ヒマジンの独白録(美術、読書、写真、ときには錯覚)

田舎オジサンの書くブログです。様々な分野で目に付いた事柄を書いていこうと思っています。

ブリューゲル「バベルの塔」展を観る(その3)

2017年06月22日 09時38分59秒 | 美術 アート
きょうは、「バベルの塔」の絵以外でその絵画展で展示されていたものについての印象です。

この絵画展に添えられた副題は<16世紀ネーデルランドの至宝ーボスを超えてー>となっています。

ネーデルランドとは「低地の国々」を指す言葉で、現在のベルギーとネーデルランド(オランダ)およびルクセンブルクのの3国からなる地域と巨大辞書にありました。
また、この地域は「ベネルクス3国」ともいわれています。ベルギーとネーデルランドとルクセンブルクの国の呼び名の文字を組み合わせたのだそうです。

さて、ネーデルランドでは16世紀に絵画史上で優れた技法と革新的な技術のおかげで、優れた画家を輩出しています。
それらのうちの一人が、ブリューゲルと共によく知られているヒエロニムス・ボスという画家です。

ボスが描く画風は、奇怪な絵で知られています。

例えばこれです。



この絵は祭壇に飾るための「祭壇画」と言われるものです。1903年頃の作とガイドブックには書かれていました。
絵の題は<快楽の園>と名付けられていました。
3枚の絵が一組となっています。右の絵は地獄を表し、左は天国の園を表しているとされています。中央の絵には裸体の人々と様々な動物と奇怪な生物が描かれています。
地獄絵にも奇怪な生き物が多く描かれています。
これ等の奇怪な生物を一体なんと理解すればよいのでしょうか?まったくもって不思議な絵です。

実際、この絵を目の前にすれば観客はその奇怪さに、現代社会に住む自分たちの常識が何の役にも立たないことを知ることになります。
それほど強いインパクトをこの絵は観客にもたらすのです。

日本においても地獄絵は描かれています。ですが我が国の地獄絵に描かれている「閻魔大王」などを観ても、その形相は奇怪であっても、一応人間に似せた姿形をしていますね。
ところがボスが描くこの絵の地獄絵に描かれている「生物らしきもの」の姿かたちを一体なんとよべば良いのでしょうか。

地獄絵の中央に描かれている不思議な物体に注目してみましょう。
卵の殻を横にしたような胴体に2本の脚とも手ともつかぬものが生えています。その物体には人の頭が見えます。そしてその顔の上には帽子があります。
その帽子の上では人と共に何やら訳の分からぬ物体が描かれています。そして胴体にははしごが掛けられていてその内部に入ることが出来ます。その内部にはテーブルが置かれてそれに向って数人の人物がいるのが見て取れます。
その部分を拡大してみました。これです。



この絵には現実にあるものと、現実には存在しないものとの共存が描かれていると観れば、一体どのようにこれを考えたらよいのでしょうか?

16世紀のボスという画家による、それを観る後代の人々に向っての、一つの挑戦であると考えることは出来ます。
これ等の絵に描かれていることの「意味を理解しようとする」試みは、現代人の私たちにとってはほとんど無意味な営為に思えるのです。

この絵画展での他の絵に付いての印象は、また後日という事にします。



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