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想像の旅---カサブランカ(1)

2018-08-25 | 地球の姿と思い出
「想像の旅---マラケシュからジブラルタルへ」から続く。

前回(7月)は「途切れない糸---続編」に脱線したが、今回から本筋の「想像の旅」に復帰する。

1.想像のカサブランカ
アフリカでは有数の大都会カサブランカは、人口415万人(2013年)の海に面した商業都市である。

地中海性気候の温暖なカサブランカは、紀元前10世紀ごろにベルベル人が定住し始めた。やがて港町として紀元前7世紀ころにはフェニキアと交易、前5世紀にはローマとの交易で栄え、7世紀ごろには独立国家に発展した。しかし、15世紀の中ごろからスペイン・ポルトガルとのトラブが発生、1468年にポルトガル人が街を焼き払った。その後、1515年にポルトガル人が街を再開発、その街をカサブランカ(Casa=家 blanca=白い)と名付けた。

筆者が想像する街のイメージは、青い海とベージュ色の砂漠を背景にする白い街である。それは、カミュの「異邦人」にでてくるアルジェ―に似た街である。そこには灼熱の太陽、透明な青空、熱風の砂浜が広がる。

ここからは本当の空想の旅行が始まる。

観光地のマラケシュから電車に乗って3時間、午後のカサブランカに到着した。3時間の旅はエアコン付きのコンパートメントで快適、時計台がある大きな駅で下車した。駅前でトラム(路面電車)に乗換え、メディナ(旧市街地)に向かった。

白い街並みは明るく、ほどよく乾燥した空気に“カサブランカ”らしさを感じた。岸壁に近いメディナ入口で下車、宿屋らしき建物を訪ねた。

その宿は昔風の古い建物、予約なしでも泊まれるという。さっそく泊まることに決めたが、部屋のドアには鍵もなく、良く言えば極めて開放的な部屋である。しかし、バックパッカーが利用するゲストハウスではなく、宿泊者の中には家族連れも交じっている。ちょうどタイの田舎で泊まったサービス・アパートのような感じで、治安も悪くはないがいいとも云えない。出来心の盗難ぐらいはあるかも知れないが、もともと盗られて困るような持ちものは何も持っていないのでここに決めた。

2.市場の探訪
手荷物を部屋に置き、街の散策に出かけた。すぐ近くに迷路のような市場や商店街が続き、岸壁の操車場も近い。この一帯は、数千年も昔から続く物資の集散地らしい。

まず目に付いたのは操車場の貨車、中には100輌ほどの長い編成もある。かつてウィーンで見た東欧に向かう長大な急行列車を思い出した。その列車は、パリ発やアントワープ発の客車をつなぎ合わせていたが、ここの貨車もそれぞれ出発地が違っていた。ブレーマーハーフェン発の貨車の積み荷は花の香りがするワインだろうか?いや、炎天下のアフリカではワインのはずはなく、あれこれとおもしろい。

実際の荷物は、穀類や工業製品の素材など、各地からの日用雑貨、衣類、保存食、中にはアフリカでポピュラーな日本製のサバ缶もある。広大な操車場では人や貨車が忙しく動き回るわけではないが、ところどころに動きがある。その動きを見ていると、操車場はオアシス、そこに停車する貨車が長い旅を終え荷づくろいをするラクダの商隊に見える。その光景は、かつて筆者が「ほのるる丸」で見たスエズ運河の砂丘とその向こうを進む貨物船の商隊に似ていた。

岸壁の操車場を離れ、向かいのメディナに入ると生活の匂いと活気が伝わってくる。市場には日用品や衣料、道具、食料、雑穀&スパイスの店、生鮮食品の区画には肉、魚、野菜、青果の店がある。さまざまな加工食品の売場や食堂もある。スイカやオレンジを満載したトラック、車体が傾くほど飲料水のボトルを積み込んだ小型トラックがあえぐように走っている。

すぐ近くのコーヒー・ハウスに入りアメリカーナを注文、隣席の30歳がらみの男性と言葉を交わした。当方は暇な日本人であること、テキサスやアリゾナの乾燥した気候を好むこと、カサブランカの乾燥した空気も気に入っていると話した。若者はハムディーといい、偶然にも筆者が泊る宿と同じ棟の雑貨屋の若旦那と分かった。

3.アドバイス
話すうちに、最近は取引商品が増え、店の商品管理に手こずっているとのことだった。これに対して、当方は世界各地でこの種の問題を経験したこと、もしよければ、問題解決のアドバイスもやぶさかでないと伝えた。もちろんアドバイスは無償、滞在の延期で生じる費用などを要求することもない。同じ棟に寝泊まりするよしみで、一度ハムディーの店を見せてもらうことになった。

まずは現場見学と店を訪れた。一階は店舗、地階は家財と商品置場、2階は商品置場と居住区である。目に付くのは雑然とした商品置場、これではFast-moving Item(売れ筋商品)とSlow-moving Item/Dead Stock(滞留品/死蔵品)の管理が難しい。まず、整理整頓で「目で見る管理」が大切とアドバイスした。

1)短期目標の設定
店舗と商品置場の現状から判断して、次の2つの短期目標を設定した。
1.商品陳列場と商品置場の整理整頓
  期待効果:売れ筋商品の特定⇒陳列の工夫⇒商品回転率の改善⇒売上増大
2.滞留/死蔵品の隔離と陳列スペースの拡大
  期待効果:滞留/死蔵品の評価⇒ディスカウント・セール⇒商品置場の有効活用

商品の物理的な「目で見る管理」に加え、店舗内の基本的な作業をコンピューター化する。具体的には「仕入れ(商品の調達)」「在庫管理」「販売」のシステム化で「経営視界の改善(Improvement of Management Visibility)」を実現する。それは、現物の金額・数量や販売利益の予測などをグラフ化(見える化)して、経営判断の資料にすることである。コンピューターに指示を与え、できるだけコンピューターに仕事を任せるのが賢明である。

2)システム化の概要
1.仕入業務
 1)在庫状況と販売実績から商品を発注・・・在庫管理と販売業務の実績を参照
 2)入荷商品をシステムに入力・・・商品バーコード出力、買掛金と在庫数の計算
2.在庫管理
 1)商品別置場別在庫テーブルの加算(入荷)、減算(出荷)⇒在庫数の計算
 2)棚卸しリストの印刷と実地棚卸しの結果入力・・・在庫差異の修正(月末)
3、販売業務
 1)販売数入力・・・販売先別商品バーコード&数量入力⇒在庫数の計算
 2)店頭販売と顧客別販売実績報告・・・販売実績と発注予測(Suggested Order Qty)
   (発注予測には発注先側との打合せが必要)
                    
3)システムの試行
 エクセル(LOOUPやSUMIFなどの応用)やアクセスで基本機能を試作、40~50件の商品でテストする。試行システムで仕様を固めたうえで、有料のパッケージソフトやクラウド・コンピューティングを導入する方針である。

ハムディーの熱意に答え、カサブランカの滞在を延期、エクセルで試行システムの開発をスタートした。紳士協定を前提とする一種のボランティア―活動である。

続く。

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