に輸出されたり、多国籍企業が協力したりしていることだ。
つまり、監視システムは国境を越え、世界に影響を与えており、日本としても対岸の火事ではないと言える。
日本は、「個人情報保護の後進国」であるが、プライバシー権の確立など、自由を守るための対策を急ぐべきである。
(山本慧)
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