小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

私の憲法草案(その2)

2013年11月10日 13時03分24秒 | 政治
私の憲法草案(その2)


日本国憲法各条項


第一章 国体

第一条(国体) 日本国は、天皇を元首とする立憲君主国である。

第二条(政体) 日本国の政体は、日本国民の代表によって構成される。
2  日本国民の要件は、法律で定める。

第三条(国家主権および国家の責務) 国は、その主権と独立を守り、公の秩序を維持し、かつ国民の生命、財産、その他諸権利を保障しなければならない。


第二章 天皇

第四条(皇位の継承) 皇位は、皇室典範の定めるところにより皇統に属する子孫が継承する。
2  皇室典範の改正は、皇室会議の議を必要とする。

第五条(天皇の国事行為) 天皇は、法律の定める国事行為を行う。

第六条(天皇の任命権) 天皇は、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命する。
2  天皇は、衆参両議院の指名に基づいて両院議長を任命する。
3  天皇は、内閣の指名に基づいて最高裁判所長官を任命する。

第七条(摂政) 摂政を置く時は、摂政は天皇の名で国事行為を行う。

第八条(皇室の財産) 皇室財産の管理運営は、世襲財産を除き国会の議決を必要とする。


第三章 国民の権利および義務

第九条(国民の権利) 国民は、この憲法が保障する自由および権利を有する。
2  国民の自由および権利は、公の秩序のために制限されることがある。
3  公務員の権利は、職務にかかわる法律によって制限されることがある。

第一〇条(外国人の権利) 外国人の権利は、在留制度に基づいて保障される。

第一一条(法の下の平等) 国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分によって差別されない。

第一二条(思想および信教の自由) 国民は、思想および信教の自由を有する。

第一三条(政教分離) 国および地方自治体は、特定宗教を利する活動を行ってはならない。

第一四条(学問の自由)国民は、学問の自由を有する。

第一五条(表現活動の自由)国民は、言論、報道、出版、集会、結社の自由を有する。

第一六条(居住、移転、職業選択の自由) 国民は、居住、移転、職業選択の自由を有する。

第一七条(財産権) 国民は、物的および知的財産権を有する。

第一八条(私生活の権利) 国民は、私生活を侵害されない権利を有する。

第一九条(情報公開の義務)国および地方自治体は、公共の利益に反しないかぎり、その保有する情報を公開する義務を負う。

第二〇条(生命および身体の自由) 国民は、法律の定める手続きによらなければ生命および身体の自由を奪われず、またその他の拘束を科せられない。

第二一条(裁判を受ける権利) 国民は、裁判所において公平な公開裁判を受ける権利を有する。

第二二条(拷問および残虐な刑罰の禁止) 国民は、公務員による拷問および残虐な刑罰を科せられない。

第二三条(一事不再理) 国民は、実行の時に適法であった行為またはすでに無罪とされた行為について、刑事上の責任を問われない。

第二四条(生存権) 国民は、健康で安定した生活を営む権利を有する。

第二五条(教育を受ける権利) 国民は、その能力に応じて教育を受ける権利を有する。

第二六条(勤労の権利) 国民は、勤労の権利を有する。

第二七条(参政権) 公務員の選挙は、成年者による普通選挙とする。
2  何人も、投票の秘密を侵してはならない。

第二八条(請願権) 国民は、国および地方自治体に対し、法律に基づいて請願する権利を有する。

第二九条(国民の義務) 国民は、この憲法および法令を遵守する義務を負う。
2  国民は、納税の義務を負う。
3  国民は、子女に教育を受けさせる義務を負う。


第四章 国会

第三〇条(立法権) 立法権は、国会に属する。
2  国会は、国権の最高機関である。

第三一条(両院制) 国会は、衆議院および参議院の両院で構成する。

第三二条(国会議員の条件) 両院は、国民によって選挙された議員で構成される。

第三三条(衆議院議員の任期) 衆議院議員の任期は、四年とする。ただし衆議院が解散された場合は、その時点で終了する。

第三四条(参議院議員の任期) 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

第三五条(衆議院の選挙) 衆議院は、直接選挙によって選出される議員で組織する。

第三六条(参議院の選挙) 参議院は、直接選挙および間接選挙によって選出される議員で組織する。

第三七条(議員の身分保障) 議員は、法律の定める場合を除き、国会の会期中、逮捕されない。
2  会期前に逮捕された議員は、議員の要求がある時は、会期中釈放される。
3  議員は、院内での演説、討論、表決について、院外で責任を問われない。

第三八条(国会の種類) 国会は、通常国会、臨時国会、特別国会とする。
2  通常国会は、年一回とする。
3  臨時国会は、必要に応じ召集される。
4  特別国会は、衆議院選挙後に召集される。

第三九条(緊急集会) 衆議院が解散された時は、参議院は閉会する。ただし緊急の必要がある時は、内閣が参議院の緊急集会を求めることができる。

第四〇条(定足数および表決) 両院は、総議員の三分の一以上の出席によって議事を開くことができる。
2  両院の議事は、この憲法に特別の定めがある場合を除き、出席議員の過半数で表決し、可否同数の時は議長が決定する。

第四一条(会議の公開、秘密会)両院の会議は公開とする。ただし出席議員の三分の二以上の賛成がある時は秘密会にすることができる。

第四二条(国会の業務) 国会は、次の業務を行う。
 ①法律の審議と議決 ②予算の審議と議決 ③条約の承認 ④重要な人事案件の同意 その他国政に必要とみなされる事項

第四三条(法律の議決) 法律案は、この憲法に特別の定めがある場合を除き、両院で可決した時、法律となる。
2  衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院の出席議員の過半数により再び可決した時は、法律となる。

第四四条(予算の議決) 予算案は、両院で可決した時、予算となる。
2  予算案は、先に衆議院に提出する。
3  予算案は、参議院の議決が衆議院と異なり、両院協議会によっても意見が一致しない時、または参議院が衆議院の可決後三〇日以内に議決しない時は、衆議院の先の議決をもって、予算となる。

第四五条(条約の承認) 条約の承認は、前条一項および三項の規定を準用する。

第四六条(人事案件の同意) 法律で定める公務員の就任は、国会の同意を必要とする。
2  前項の案件は、先に参議院に提出する。

第四七条(国政調査権) 両院は、国政に関する調査を行い、証人の出頭および記録の提出を求めることができる。

第四八条(裁判官の弾劾) 罷免の訴追を受けた裁判官を裁く時は、国会に弾劾裁判所を設ける。

 

第五章 内閣

第四九条(行政権) 行政権は、内閣に属する。

第五〇条(内閣の構成、国会に対する連帯責任) 内閣は、内閣総理大臣および国務大臣で構成する。
2  内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。

第五一条(内閣総理大臣の指名) 内閣総理大臣は、国会議員の中から指名される。
2  衆議院と参議院が異なる指名をし、両院協議会によっても意見が一致しない時は、衆議院の指名を国会の指名とする。

第五二条(国務大臣の任免) 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。その過半数は、国会議員の中から選ばれる。
2  内閣総理大臣は、国務大臣を罷免することができる。

第五三条(衆議院の解散権) 内閣総理大臣は、衆議院の解散を決定することができる。

第五四条(内閣の総辞職)内閣は、次の各場合には総辞職しなければならない。
①衆議院で不信任案が可決されるか、信任案が否決され、10日以内に衆議院が解散されない時。
②内閣総理大臣が欠けた時。
③衆議院選挙後に初めて国会の召集があった時。

第五五条(内閣総理大臣の職務) 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務および外交関係について国会に報告する。
2  内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督する。

第五六条(軍との関係) 内閣総理大臣は、軍の最高指揮権を持つ。
2  内閣総理大臣は、現に軍籍にある者であってはならない。

第五七条(国務大臣の訴追) 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない。

第五八条(緊急事態) 緊急事態が発生した場合には、内閣総理大臣は、国会の事前または事後の承認のもとに、緊急事態を宣言することができる。
2  緊急事態の認証は、閣議により決定する。


第六章 裁判所

第五九条(司法権) 司法権は、最高裁判所および下級裁判所に属する。

第六〇条(司法権の独立) 何人も、司法権の独立を侵してはならない。

第六一条(裁判官の身分保障) 裁判官は、法律で定めた欠格事由に相当する場合、および弾劾裁判による罷免の場合を除き罷免されない。

第六二条(裁判官の指名、任命、任期) 最高裁判所長官は、内閣が指名し、その他の裁判官は、最高裁判所の指名に基づき内閣が任命する。
2  裁判官の任期は10年とし、再任することができる。

第六三条(終審裁判所) 最高裁判所は、一切の法律、条約、命令、規則、処分の憲法適合性を判断する終審裁判所である。

第六四条(裁判の公開、非公開) 裁判所の審理および判決は、公開の法定で行う。
2  裁判所が裁判官の全員一致で、公の秩序に重大な支障が生じる惧れがあると判断した場合には、審理を非公開とすることができる。


第七章 財政

第六五条(財政の運営) 国の財政は、国会の議決に基づいて運営される。

第六六条(租税法律主義) 新たな課税または現行の租税の変更は、法律によらなければならない。

第六七条(国費の支出および国の債務負担) 国費の支出および国の債務負担については、国会の議決を必要とする。

第六八条(会計検査) 国の収入支出の決算を検査する独立機関として、会計検査院を設置する。
2  会計検査院は、次の年度に検査報告書を国会に提出する。
3  会計検査官は、国会の同意を得て、内閣が任命する。この案件は先に参議院に提出しなければならない。


第八章 補則

第六九条(憲法の最高法規性) この憲法は、国の最高法規であり、これに反する法律、条約、命令、規則、処分は、効力を有しない。

第七〇条(憲法の改正) この憲法の改正は、各議院の総員の過半数の賛成により発議され、国民投票において、有効投票の六割の賛成によって成立する。
2  前項の成立の後、天皇は、直ちにこれを公布する。


   
                                        以上
コメント(4)
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2013/06/15 13:32

Commented by miyazatotatsush さん
 遅ればせのコメントで失礼いたします。
 実を言えば、私も現憲法の大上段からの改正に、最近、消極的になっております。
というのも、もう十数年来、世論調査では改憲派が多数を占めている筈だったのに、今回、その入り口に過ぎない改正事項緩和の96条の改正ですら、「橋本発言」などという、改憲問題とまったく関係ない、いわゆる「従軍慰安婦」問題絡みで、世論はナーバスとなり、改憲支持が少数となるのが現状だからです。このような状況を見ると、いったいいつになったら、現憲法の全面改正ができるのやらと、百年河清を待つ思いがします。
 それならば、もっと簡単な方法での「改憲」を考えたほうがよいのではと思えてきます。
 たとえば、国会議決などで、現憲法は日本国が主権を喪失している占領下に制定されたものであることを確認し、しかし、その条項の多くは国民の権利として、判例を通して定着している。とはいえ、十七条憲法以来の日本国の憲法典の伝統にそぐわない日本国憲法前文には積極的意味を見いださない。また、非常事態に国家主権を縛る条項は有効性を持たないと宣言し、代わりに十七条憲法以来、明治天皇の憲法発布の詔勅などなどを日本国憲法典の理念として掲げ、非常事態に備える戒厳法令を制定し、自衛隊法に代わる国防軍法などを制定する方式が良いのではと、素人考えですが最近は思います。
 このことと関連し、チャンネル桜の討論会で、佐瀬昌盛さんが強調していた「国民の憲法」という発想に、私はあまり積極的意味を感じません。佐瀬さんの識見には、いろいろ教わり、とても尊敬しているのですが、この場合、「国民」とはどうしても、現に存在する「民意」の多数派という俗論に結託すると思うからです。歴史の古い国は、一時的な「民意」では動かされない根本の精神があると考えます。
 とはいえ、今の憲法下では国家の体をなさないのは事実なので、これを変えてゆく工夫は必要だと思いますし、さまざまな憲法論議から今の日本の問題点を浮き彫りにしていくことは意義あることだと感じております。そういう視点から、この自分の感想は、我ながら少し消極的過ぎるかとも思い、コメントをためらい遅くなりました。
拙い感想にご容赦を願いあげます。


2013/06/15 16:01
【返信する】

Commented by kohamaitsuo さん
miyazatotatsushさんへ
詳しいコメント、ありがとうございます。
ごもっとも、と思います。一気に改正なんて、できるわけがないし、かといって、少しずつ徐々に、というのもまさに「百年河清を俟つ」ですね。
貴兄の言われる「国会議決」もなかなか難しいのでは?
いちばんプラクティカルに考えて、9条2項を削除するくらいなら可能なのではないか、と愚考します。それにしても96条の改正が必要になりますよね。だから、憲法より先に解釈の可能な限りで自衛隊法の改正に踏み込む方がいいのかもしれません。
佐瀬さんの発想に関する貴兄のご指摘、とても貴重に思います。そして、「一時的な『民意』では動かされない根本の精神」があるからこそ、逆にその精神の思想的な表現を「自主憲法」というかたちで示していく必要があると考えます。


2013/08/08 13:51

Commented by hasimoto214take さん
不躾な書き方で申し訳ないが,
この案では内閣総理大臣は国務大臣に含まれましょうか.

現憲法では総理大臣も国務大臣であるという解釈が
一般的であるという. しかし, それなら自分で自分を
任命するとも読めるのであって極めて曖昧だ.
この解釈の下, 脱税犯の首相が, 自分で自分の追訴を
認めなければ逮捕されないという, まことにルーピーな
状況にあった記憶がある.


2013/08/10 17:04
【返信する】

Commented by kohamaitsuo さん
hasimoto214takeさん
貴重なコメント、ありがとうございます。
確かに現行憲法66条では、「内閣総理大臣及びその他の国務大臣」とあり、総理大臣が国務大臣でもあるような、そうでもないような両様の解釈が成り立つ余地がありますね。私もそこまで気づかず、そのまま踏襲して自分の案を書きました。そこで私案の五〇条からあいまいさを除くために、「その他の」を削除することにいたします。




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2 コメント

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岡部凛太郎さんへ (小浜逸郎)
2015-04-23 13:33:47
おっしゃる通りですね。

私もまだにわか勉強の段階なので、これからいろいろと勉強して、さらにきちんとしたものに仕上げていきたいと思っています。それにしても、帝国憲法の草案を起草した井上毅は立派だったと思います。彼がいなかったら、皇室典範も教育勅語もできていなかったのですから。
返信する
先日はありがとうございました。 (岡部凜太郎)
2015-04-23 00:15:16
先日はコメントありがとうございました。
高校一年の岡部凜太郎です。
小浜先生の憲法案読ませてもらいました。私も今、憲法案を作成中ですので参考にさせていただきます。
私としては小浜先生の憲法案が簡文憲法であることが大変興味深かったです。
イギリスの不文憲法とまで言わなくても憲法はあくまで最低限の条文さえあれば良いと私は考えています。百条を優に越える繁文憲法案には強い違和感を覚えます。
それと自民党や産経新聞などの方々には大日本帝国憲法を前提とした改正案である佐々木惣一氏の憲法試案や松本委員会案などと言ったものも憲法案の参考にしていただきたいと思います。
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