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木村宗慎さんの「利休入門」


まずこの本は写真が良いよね。

利休入門 (とんぼの本)利休入門 (とんぼの本)
木村 宗慎

新潮社 2010-01
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で、中身ですが、それもなかなか面白い。

曰く
・名実ともに待庵は秀吉の茶室、というのが私の考えですが、
 そこで現場監督の利休がやったことは、一種の擬装でした。
 (と書いてバロックの虚構性との類似性を一席)
・茶道史における珠光は「侘び茶の祖」ですが、
 それは(中略)名物を持たない茶の湯のありかたを
 後世の茶人が勝手に「侘び茶っぽい」と思っただけでしょう。
・真の侘び茶は、珠光でも紹鴎でも利休でもなく、秀吉が体現していたのだと思います。
・名物道具の鑑賞においては、(中略)
 「有名人」が所持していたという事実、伝来が大事なのであって、
 あえていえば、物じたいのよしあしはどうでもよいのです。
・(利休形に関して)「利休とは関係ないかもしれないけれど、利休っぽいから素敵」
 というよく考えると不思議なものです。

バサバサ切りまくってますね。

利休に関しては、その事績の記録としてお茶の世界で長年重要視されてきた「南方録」という本が、
じつは江戸初期に書かれた偽書だった、ということが明確になって大分経っているようです。
本書は新進気鋭の茶人による、これらの研究成果を踏まえた、
茶の湯界内部での正統性に捉われない利休論として、大変楽しく読みました。
(でも何故か南方録の成立が1593年と書かれている、これは内容からして1693年の誤植かな?)
ですが、これで入門しちゃっていいのかな、という気もしないでもないです(笑)。
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