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近代日本の覇者たちが「旦那」に戻る場としての「植冶の庭」
確かに本書のタイトルは「小川治兵衛とその時代」、ではあるのだけれども。
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小川治兵衛の庭と琵琶湖疏水は切っても切れない縁があるので、
本書が田辺朔郎と疎水の話からスタートするのには、それなりの必然性はあるのだろう。
ところがいざ話が植冶や庭に近づいても、そこで語られるのは「その時代」のことばかり、といった印象なのである。
鈴木博之さんは、あるいは近代における近世を語るために、植冶をダシにしているのだろうか、
・・・とまで思えて来てしまったのだが。
鈴木先生、あとがきで「とにかく植冶の庭が好き」という偏愛を吐露されているのである。
そうか、、、そうだったのか。。。(困惑)
う~ん、となると、これは論理で美学を語って来た鈴木先生が、
自然主義的=非論理的な植冶の庭が好き、という自分の感性と折り合いをつけるための書なのだろうか。
正直、鈴木先生のご本の熱心な読者とは言えないプラナリアには、どうにもその辺が掴めない。
(相性が悪いのかも、結構途中で投げ出してます・・・汗)
ところで、「植冶」は近代的な造園業の組織造りの嚆矢と思っていたのだけれども、
鈴木先生によれば、7代目植冶の段階においては、近世と近代の中間的形態の組織集団、ということになるらしい。
そして、同じような組織形態の例として、J.コンドルの「コンデル協会」や仰木魯堂の「仰木建築事務所」が取り上げられている。
様式主義の西洋館と近代数寄屋建築という、一見相反する建築を手掛けている建築家が取り上げられているが、
私的な領域で成立する「豪邸」というジャンル、そのパトロンという面においては、共通する。
こういったコンストラクション・マネージメント+分離発注といった建築生産ステムも、
住宅と言った私的な領域で質の高い建築を創る方法論としては、もう少し追求されても良いのかもしれない。
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桂離宮 自由自在
写真集をここまで舐めるように一枚一枚読んだのは、正直、初めて。
この本の良い点は、写真集らしからぬ、A5版という判型とカジュアルな造本にあるのではないだろうか。
三好氏の写真はひたすら美しいだけでなく、
「あ、そこの脇はどうなっているの?」「反対側から見るとどう見えるの?」
と言った建築家的欲求を見事に満たしてくれるのだが、
それは単に写真の枚数が多いことだけが理由ではないだろう。
というのも、掲載されている氏自身のエッセイに、
「タウトのスケッチにインスパイアされてこのアングルの写真を撮った」
という話が出てくるのだが、そのことから、ただただ何度も桂に通うだけでなく、
関連資料を読み込んで、とにかくあらゆる桂の魅力を撮りつくそう、という、
勤勉さ、というよりは貪欲さ?、が感じられるからだ。
しかも、結果としての写真は、一瞬の視覚的悦楽を感性で切り取った様にしか見えないところが気持ちが良い。
そして、ベッドの上でパラパラとページをめくりながら、その成果である目の悦楽に浸りながら、
離宮内の時間と空間を自在に行き来できるシアワセ。
西和夫先生(建築史家)の担当された解説も簡潔にして明快、分かり易く有難いが、
ちょっと黒子的な感じて編集者が書いているコラム的な取材・解説記事もとても良く書けていて、
脇役ではあるけれども、写真の添え物的なレベルではない点も、素晴らしい。
この本の良い点は、写真集らしからぬ、A5版という判型とカジュアルな造本にあるのではないだろうか。
三好氏の写真はひたすら美しいだけでなく、
「あ、そこの脇はどうなっているの?」「反対側から見るとどう見えるの?」
と言った建築家的欲求を見事に満たしてくれるのだが、
それは単に写真の枚数が多いことだけが理由ではないだろう。
というのも、掲載されている氏自身のエッセイに、
「タウトのスケッチにインスパイアされてこのアングルの写真を撮った」
という話が出てくるのだが、そのことから、ただただ何度も桂に通うだけでなく、
関連資料を読み込んで、とにかくあらゆる桂の魅力を撮りつくそう、という、
勤勉さ、というよりは貪欲さ?、が感じられるからだ。
しかも、結果としての写真は、一瞬の視覚的悦楽を感性で切り取った様にしか見えないところが気持ちが良い。
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ちょっと黒子的な感じて編集者が書いているコラム的な取材・解説記事もとても良く書けていて、
脇役ではあるけれども、写真の添え物的なレベルではない点も、素晴らしい。
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[週刊朝日百科]に復興小学校登場!
[分冊百科] 新発見!日本の歴史 近代6 戦前デモクラシーと「改造」の時代
再現!歴史の現場 復興小学校
イラスト 青山邦彦/監修・執筆 田中傑
監修は10数年来の友人。わずか見開き2Pですが、イラスト図解が楽しい!
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週刊 新発見!日本の歴史 2014年 4/20号 [分冊百科] 朝日新聞出版 2014-04-08 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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建築史から逃走せよ。
伊勢神宮の式年造営に因んで、井上章一さんの「伊勢神宮 魅惑の日本建築」を読んでみました。
それにしてもらしくない副題だ。。。
建築史学、考古学、民俗学等々の内部や相互の影響関係を眺めながらの学説史。
こんな地味なテーマを一般書で書いて、それなりに面白く読ませるのだから、
多少あざといところがあるにせよ、そこのところは良しとしたい。
改めて学会の通説を鵜呑みにするのは危険だ、ということを思い知らされました。
ただ、本書で残念だったのは、では、そのように伊勢を捉えてしまう背景にある文化や社会は、
と言った、文化史的なところまで視野が拡がって行かないところ。
例えば、大相撲の土俵上の屋根が入母屋→神明造(1931~)→柱なし神明造(1954~)と変遷している話や、
太平洋戦争中、南方戦線の海軍が神明造を嫌っていた、という話、
あるいは遺跡の復元は所詮テーマパーク(竪穴式住居は草葺でなく土葺らしい!)、という考古学者の話など、
もっと切り込んで欲しかったなぁ。
まぁ、著者自身あまり乗り気がしなかった本らしいし、仕方がないか。
さて、その井上章一さんを「風俗史家」と呼んだ藤森照信さんの本も読みました。
この本のベースとなっている茶の湯や茶室の歴史理解は、とっても通説に沿っています。
しかも、それらを熊倉功夫、中村昌生両先生に教えて貰ったというのだから、もう逆らえませんよねぇ。
なんで、その部分はアンマリ面白くはないのでした、個人的には。
ただ、ヌルイ通説から突然「利休の「待庵」は実はこうやって造られたのだ!」みたいな話が飛び出し、
さらに時代が下って明治維新後の話になると、もともとのご自身のフィールドだけあって、
もう向かうところ敵なし、というか、敵が出来ても気にしないぜ、と言う感じ。
で、読んでて思ったのですが、建築史に関する博識をベースに自在に建築論を語る、
というのは、文体は違えど磯崎新さんに似てるなぁ、ということ。
しかもこの本の最後に、その磯崎さんとの対談が出て来て締めになっているのであった。
・・・もう無敵です。けど、建築史家ではなくて建築家として。
で、結論としては、この本は「建築家」藤森照信の茶室・論である、と。
だから、「藤森さんは何であのような茶室を作ったのだろう」、
という理由が知りたい人にとっては、とっても面白くて参考になるのではないかと思います。
逆に、こっちが時々書いている茶室関連のエントリーの流れには、ちょっと馴染まない本では、ありました。
以上、建築史とは別世界に行ってしまった建築史家お二人の、著書を読んだ一個人の感想。
伊勢神宮 魅惑の日本建築 井上 章一 講談社 2009-05-15 >売り上げランキング : 287132 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
それにしてもらしくない副題だ。。。
建築史学、考古学、民俗学等々の内部や相互の影響関係を眺めながらの学説史。
こんな地味なテーマを一般書で書いて、それなりに面白く読ませるのだから、
多少あざといところがあるにせよ、そこのところは良しとしたい。
改めて学会の通説を鵜呑みにするのは危険だ、ということを思い知らされました。
ただ、本書で残念だったのは、では、そのように伊勢を捉えてしまう背景にある文化や社会は、
と言った、文化史的なところまで視野が拡がって行かないところ。
例えば、大相撲の土俵上の屋根が入母屋→神明造(1931~)→柱なし神明造(1954~)と変遷している話や、
太平洋戦争中、南方戦線の海軍が神明造を嫌っていた、という話、
あるいは遺跡の復元は所詮テーマパーク(竪穴式住居は草葺でなく土葺らしい!)、という考古学者の話など、
もっと切り込んで欲しかったなぁ。
まぁ、著者自身あまり乗り気がしなかった本らしいし、仕方がないか。
さて、その井上章一さんを「風俗史家」と呼んだ藤森照信さんの本も読みました。
藤森照信の茶室学―日本の極小空間の謎 藤森 照信 六耀社 2012-04-20 売り上げランキング : 76064 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
この本のベースとなっている茶の湯や茶室の歴史理解は、とっても通説に沿っています。
しかも、それらを熊倉功夫、中村昌生両先生に教えて貰ったというのだから、もう逆らえませんよねぇ。
なんで、その部分はアンマリ面白くはないのでした、個人的には。
ただ、ヌルイ通説から突然「利休の「待庵」は実はこうやって造られたのだ!」みたいな話が飛び出し、
さらに時代が下って明治維新後の話になると、もともとのご自身のフィールドだけあって、
もう向かうところ敵なし、というか、敵が出来ても気にしないぜ、と言う感じ。
で、読んでて思ったのですが、建築史に関する博識をベースに自在に建築論を語る、
というのは、文体は違えど磯崎新さんに似てるなぁ、ということ。
しかもこの本の最後に、その磯崎さんとの対談が出て来て締めになっているのであった。
・・・もう無敵です。けど、建築史家ではなくて建築家として。
で、結論としては、この本は「建築家」藤森照信の茶室・論である、と。
だから、「藤森さんは何であのような茶室を作ったのだろう」、
という理由が知りたい人にとっては、とっても面白くて参考になるのではないかと思います。
逆に、こっちが時々書いている茶室関連のエントリーの流れには、ちょっと馴染まない本では、ありました。
以上、建築史とは別世界に行ってしまった建築史家お二人の、著書を読んだ一個人の感想。
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