卵の値段が上がっている。日本で卵と言えばほぼ鶏卵のことだが、卵の値段は物価の優等生と言われづけてきた。理由は60年間くらいほとんど値段が変わらなかったからだ。インフレがあって他のものの値段は相対的に上がり続けているので、むしろ卵一個にかかる様々な経費が、何らかの作用で抑えられ続けているということである。それは生産現場における合理化がすすめられ続けてきた結果だし、おそらくそれほど合理的に大規模化したところでないと、日本での卵の生産は事実上できないということでもありそうである。実情は知らないが、何万羽と飼育している生産工場化している鶏卵場が、日本の食を支え続けてきた歴史があるのだろう。
ところがここにきて、卵の値段が上がったままなかなか下がらない現状がある。原因とされるのは単純化して主に二つ。一つは鳥インフルエンザによる鶏卵場の殺処分がふえたからである。日本の鶏卵の約1割の鶏が殺処分されてしまったという。その分卵は希少になるので値段も上がって当然である。さらにこれが原因で廃業する業者も少なからずいるのだという。それではこれから飼育し直すにも時間と労力がかかる訳で、価格が戻る(下がる)には容易でないということは明らかだ。
もう一つは、鶏が食べる飼料の高騰がある。鶏が食べている穀物のほとんどが輸入に頼っている。日本で飼料を作るには、コストの面で問題があり太刀打ちできない。しかしその為に国産は壊滅的で、すでに飼料を作る農家はほとんどないのが現状だ。そういう中で国際価格が上がると、選択肢が無いのでそのまま高騰した飼料を使う以外にない訳だ。価格を上げない限り生産が不可能になっているということだろう。価格高騰の原因の一つに、ウクライナ問題がある。ウクライナの穀物はおもにヨーロッパ向けだと思われるが、それにこれまで頼っていた国々が、日本の必要とする穀物にも選択を広げているために、国際価格が上がっているのだろうと思われる。日本が第一の顧客で無くなれば、今後は売ってもくれなくなるかもしれない。
以上のような原因を打開するには、大規模化の生産を見直す必要がある。大規模化した養鶏場に一羽でも鳥インフルエンザが見つかると、すべて殺処分されることの見直しが必要かもしれない。さらに鳥インフルエンザが蔓延する原因も究明が必要だが、一つの仮説として、鳥インフルエンザが弱毒化して、これまで飛来する渡り鳥が感染していてもほとんど途中で死んでしまっていたので確率的に蔓延に至らなかった可能性もあるらしく、むしろ弱毒化したインフルエンザだから、多くの鳥が感染したまま日本に至っているともいわれている。そうであるならば、考え方を変える必要もありそうである。
また、国内生産に対しても何らかの取り組みが必要とも思われる。後押しするのは助成金かもしれないが、安定供給のために助成金を出しているのは、おそらく海外も同じである。安易に輸入にだけ頼る政策では、このような危機に対応はできないということだろう。
いずれにしても、今の状況を鑑みると、もう卵の値段は下がりそうにないことが分かる。ある程度は揺れ動くことはあろうと思うが、一定の水準で高いままになるだろう。むしろ卵を買い支えることで、安定供給を守ることにもなるかもしれない。消費者が卵から離れることは、今後のさらなる高騰を招く引き金になるかもしれない。