「価値観の罠」: 中立的立場の罠とは何か?
2025.02.23(liverty web)
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《本記事のポイント》
- 多様性を八正道の「正思」から見ると
- ウィキペディアに見る「中立性」の問題点
- 「中立的立場」に問題意識を持とう
前回、価値観の罠シリーズの第1回目として「多様性の罠」と題し、現代社会の中にある「多様性」という価値の問題点を取り上げました。
現在米国では、各種報道にもある通り、トランプ大統領就任後、この多様性を保護する米国内の政策〈DEI:多様性(ダイバーシティ)、公平性(エクイティ)、包括性(インクルージョン)〉への見直しが連日話題に上っています。
それ以外にも、「政治的正しさ(ポリティカル・コレクトネス)」や、それに対する行動指針としての「格差是正措置(アファーマティブ・アクション)」という考えに基づき、歴史的に差別を受けてきたマイノリティや弱い立場にある集団を保護し、公平な社会を目指すためのアプローチがあります。
しかし、一部のケースでは、これらの施策が「逆差別(リバース・ディスクリミネーション)」を生んでいると指摘され、前述のような制度の見直しが進んでいることは前回触れました。
より本質的な多様性の解釈
また、前回の多様性の問題の補足説明として、幸福の科学の説く仏法真理に基づく「多様性」の理解に関しては、多様性を受容する前提として、霊的な実相世界の多元的な階層構造(多層性)との関係があり、「八正道」における「正思」の反省徳目があります。
教えの高低差、色合いの違いも含めて、人間が霊的に成長すればするほど、すべて並列ではなく、立体的に多様な見方ができるようになるという意味での多様性が受容されることが示されていることを付け加えておきます。
中立的立場の罠とは?
さて、その上で今回は、この多くの人が受容できる価値観を選択していく過程の中で、やはり簡単に反論できない観点として、現代社会の中に「中立的立場」というものがあるように思います。
「中立的」とは特定の価値観や立場に偏らず、物事を客観的に捉える姿勢を指します。手続きの公正さに重点を置く司法制度や行政手続きにおいては、この「中立性」を「公平性」という文脈で捉えると、民主的な意思決定として「すべての価値を平等に扱う」という立場をとらざるを得ない側面もあります。
ただし、よくよく考えてみれば、あらゆる判断には、当然、その判断基準として、何らかの価値基準が含まれるわけで、「判断しない」という選択の中にも一つの判断基準があり、特定の価値観を前提にしなければ、やはり成立し得ないと言えます。
まさに、ここに「中立的立場の罠」あるいは呪縛が存在して、やはり、本来選択すべき価値判断の妨げになっているように思えてなりません。
問題点の多いウィキペディアの編集方針
この「中立的立場の罠」の典型的な事例を非営利団体の「ウィキペディア財団」が運営しているオンライン百科事典であるウィキペディアの編集方針に見ることができるように思います。
誰でも登録すれば自由に執筆や編集が可能なウィキペディアの編集方針は、「中立的な観点(ナチュラル・ポイント・オブ・ビュー)」を基本原則としており、「特定の価値観に基づく編集を行わず、バランスの取れた記述を心がける」ことを求めています。
これは前述した左翼リベラルなポリティカル・コレクトネスやアファーティブ・アクションとも整合するように見え、百科事典機能を超えて深刻な問題点が存在します。
一例を挙げると、差別的または不適切とされる用語の使用を避ける方針を踏まえて、歴史的な用語の見直しとして、「インディアン」を「ネイティブ・アメリカン」、「エスキモー」を「イヌイット」に置き換えることは一定の市民権を得ているとも言えますが、性別に配慮した表現の採用として、「スポークスマン」を「スポークスパーソン」にしたり、「チェアマン」を単に「チェア」に言い換えたりしています。
さらに「ウィンストン・チャーチルは偉大な指導者か、それとも植民地支配の加害者なのか?」といった歴史的な人物評価を判断する際に、左翼リベラルな観点から歴史的評価の多様性に配慮してしまうと、問題が生じます。例えば、「植民地支配の問題」を重視すべきではないかという圧力から、上書き合戦が始まり、中立性を損なうという可能性も出てきます。
歴史の中で形成された伝統的な言葉や、歴史的背景を無視して、偏向した歴史観で改編することで、中立性が損なわれる危険性は、常に内在しているわけです。
関連記事(「Wikipediaの闇──無責任記事はなぜ垂れ流される」)にもあるようにウィキペディアの編集の最終意思決定者が誰なのか、グレーゾーンも存在しているわけで、中立的どころか一定の価値観に誘導されるという本末転倒な可能性も否定できません。
どうやってこれからの時代に正しい価値判断を加えていくのか。客観的な事実と偏向した価値観とを峻別し、この簡単に反論できない「中立的立場」というものにしっかりと問題意識を持ち続けることが求められていると思います。(吉崎富士夫)
【関連書籍】
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『真説・八正道』
大川隆法著 幸福の科学出版
【関連記事】
2025年2月号 Wikipediaの闇──無責任記事はなぜ垂れ流される
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2025年2月7日付本欄 NYタイムズ世論調査で「トランス女性は女子スポーツに参加すべきでない」との回答が8割トランプ氏の政策は独善的ではない
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2025年1月26日付本欄 「多様性の罠」:「みんな違ってみんな良い」の危険性とは何か? 【吉崎富士夫氏寄稿】