今から三年前の2015年8月27日、安倍首相は、遠藤利明五輪相が新国立競技場の整備計画について説明したところ、
「冷暖房はなくてもいいんじゃないか」
と指摘しました。
https://www.sankei.com/politics/news/150828/plt1508280044-n1.html
「2651億円→1640億→1595億円→1550億円。
(中略)
首相自ら新計画の発表前日となる27日、冷暖房設備のカットを指示するなど土壇場まで調整を続けた結果、旧計画から1101億円もの削減が実現した。
「冷暖房はなくてもいいんじゃないか…」
(中略)
これ以上ない削減を行ったと思っていた遠藤氏は驚いた。
首相の手元には、冷暖房を盛り込み『総工費1595億円』などと書かれた新計画案のペーパーがあった。」
唖然とする発言です。
こういう発言をする安倍首相の生理を疑います。
もっともこの発言は、3年前のものですので、その点は割り引くべきですが、残暑が厳しい時期であったことには相違ないでしょう。
おまけに、今年はついに40度を超える史上初の酷暑が続いています。
この状態は2年後も変わらない可能性がきわめて濃厚です。
引用の後続部分に、開会式、閉会式は夜行われるとありますが、夜でも熱帯夜が続いていることは日本国民なら誰でも経験しています。
しかも競技は日中の炎天下でも行われるのです。
冷房の効いた官邸の執務室で、想像力の欠落した首相はじめ閣僚たちが、ソロバンばかりこちょこちょはじいて経費削減に血眼になっている姿。
みっともないというか恥ずかしいというか。
新国立競技場はもう着々と工事が進んでいます。
しかし今年の酷暑のことを考えれば、今からでも遅くありません。
さっそく冷房装置を新たに設置するよう、予算を増額すべきです。
技術的には可能なことで、何ら問題ありません。
そもそも東京五輪はどうして真夏に開催することに決まったのか。
これについては、早くから疑問の声が上がっていました。
ここ数年日本の夏は、亜熱帯としか言いようのない酷暑と高い湿度が続いており、屋外競技では選手も観客も参ってしまうことが十分に予想されたはずです。
しかし、次の記事を見てください。
「だが、開催時期は招致の時点で決まっており、今後日程が変わることは基本的にはない。
なぜなら、国際オリンピック委員会(IOC)では、立候補都市は夏季五輪開催日を7月15日~8月31日までの間に設定することを大前提としているからだ。
では、IOCが開催時期をこの期間としているのはなぜか。
それは、欧米のテレビで五輪競技の放送時間を多く確保するためである。
IOCは欧米のテレビ局から支払われる巨額の放映権を収入の柱としている。
そのため、欧米で人気プロスポーツが開催されておらず、テレビ番組の編成に余裕のある7~8月に五輪の日程を組み込むことで収入を得るという仕組みを作ったのだ。」
https://www.nippon.com/ja/currents/d00104/
要するに、欧米のビジネスによってことが決まっているという話です。
IOCというのもしょうもないひも付き組織ですね。
64年の東京オリンピックは「スポーツの秋」にふさわしく10月に行われました。
その経済効果も、新幹線や首都高、一流ホテルなどの巨大インフラが整備され、莫大なものがありました。
今回はそれも期待できません。
ちなみに公立小中学校の冷房装置設置率は、ようやく5割弱で、都道府県によっては、2割未満のところもあります。
千葉市はゼロだそうです。
https://www.nippon.com/ja/features/h00248/
直接の原因は、自治体の財政難ですが、究極の原因は言うまでもなく財務省の根拠なき緊縮路線です。
特別国債を発行し補助金を計上することなど、決断次第でいくらでもできるはず。
公共設備として資産価値に計上されるだけでなく、大規模発注による経済効果も生じます。
大人たちが冷房の効いたオフィスで仕事をしているのに、子どもたちに毎日こんなかわいそうな目に遭わせてよいのでしょうか。
また今度の水害で明らかになりましたが、避難所である体育館には冷房が全くありません。
避難所には乳幼児もいます。
日頃からのインフラ整備を怠ってきたツケがいまこの国に大きく回ってきています。
未来の日本を担う子どもたちを見殺しにするこういう国は、早晩亡ぶでしょう。
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