くまぐー日記

くまさんの電脳室リポート

テロの経験

2008年04月14日 | Weblog
■TVの料理番組にゲストで登場した日野原重明聖路加国際病院理事長が「よど号ハイジャック事件」経験を語った。サリン事件での救急処置で代表される彼の危機管理センスの秘密を見せられた気がした。なるほどと思った。

ハイジャックされた機が秘密裏に韓国政府のコントロール下でピョンヤンと称して韓国の金浦空港に着陸した際、テロリストの1人が偽装に気づいた。シェル石油の給油設備を見つけたからだ。一挙に状況悪化。政務次官が人質にかわってピョンヤンへ行くことになる。

乗客は全員が紐で繋がれ身動きできない状況で一触即発のぎりぎりの緊張が続く。そのなかで日野原はハイジャック犯人のくせにハイジャックのスペルも書けないことを揶揄するようなジョークで全員を笑わせたようだ。開放時にはハイジャック犯の肩をたたいて「しっかりやれよ」みたいな雰囲気だったそうだ。

彼のことだからストックホルムシンドロームのことを知っていても不思議ではないが、むしろ医者と患者との関係を犯人と人質の関係に置き換えてお互いの破滅を回避する途を直感的に探り当てることができる能力を身につけている人かもしれないと思った。ストックホルムシンドロームとはストックホルムで起きたある人質事件で、最後は人質が犯人をかばって逃走させたというもの。

パトリシア・ハーストのように人質がいつか犯人と恋に落ちて別の人質事件の犯人になるような例さえある。外部からの犯人制圧に失敗した場合、人質が生き延びることができる途は他にほとんどないのだ。

日野原は事件後、自分の人生はもらった人生だから他人を助けるためにささげると言った。それは事件の経験がもたらした彼の自信の表明なのだと気づいた。良き医師とは患者の気持ちがわかる医師だと言っている。それは患者に共感できるだけではなく患者をどう導くことができるかを知っているという意味だ。

サリン事件の処理ではその死者の少なさに米軍事関係者を驚愕させた。救急医療はまさに危機管理の処理そのものともいえる。そんな状況で本能的に瞬時に見事に着地点を見つけることのできる人がいるのだ。

96歳、ステーキが大好きだそうだ。
コメント (2)
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