小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

安倍政権20の愚策(その3)

2018年07月04日 00時38分45秒 | 政治



(17)外国人土地取得にかかわる無規制
中国が日本の土地を爆買いしています。
すでに北海道や沖縄を中心に、全国土の2%が中国人の所有になっています。
https://www.recordchina.co.jp/b190071-s0-c20-d0035.html
2%というと静岡県全県にほぼ匹敵します。
http://www.sankei.com/world/news/170225/wor1702250023-n1.html
http://blog.goo.ne.jp/sakurasakuya7/e/884073e66a98c0319f25170316a099a9
古くは2005年、国交省主催の講演会で、中国人男性が「北海道1000万人計画」というのをぶち上げました。
以下の動画で、産経新聞の宮本雅史氏がその模様を語っています。
https://www.youtube.com/watch?v=P7urvLd18u0
やがては北海道全域を中国の支配下に収めようという魂胆が丸見えです。
このような事態を招いたのは、外国人が土地を取得することに対して法的な規制がないことが原因です。



しかも国交省は、わざわざ外国人不動産取引の手続きを円滑化するための実務マニュアルを作成。
「どんどん買ってください」と言わんばかりの姿勢を示しています。
日本は外国人土地法の第1条で、「その外国人・外国法人が属する国が制限している内容と同様の制限を政令によってかけることができる」
としていますが、政令が制定されたことはありません。
対して中国では外国人の不動産所有は基本的に不可。
なおこの件は以前にも扱いましたので、詳しいことは、以下で。
https://38news.jp/economy/10151

また、国防の要地であるはずの対馬が韓国人に不動産を爆買いされ、民宿、ホテル、釣り宿など、思いのままに建設、経営されています。
韓国のツアー客が大挙して対馬に来るとツアーガイドが開口一番、「対馬はもともと韓国の領土です」と説明するそうです。
対馬市当局は、どれくらいの土地が韓国人の手にわたっているか、把握していません。
こういう危機的状態は、政府がいち早く手を打たない限り、今後ますます加速するでしょう。

(18)中国人の医療タダ乗り

これは最近問題になっていますね。
https://diamond.jp/articles/-/129137
中国のがん患者数は半端ないですが、そのうち一部の人が日本で最先端治療を受けるために来日します。
医療で来日する場合は医療滞在ビザが必要で、これだと費用は1000万円以上かかります。
しかし経営・管理ビザで入国して三か月以上滞在すると、国民健康保険の加入が義務付けられます。
すると前年に日本で営業していなければ(実際しているわけがないのですが)、月4000円の保険料を支払って、三割負担で医療費が安くなるという仕組み。
渡航費、滞在費も含めて300万円程度の負担で済みます。
患者は日本で会社を経営するわけではなく、斡旋業者が資本金の500万円を見せ金として示し、ビザが発給されると次の患者に回す。
これを繰り返して、何人も患者が来日します。
また中国残留孤児が家族を呼び寄せて、生活保護世帯の処遇を受ければ、ゼロ円で医療が受けられます。
もちろんこれらの差額分は、日本国民の税金によって賄われます。

筆者は、こうした巧妙なからくりを利用する外国人たちを特に非難しようとは思いません。
なぜなら、制度の抜け穴がある限り、合法的ならだれでもそれを利用しようというのが人情で、それが生活者というものです。
問題なのは、こうした制度の抜け穴をいち早く塞ごうとしない日本の管轄官庁のだらしなさ、鈍さにあります。

(19)観光立国、カジノ法案
インバウンド、インバウンドと、政府は日本を観光立国にしようと騒いでいます。
しかし内需拡大を目標に自国の生産力の拡大を諮ろうとせず、ガイジンさんに頼るようになった国は必ず衰えます。
ところで訪日外国人の内訳ですが、韓国、中国、台湾、香港の4地域で、全体の73%を占めます。
欧米加豪の合計はわずか14%。
しかも2014年当時、前者は67%、後者は18%でした。
http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_tourists.pdf
つまり増えているのは、お隣からの訪問者であって、欧米人の割合は減っているのです(絶対数は微増)。
韓国や中国がいまの日本にとって、不安定な関係にあるということを忘れないほうがいいと思います。
しかも訪日外国人の4割は、観光客ではなくビジネスマンです。
これらの人は日本でちゃっかり稼ぐ意図で来日します。
訪日外国人の増加を素直に喜べません。
もう一つ素直に喜べない理由。
じゃんじゃん高級ホテルの建設でも進むなら話は別ですが、実際には、サービスの悪い民泊の増加による料金低下競争が起きています。
老舗旅館などが閉鎖されつつあります。
デフレ不況期にこういうことが起きると、移民による賃金低下競争と同じで、日本の経済全体に悪影響を及ぼすのです。

さらに、次の点が決定的に重要です。
最新の統計では旅行収支1.3兆円の黒字と出ていますが、これってGDPのわずか0.26%です。
この程度の黒字幅をもって、日本経済に好転の兆しがあるかのような幻想をマスコミが振りまいています。
この種の幻想は、政府がやるべきことをやらない口実として利用され、不作為の事実を隠蔽する効果を生むだけです。

カジノ法案(IR実施法案)が衆議院で可決されました。
これも「観光立国」というまやかしの政策の一部です。
パチンコや競馬・競輪などでギャンブル依存症が多いことは知られていますから、カジノが出来たからといって、急に依存症が増えるとは思いませんが、政府がやるべきことをやらず、デフレ脱却を先延ばしするなら、カジノがあろうとなかろうと、貧困層が増え依存症も増えるでしょう。
さらに、カジノ収入のすべてが国庫に収まるのではなく、7割は賭博事業会社の懐に入るという事実に注目すべきです。
さぞかしラスベガスなどで鳴らした名うての外資に狙われることでしょう。
ここにも米国の大きな圧力を感じますし、農業や電力や水道の自由化と同じように、グローバリズムを無反省に受け入れる日本政府の亡国路線が見えます。
日本は「観光立国」などという浮かれ騒ぎにうつつを抜かすのではなく、一刻も早くデフレ脱却のために、内需拡大を目指すべきなのです。
社会資本が充実し経済活動が繁栄すればその国は魅力を増すので、観光客などはおのずと増えます。

下図は2016年の外国人訪問者数の国際順位。



(20)歴史認識問題の放置
2015年12月に交わされた日韓合意によって、安倍政権は慰安婦問題について、謝罪と責任表明、10億円の資金提供を約束し、事実上、村山談話、河野談話をそのまま引き継ぐ形になってしまいました。
ここにはアメリカの意向が働いていました。
その意向とは、

①東アジアの同盟国間でいざこざを起こさないでほしい。
②敗戦国・日本の「悪」を固定化しておきたい。
③日本の自主独立を阻み、いつまでも属国として服従させておきたい。

朝日新聞がはなはだ不十分ながらせっかく吉田清治の本のウソを認めたのに、安倍政権の所行はそれを裏切るものでした。
その後、事態は予想通りに進みました。
今では中韓のみならず欧米諸国においても、旧日本軍が20万人の若い朝鮮女性を性奴隷として強制連行しひどい目に遭わせたという理解が定着しています。
外務省は、杉山審議官が国連女性差別撤廃委員会で、強制連行の事実を否定した以外には、国際社会の歪曲に対して、何らの積極的行動も起こしていません。
杉山審議官の声明もかき消されています。
しかも朝日新聞はその英語版で、自ら認めたはずの誤りを平然とくつがえし、国際社会の日本たたきの風潮に便乗して、「性奴隷」説を触れ回っているのです。
外務省は、もちろんこれに対しても何もしていません。

一方、2015年10月、ユネスコは、中国が申請してきた「南京大虐殺文書」を記憶遺産として認めました。
この30万人虐殺説は、何の証拠も目撃証言もなく、写真資料も偽造や他からの借用であることが今でははっきりしています。
しかし世界に散らばる中国系の人々は各地で盛んにこの説を定着させつつあります。
その旺盛な活動歴は山ほどあります。
たとえば最近も、カナダで中国系団体が「南京大虐殺犠牲者記念碑」の建立を目指し、中国系国会議員がカナダ政府に12月13日を「南京大虐殺記念日」と制定するよう求める署名を行っていますが、日本政府はこれを「遺憾だ」と述べるのみで、何ら阻止すべき行動に出ていません。
アメリカの意向への過度な気遣い、日中関係への配慮、これらの事なかれ主義が正当な外交交渉の道を阻んでいるのです。
日本は軍事的には米国と同盟関係にあるものの、情報戦において完全に戦勝国包囲網に取り囲まれてしまっているのです。
いまだ敗戦は続いています。


以上、三回にわたって安倍政権の愚策を並べてきました。
本当にひどいものですね。
だからといって今すぐこの政権を倒せばよいというものではありません。
倒した後、たとえ自民党の誰かが引き継ぐとしても、これらの愚策を払拭できる実力と英知を具えた有力政治家が今の自民党にはいません。
それどころか、財務省の緊縮路線や外務省の親中路線にハマっている人たちばかりです。
またありえないことですが、仮に野党が倒閣を実現させたとしても、彼らはただ反権力を自己目的にしているだけなので、何の建設的な政権構想も持っていません。
事態は絶望的に思えます。
しかし絶望してはなりません。
絶望しないための手は三つあります。

①安倍政権のグローバリズム政策を根底から批判できる健全野党を育てるために、言論その他によって世論形成を試みること。
②自民党内の若手議員をはじめとした積極財政派を応援しその勢力の伸長を図ること。
③政権を一枚岩と見て安倍首相個人への感情的批判や憎悪に終始するのではなく(それはほとんど意味のないことです)、政権内部の複雑な権力駆け引き、特に財務省と官邸の対立や、内閣府に属する諮問機関の中で実力を持つ「民間議員」の悪影響の大きさ、などを正確に見積もること。

①と②は今のところかなり迂遠ですが、③をさらに現実的に活かす方法は、いろいろ考えられると思います。
参考までに以下の拙稿を。
https://38news.jp/politics/11893
https://38news.jp/politics/11942


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出席しました。(8月15日発売予定)





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2 コメント

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Unknown (紳士ハム太郎)
2018-07-28 17:36:00
日本は不正選挙が行われており、また公正妥当な報道も行われておりません。民主主義の前提がそもそも存在しないのです。
また、正当性のない権力の主体と通謀し、一見、中立・批判的な立場を装いながら実態としては単なる工作機関である組織・個人も多く存在します。
そういう人は正当性のない権力の主体側にいるので部分的には的確な指摘をしますが、本質的には、人を崖から突き落とすような倫理に反した重大な人権侵害行為を行います。
彼らは後ろ指をさされ笑われる、ただの劣等人種なのです。
返信する
【安倍びょん物語】 (肱雲)
2018-11-20 15:58:03
ただよそよそしいしゃべりの舌足らで気弱な、一国のリーダーとしての風格など一欠片も感じない安倍晋三。典型的世襲政治家に過ぎぬ優男が、その実像とは掛け離れた評価を真に受けその気になり、高飛車な言動や政策を実行し、将来の日本に禍根を残そうとしている。こんな馬鹿らしい宰相を担ぎ上げ、長期政権を意図的に形成させている奇妙な社会現象こそ、問い質すべき対象である。ここで、我々の命運を左右する程の危機的状況を作り上げた安倍晋三について、その生い立ちから始まり彼の浅薄な歴史認識や政治観を再確認し、そういう人物に国の将来を託す事が、如何に過ちであり愚かであるかを明確にしなければならない。彼は戦後政治で危惧されてきた、極右勢力の神輿に担がれ、憲法改正へ猪突猛進している。なまじ知性があって哲学や歴史観をもつ人物は、猪突猛進型の政治的突破の障害となる。殆どの独裁的政治指導者は、浅薄な歴史社会観を持つ人物が常なのである。そういう無能な人物を祭り上げ、背後から自在に操る。安倍晋三の右旋回思考とその背後にある極右勢力との利害が一致し相乗作用が働いている。この神輿に乗る安倍晋三はどんな環境でどう育ち、将来の日本に大きな禍根を残す政治家となったのか。
安倍晋三の態度と発言は、常に、よそよそしく、何事を語っても、気持ちが感じられない。彼の言動の背景には、そうさせるに至った幼少期における家庭環境があったのではないか。安倍家の内情に詳しく、安倍の乳母だった久保ウメは、晋三の幼年期から思春期にかけて家庭状況や精神的発育の状況を詳しく語っている。 晋三は親の愛情を注がれて育っていない。父晋太郎は子供に愛情を注ぐ時間を削って政治活動に没頭し、母は支援者回りに勤しんでいた。二人の兄弟の面倒は、乳母の久保ウメが見ていた。添い寝をしたのは母ではなく乳母だった。だから、安倍家の親と子供の関係はきわめて冷めたものだった事は容易に想像される。晋三が生まれた頃には晋太郎の政治活動が繁忙を極め、父母の愛情を受ける機会がなかった。幼児期における親の愛情不足は子供の情緒を不安定にし、人を思いやる感性を育まない。父母より晋三に目を向けたのは、母方の祖父岸信介であった。晋三が父晋太郎ではなく、祖父の岸を意識する背景がここにある。その祖父も、三男が生まれて岸家の養子としてから、晋三への態度がそれまでとは一変する。祖父に気に入られる弟と冷静で父の後継と目される兄との狭間で、晋三の精神的コンプレックスが植え付けられた事だろう。しかし、父晋太郎は、兄や弟にはない晋三の頑なに持論を守る姿勢に、政治家の資質を見出し、最終的には晋三の方が政治家向きだと考えるに至ったという。だが、頑なに持論にしがみつくのは、愚鈍なだけではないか。
安倍政権誕生後、日本社会は懐古主義へと大きく舵を切った。安倍氏が祖父等の果たせなかった改憲を最大目標とし、自らの手で実現しようといきり立つ焦りがここ数年における政権暴走に拍車を掛け、それにブレーキが効かなくなって来た。安倍政権下の異常事態に対する国民のアレルギー反応が都議選結果に示された。安倍に必要なのは、「李下に冠を正さず」より、「過ちては改むるに憚ること勿れ」であろう。森友・加計問題における彼の行状は、一国の首相とその知人絡みの国政私物化という点で、辞任に追い込まれた韓国前大統領と酷似する。少子化で学生数確保が困難となる中、経営不振に喘ぐ教育ビジネスの急先鋒加計孝太郎が、利益誘導を目論み首相を狡猾に利用した。奇しくも「県議と加計の事務局長がお友達で話が進んだ」と、前愛媛県知事が謀議的計画であったことを自ら暴露した。地方の生き残りと中央の思惑を見事に結び付けたプロジェクトを、教育ビジネスを追求する加計学園が巧みに操る。財政難を抱え地域興しを願う地元選出の議員がお友達関係を利用し、中央官僚の政権に対する忖度を引き出すことに成功した。また、財政再建を図らんと策謀された経済戦略が、結果的にそれを隠れ蓑にした特定業界だけを潤わせ、血税簒奪の為の特区制度に成り下がっている現実が垣間見れた。渦中の地元民が事の真相を全く知らされず、蚊帳の外に置き去りにされている事に、唖然とさせられる。アベノミクスだと言われても、生活向上が実感されなかったり、安保法制や共謀罪など、安倍政権下でゴリ押しされた数々の出来事も、今にして思えば安倍氏の公僕精神から程遠い、私利私欲の賜物であったからではないか。また、日本会議メンバーの一人加戸守行が使った「おもちゃにされた」発言は、何の説明もされず百億円相当の血税を加計学園に使途された今治市民及び愛媛県民に該当するのではないか。先細りの地域を応援したいところだが、問題が有耶無耶にされる事は看過できない。
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