ヒマジンの独白録(美術、読書、写真、ときには錯覚)

田舎オジサンの書くブログです。様々な分野で目に付いた事柄を書いていこうと思っています。

バイクの動力伝達方式にはどんなものがあるか

2016年02月14日 16時34分26秒 | バイク
バイクエンジンの動力を駆動輪に伝える方式にはどんなものがあったのかを、考えてみたいと思います。
バイクの一般的な動力伝達はチェーン駆動です。エンジンの出力軸に取り付けられたスプロケットと後輪のハブに取り付けられたスプロケットの間をローラーチェーンで結んでやることで動力を伝達するのがチェーン駆動です。
この方式は機構が単純なことや部品点数も多くならないこと、それに前後のスプロケットの歯数を変えることにより容易にギヤ比を変えられることなどの利点により現在の主流となっています。
原付バイクから1400CCクラスの大型車まで広く採用されています。

このような利点がある一方、少なからず欠点もあります。
ローラーチェーンは作動時にはローラーとピンが常にこすれあって回転していますので、ピンの外側とローラーの内側が摩耗していくという運命にあります。摩耗の度合いを少しでも軽減させるためにオイルやグリースで潤滑してやらなければなりません。使用していくにつれて、いわゆる「チェーンの伸び」が発生します。チェーンを構成する素材そのものの伸びよりも、摩耗によりピンとローラーとの隙間が大きくなり、その隙間が積み重なり全体としてチェーンの長さが増大することが伸びの原因です。伸びてしまったチェーンを使い続けるとチェーンが動くとき、上下にうねったりして、動力の伝達がスムーズにいかなかったりしますので、定期的なチェーン引きの作業が必要になってしまいます。そしてチェーン引きの範囲を超えて伸びきったチェーンは交換をしなければなりません。
大馬力車で荒いアクセルワークを多用する車両では一万キロもしないうちにチェーンの交換が発生することもあるようです。

次に、チェーン駆動以外で古くから使われている駆動方式はシャフト駆動です。
シャフト駆動は車のFR車と同じようにエンジンからの動力を回転軸に伝え、駆動輪のハブの部分で90度回転方向を変換してやりホイールを回してやります。駆動軸はスイングアームの中におさめられておりホイールハブ側とミッションケース側に複数のベアリングによって保持されています。この方式の利点はチェーンのように伸びたりはしない事と定期的な給脂や清掃などののメンテナンスが不要なことです。このように優れた動力伝達方式なのですが、全く短所がないわけではありません。
その短所としては高い工作精度が要求されること、それ故チェーン駆動に比べると装置全体の価格が高くなりがちです。またギヤ比の変更がほぼ不可能なことなどが挙げられます。
BMWの水平対向エンジンを搭載したRシリーズと縦型水平エンジンのKシリーズがシャフト駆動では有名です。水平対向エンジンとシャフト駆動は相性が良いと見えて、国産車にも採用例があります。ホンダのゴールドウイングGLシリーズやウイングGL500 などで採用されていました。BMWのシャフト機構の透視イラストがありましたので見てみましょう。


シャフトドライブの多くは中型車以上に採用されていますが、珍しい例では小排気量車に採用したのもあります。それはヤマハのタウンメイトという原付ビジネスバイクです。50CCと80CC(後で4ストの90CCも出た)があったようです。タウンメイトはいわゆるビジネスバイクなのでメンテなしで毎日使われることが普通なので耐久性を考慮して採用されたのでしょう。郵政バイクにも採用されたことがあるそうです。次の画像のものです。

ヤマハにはこのタウンメイトの他にポップギャル、マリック、キャロットという原付車にもシャフトドライブを採用した例があります。

さて、チェーンやシャフトによる駆動が一般的になる以前に取られた方式にベルトによる伝達がありました。
創世期のバイクには動力伝達方式としてベルトが使われていました。我が国でも自転車の車体に後付けするエンジンの駆動を伝えるのにゴムベルトを使っていたのを子供のころ見たことがあります。こんなバイクでした。


ベルト駆動方式はその後、チェーンによる動力伝達にとって代わられ、主流になることはありませんでした。
現在でもベルト駆動を積極的に採用しているのがハーレー車です。
次の二つの画像を見ていただきたい。
 
一番目の画像はエンジンのクランク軸の出力をギヤボックスに伝える一次駆動ベルトです。二番目の画像はギヤボックスの出力を後輪に伝える二次駆動ベルトです。
一次駆動にベルトを採用した機種には二次駆動にチェーンを使用したものもあるようですが、ハーレーは伝統的に動力の伝達にベルトを積極的に採用している珍しいバイクメーカーです。
なぜハーレーはベルト駆動にこだわるのでしょうか。
ハーレーの大排気量、大トルクのエンジン出力を後輪に伝達するにはベルトのような伸びる素材の方がチェーンのような金属素材よりも動力伝達の急激な変化にも柔らかく対応してくれるからだと言われています。チェーン駆動の普通のバイクには後輪ハブにゴムダンパーが組み込まれ、アクセルの急な開閉時の動力の急な変化が動力伝達機構に悪影響を及ぼさない工夫がされています。
ベルトによる動力伝達機構がゴムダンパーの代わりをさせているのでしょう。他メーカーとの差別化としてハーレーがあえて採用している販売戦略の一環と思います。

BMWのF800シリーズにもベルト駆動がつかわれています。


シャフトやチェーン、そしてベルトを使わない動力伝達の方法は無いのでしょうか。
実は小排気量車に使われていた方式にローラー押し付け駆動とでもいうべき方式がありました。次のものです。

フランスのソレックス社のモペッドです。前輪の上部に設置されたエンジンの出力を前輪タイヤのトレッド部に回転するローラーを押し当てて伝えるという合理的かつイージーな方式の動力伝達方式でした。

最後に変わった動力伝達方式で、市販車ではありませんが油圧駆動でタイヤを回してやった例もあったようです。次のものがありました。
   
一番目のものはヤマハが作った前輪が油圧で駆動できる機構を備えたオフロード車です。
二番目のものも油圧駆動の二輪駆動バイクです。
共に前輪を駆動させるために前輪ハブに油圧モーターが組み込まれ、それに油圧を供給するためのホースを備えているのが画像から判ると思います。

今回の動力伝達方式と前に6回に渡りバイクエンジンの気筒数のお話をしましたが、そこで気づいたことがあります。それはバイクは車に比べれば画一性が少ないということです。エンジンの気筒数とその形式の種類の多いこと、そして動力伝達方式にも数種があります。同じ排気量でもエンジンの形式でバイクの乗り味が違ってきたりしますのでバイクの世界は奥が深いと思います。



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