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建築史から逃走せよ。

伊勢神宮の式年造営に因んで、井上章一さんの「伊勢神宮 魅惑の日本建築」を読んでみました。

伊勢神宮 魅惑の日本建築伊勢神宮 魅惑の日本建築
井上 章一

講談社 2009-05-15
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それにしてもらしくない副題だ。。。

建築史学、考古学、民俗学等々の内部や相互の影響関係を眺めながらの学説史。
こんな地味なテーマを一般書で書いて、それなりに面白く読ませるのだから、
多少あざといところがあるにせよ、そこのところは良しとしたい。
改めて学会の通説を鵜呑みにするのは危険だ、ということを思い知らされました。

ただ、本書で残念だったのは、では、そのように伊勢を捉えてしまう背景にある文化や社会は、
と言った、文化史的なところまで視野が拡がって行かないところ。

例えば、大相撲の土俵上の屋根が入母屋→神明造(1931~)→柱なし神明造(1954~)と変遷している話や、
太平洋戦争中、南方戦線の海軍が神明造を嫌っていた、という話、
あるいは遺跡の復元は所詮テーマパーク(竪穴式住居は草葺でなく土葺らしい!)、という考古学者の話など、
もっと切り込んで欲しかったなぁ。
まぁ、著者自身あまり乗り気がしなかった本らしいし、仕方がないか。

さて、その井上章一さんを「風俗史家」と呼んだ藤森照信さんの本も読みました。

藤森照信の茶室学―日本の極小空間の謎藤森照信の茶室学―日本の極小空間の謎
藤森 照信

六耀社 2012-04-20
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この本のベースとなっている茶の湯や茶室の歴史理解は、とっても通説に沿っています。
しかも、それらを熊倉功夫中村昌生両先生に教えて貰ったというのだから、もう逆らえませんよねぇ。
なんで、その部分はアンマリ面白くはないのでした、個人的には。

ただ、ヌルイ通説から突然「利休の「待庵」は実はこうやって造られたのだ!」みたいな話が飛び出し、
さらに時代が下って明治維新後の話になると、もともとのご自身のフィールドだけあって、
もう向かうところ敵なし、というか、敵が出来ても気にしないぜ、と言う感じ。

で、読んでて思ったのですが、建築史に関する博識をベースに自在に建築論を語る、
というのは、文体は違えど磯崎新さんに似てるなぁ、ということ。
しかもこの本の最後に、その磯崎さんとの対談が出て来て締めになっているのであった。
・・・もう無敵です。けど、建築史家ではなくて建築家として。

で、結論としては、この本は「建築家」藤森照信の茶室・論である、と。
だから、「藤森さんは何であのような茶室を作ったのだろう」、
という理由が知りたい人にとっては、とっても面白くて参考になるのではないかと思います。
逆に、こっちが時々書いている茶室関連のエントリーの流れには、ちょっと馴染まない本では、ありました。

以上、建築史とは別世界に行ってしまった建築史家お二人の、著書を読んだ一個人の感想。
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