読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

オリガ・モリソヴナの反語法 米原万里 集英社文庫

2005-12-20 23:26:08 | 読んだ
いやあ、実に感動した。
ものすごく「骨太」の作品である。

弘世志摩(ひろせ・しま)は、少女時代の1960年から64年、チェコスロバキアのプラハに在住し、ソビエト大使館付属8年制普通学校に通う。
そこで、多くの友人を得たり初恋をしたりするが、それ以上に「オリガ・モリゾヴナ」という舞踏教師に出会い影響され、ダンサーを夢見るが挫折し、現在はロシア語の翻訳をしている。

そんな、志摩が92年秋に崩壊したソ連を訪れ、長年胸に秘めていた「オリガ」とその友人であるフランス語教師の「エレオノーラ」の謎を解きはじめる。

ロシアを訪れた志摩は、プラハ時代の親友「カーチャ」に出会うこともでき、いよいよ謎解きは核心に迫る。

それはソ連の暗く苛酷なスターリン時代に、いわれなき罪を着せられた人々が過ごした歴史をたどることになる。

私は初めて知ったのだが、スターリン時代の悲劇、ここに印象としてのソ連の暗さが有るような気がする。

扱われているテーマは「重く・暗く・やるせない」そして誰にぶつければいいのかわからない「不条理」が満載なのに、笑いがある。それも穏やかな笑い、にやついてしまう笑い、苦々しい笑いなど、多くの種類の笑いがちりばめられている。
だからこそ、重苦しい気持にならずに読み進めることができる。

人というのは「いいもの」なんだということがわかり、「いいもの」になったり出会えたりするのは、畢竟自分の生き方なのではないかと改めて感じている。
コメント (2)
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