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映画(だけじゃなかった)館

加藤幹郎著「映画館と観客の文化史」を読みました。

映画館と観客の文化史 (中公新書)映画館と観客の文化史 (中公新書)
加藤 幹郎

中央公論新社 2006-07
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この本、面白いです。
ですが、取っ掛かりが悪い。
と言うのは、なんだかややこしい言い回し(表象文化論?)がお好きみたいで、
ニューアカ(デミズム)世代のプラナリアは今更こういうの嫌なんです、面倒くさくて。
(もちろんこちらの力の問題だ、ということは承知しておりますよ)

前置きが長くなりましたが、でも我慢して読み始めて、読んだ甲斐がありました。
とにかくネタが面白い。
映画館というのは一般的には静かに映画を鑑賞する場所と理解されている訳ですが、
そもそもは見世物小屋的なものだった(映画が見世物だった)訳で、
以降もながらく映画自体がワイワイ楽しまれるだけでなく(<踊るマハラジャ、ね)、
ライブパフォーマンス(しかも観客参加型)と共存していた、というのは驚きです。
箱(映画館の施設・建物)の変遷が図版入りで詳しく触れられているのもグッドです。
本書は通史と言うよりも、むしろこの特異な領域における突出点をさぐりあて、
それらを折れ線グラフのように繋ぎあわせて、映画館(観客)論の醍醐味を強調したかった。

 (著者「あとがき」から引用)
という著者の試みは成功していると言えましょう。
今後の課題である「それ以上の微分化」も是非、
(できればもう少し肩のこらない言い回しで)お願いできるととっても嬉しいです!

あと、余談ですが(同じ「あとがき」にある)
なお、本書がなぜアメリカ編と日本編で構成されているのかと言えば、
それは両国が世界に冠たる映画大国だからである。

は笑うところでしょうか?
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