お地蔵様
秋の終わり頃此の前の池を空にして、北の町総出で毎年雑魚とりやったもんだ。皆んな描き回す泥の底に永いこと、お地蔵はんがあったん気付く人居なかったんや。昭和30年頃のお話やった。泥の中を足で、こんなところに石があると思い、よく見ると、びっくり仰天お地蔵はんやった。息子の寅やんに相談、さっそく大工の高田はんに頼んで館が作られた。お地蔵はんは水でよく泥を落とし、赤いよだれかけをして、花や線香で五日目にはワテ心をこめて祭ったえ。その晩やったかなぁ、ワテの枕元にあのお地蔵はんが出て太い声で「オシゲハン明ルイエエ処エアゲテクレタナァ、コンナ嬉シイコトナイデエオオキニ、コノオ礼ニ病気セント長生キスルヨウニキット守ラセテモラウデェ」と云わはった。目を開けたら夢やった。けどけど声だけ今でもはっきり耳に残っている。ワテ嬉しなって、それから毎日お詣りしてるねん。3年程前の夕方やった「オーイ」と声がした。びくりして四方見たけど誰もおらん。思い出したら忘れもせんわあの太い声やった。よう見たら三百円お供えしてあった役員さんに納めといた。気にしてやはったんやろうなぁ今までそんな事二回ほどあったわ。ワテ今日まで長生きさしてもろてよう考えてみたらほんまに結構なご利益もろててんな。お地蔵はん、おおきに。皆んなにもよろしいお願いします。
昭和五十八年五月吉日
上羽 シゲ 九十四歳
平成二年一月七日 永眠 享年百一歳
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今日の俳句
風鈴に 大きな月の かゝりける /虚子
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