カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

懐かしくてもアルデンテがいい

2016-04-06 | 

 別に気取って言ってるわけではないが、スパゲティはやはりアルデンテが美味しいと思う。でもそんなことを知ったのは少年から青年に代わるくらいの頃のことだったんじゃなかろうか。
 子供の頃には母も作ってくれてはいたが、デパートとか町の食堂のような洋食店のようなところで、スパゲティを食べた。いわゆるナポリタンとかミートソースで、そうして今思うとアルデンテじゃなかった。当然と言えば当然で、そんなことをやってくれる店というのは、僕が子供の頃ではあるはずが無かった。まだ喫茶店に入るような年頃ではなかったが、喫茶店でも無かったのではないか。知らないけど。
 しかしながら誰かのエッセイか何かだったと思うが、アルデンテというのは中学生か高校生の頃には言葉としては知っていたのではなかろうか。既に喫茶店にも時々顔を出すようなことをするようになって、行動範囲も広くなって、そうして実は忘れてしまったが、アルデンテらしき硬いスパゲティ(おそらくペペロンチーノ)を食べた。その時はピンと来なくて、しかし店のマスターだったか、そういう茹で方をしたという説明をしてくれたように思う。説明を聞いてから後になって、おお、なかなか旨いな、と遅まきながら思った。説明が無ければ、ただの固めのスパゲティと思ったかもしれない。
 一度食べてみると、恐らく流行り出したということだろうか。ぼつぼつ固いスパゲティを出してくれるような店というのが出現するようになった。十代の終わりごろになると、驚くようにスパゲティが旨い店というのが、本当にボツボツ出現した。僕は学校に黙ってアルバイトをしていて、同級生の連中より少しばかり小遣いが多かった。そうしてバイクで一人でぶらぶらして、硬いスパゲティを出すような店に入ったりしていた(ほとんどはラーメン屋の類が多かったのだけど、時折そういう店に入ってみたかったようだ)。数は多くは無いが、段々と硬いスパゲティが増えていく実感があった。そういうものを求める自分が、大人のような気分もあったかもしれない。
 昔ながらの太くて伸びたようなスパゲティが旨いという話は、特に最近はよく聞くようになった。長崎にはトルコライスという素晴らしい食いしん坊のための食事があるが、これのナポリタンはたいてい柔らかかった。それが不味いという訳ではないのだけれど、確かに好んでよく食べていたけれど、それでも僕はアルデンテがいいな、と内心思っている。懐かしいのと美味しいのは厳密には違う問題である。
 別に洒落ているような店でなくていいから、タイミングよく茹であがったスパゲティを食べたい。上手な人が茹でたアルデンテは、時々本当に感動するくらい美味しい。昔でなくて良かったな、と思う食べ物の一つである。
コメント
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