カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

何とも嫌な気分に陥りながら娯楽作   ゲット・アウト

2019-12-23 | 映画

ゲット・アウト/ジョーダン・ピール監督

 白人女性と付き合っている黒人写真家が、彼女の家に遊びに行くことになる。彼女の実家は静かな湖畔脇の豪邸で、典型的に裕福な白人家庭であった(両親とも医者)。さらに黒人の使用人が二人もいる。終始不穏な空気が流れており、歓迎を受けながら何とも言えない違和感を覚えるのだった。実際にとてもありえないことが次々に起こり、精神的に耐えられない気分に陥っていくのだった。
 白人社会の中に放り出される一黒人という立場を、これほど明確に描き出した作品は割合に少ないのではないか。迫害差別されていた時代の黒人を描いたものは、それは数多く作られているわけだが、現代社会の中での黒人に対する白人が持っているだろう暗黙の差別意識や、逆に黒人が抱き続けなければならない不安というものを見事に描き出している。確かに娯楽作品としてのホラーなので、そういうあたりのご都合主義はあるのだけれど、低予算でまったく無名の俳優を使いながら、見事な演出とアイディアの詰まった驚きの傑作といえるだろう。何とも言えない嫌な気分を随所に混ぜ込みながら、そうして実際に絶望的な立場に追い込まれていく主人公の体験を、一緒になって味わう恐怖が堪能できる。何度も裏切られながら、過去の伏線が見事に張ってある展開で打破していくストーリー運びは、見事というしかない。ここにきてこういう方法があったのか! というカタルシスは、このような映画を見る醍醐味といえるだろう。後味が悪くないわけではないが、気分までは悪くならない。考えさせられるところがありながら、面白くなんだかスカッとすることになるだろう。大ヒットの上に評判の高かったというのも、十分にうなづけるものだった。評判は聞いていたにも関わらす、何故だか見逃していた。もっと早く観るべき作品であった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする