西日本を襲った豪雨は広域にわたって大被害を及ぼしました。
不幸にして亡くられた方たちに心よりお悔やみを申し上げるとともに、被災者の方たちが一刻も早く立ち直ってくださることをお祈りいたします。
今回の災害では、これまでにも増して、インフラの未整備や経年劣化したインフラのメンテナンスを怠ってきた行政の怠慢が露呈しました。
長年の間、緊縮財政に固執してきた財務省による人災の面が色濃く出たと思います。
ところで、田中角栄と聞くと、みなさんはどんなイメージを思い浮かべますか。
ロッキード事件、田中金脈、日本列島改造論、今太閤、目白の闇将軍などいろいろありますが、概してあまりいいイメージを抱かれていないと思います。
しかしあまり知られていないようですが、総理大臣以前、1950年代から70年代初めにかけての衆議院議員や閣僚時代、角栄の政治家としての活躍には目覚ましいものがありました。
衆議院議員としては、何と100本を超える議員立法を成立させています。
その主なものは、
・建築士法
・公営住宅法(これは日本住宅公団設立のための基本法です)
・道路法全面改正
・道路・港湾・空港の整備のための特別会計法
・二級国道制定による国費投入の範囲の拡大
・道路審議会の設置による民意の反映
・道路整備費の財源等に関する臨時措置法(これは道路特定財源の獲得を意味します)
また閣僚時代には、社会基盤整備にかかわる通産省、建設省、運輸省、郵政省などに強い影響力を及ぼし、政治主導による官僚統制の原型を作り出したのです。
大蔵大臣時代に豪雪被害に初めて災害救助法を適用させたこともその大きな功績です。
その後、この官僚統制の型はすっかり崩れ、財務省が実権を握ってしまいました。
こうしてみると高度成長の実現を、インフラ整備の面で制度的に支えた角栄の、政治家としての実力がいかに大きかったかがわかろうというものです。
もちろん、こうした大きな力を振るうには、巨大な金脈を作り出し、それを存分に用い、あらゆるコネを利用し、法的には、ずいぶん危ない橋も渡ったことでしょう。
そのことをいいとは言いませんが、そうしなかったら日本の成長と繁栄がなかったことも事実です。
また彼の活躍した時代には、官僚に勝手な真似をさせず、国民の豊かさの実現のために彼らを思い通りに使うことができたのです。
政治家と官僚とはシーソーのようなもの。
本当に国民のためを思う力ある政治家がその気になって官僚を統制すれば、官僚は言うことを聞くのです。
ちなみに安藤裕議員率いる「日本の未来を考える勉強会」が、このたび安倍首相に素晴らしい提言をしましたが、安倍首相がこれをまともに受け取って、財務官僚を抑えることを切に望みます。
この提言が提出された記事は、何と官邸のHPに掲載されているのです。
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201807/06moushiire.html
また、提言の詳しい内容は、三橋貴明氏の次の記事で把握することができます。
https://38news.jp/politics/12153
さて一方には、田中金脈問題を執拗に追い、「巨悪」なるものを暴くことに信じられないほど情熱を注いだライターがいました。
ご存知、あの「知の巨人」とうたわれた立花隆氏です。
彼は、この問題について書いた記事を、『田中角栄研究』(講談社)という上下二巻のものすごく分厚い本にまとめました。
ところがこの本は驚いたことに、角栄の政治的手腕をどう評価するのかについてはただの1ページも記されていません。
この本は、戦後の政治権力者の「道徳的な悪」を暴くジャーナリズムの嚆矢と言ってもよいもので、民衆のルサンチマンを煽る悪い風潮を作り出しました。
今でもこの風潮が根強く残っていることは、近年流行の政治家・官僚の引きずりおろしごっこを見ても歴然としています。
政治家や官僚はもちろん公人として高い道徳性を要求されますが、そのことだけで政治家を評価してすませ、国民のためにどんな政治的手腕や才覚や視野の広さを行動によって示したか、という肝心の点に目がいかなくなってしまうのは困ったことです。
「清廉潔白」は政治の理想かもしれませんが、現実の政治とそれを取り巻く世界とは、猥雑さに満ちています。
複雑な社会でものごとを通そうと思ったら、理想通りにはいかないことは、大人なら誰でも知っているはず。
民衆のルサンチマンを満たすために、道徳の名を借りて政治の本質から目をそらすことは、たいへん下品でけち臭いことです。
中国の文化大革命なども、権力闘争のために、「造反有理」などという単純なスローガンの下、民衆のルサンチマンを利用して、多くの政治家や知識人をつるし上げにしたことで有名です。
今回の大災害で、どんな理屈を垂れようが、緊縮などと言っている場合ではなく、インフラ整備、インフラ・メンテのために早急に予算を増額すべきことがはっきりしました。
転ばぬ先の杖(もう転んでいるのですが)が何より大事であることを角栄は「土建屋」の直感で知っていたのです。
いまこそ角栄の政治家魂を復権させましょう。
戦後日本の経済成長とインフラ整備については、全体的に見ると途中まではいい感じに進んでいったはずなのに、なぜ今こうして失速しているのか…。
高度経済成長というのはしょせんは仇花だったのか。日本人にとって本当にふさわしい経済成長のあり方とはなんなのか…と考えずにはおれません。
Amazonでは、先生の新刊の予約も始まったようですね。
楽しみにしています。
おっしゃる通り、角栄は得意分野での行動の人、フィクサーといった面で真の力を発揮する人で、総理にはあまり向いていませんでしたね。
いまインフラを含め、なぜ日本がこんなに失速してしまったのか、いろいろ考えられるものの、財政に対する財務省の誤った考え方が最も重要な原因をなしていると思います。
ご参考までに、三橋貴明氏の『財務省が日本を滅ぼす』を手に取っていただければ幸いです。
拙著につき、ご期待をお寄せいただき、誠にありがとうございます。
自分がアホな(今も否定はしませんけど)若輩時代でわけがわからなかったとも思いますが、彼のテレビで話されていた内容ってこれっぽっちも頭に入ってきたモノが無い気がしてなりません。
頭に浮かんできたのは道路民営化(営利主義)に血眼だった猪瀬氏です。思いました。彼等のようなエスタブリッシュ人達(多すぎるので達にしました)を麻原等のように法で裁けるようになればと。
失礼しました。
戦後、日本の総理大臣を含む政治家にコリアン、チャイニーズがいます。
日本は侵略されています。
調べたらわかりますが、実質的に、
今の日本は民主主義の国ではありません。