読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

拝啓、父上様

2007-01-12 00:04:45 | 観た、聴いた
やっぱり「前略おふくろ様」を思い出してしまう。

あの主人公の語り、ドラマのテンポ、会話のつなぎ・・・
倉本聡だよなあ、と思う。
なんというか「封印」を自らがとりさった、というカンジである。
映像も、なかなかよい「らしさ」が出ていると思う。

しかし、やっぱり年月の差は大きいもので、物語を見ていて感じたことがある。

「前略おふくろ様」は、古いものを守ろうとするあるいは守らねばならないという『若さ』が前面に出ているのだが、その中にどうしても何かを壊してしまうようなもう一つの『若さ』があって、それが主人公のサブや彼をとりまく若い人たちのジレンマになっていたような気がする。

そして、その若さを見守る大人たちがしっかりしていた。頼りなさそうにしていてじつは『芯』があった、そんな気がする。

一方「拝啓、父上様」は、若い人たちそのものに『若さ』特に何かを壊そうとするものがないように思える。
それは現代社会の実相なのであろう。

その代わりといっては何だが、大人が幼い。
たぶん、主人公の母「雪乃」があの「恐怖の海ちゃん」のような狂言回しの役となっているのだろうが、どうも幼い。
もっとも、倉本聡さんは、あの手の(つまりわりと暗い過去を背負っているのにあっけらかんと生きている)女性が好きなようで、どこかで、その真実を吐露させるとは思うのだが・・・

そして、最もがっかりしたのは、大女将・夢子の旦那であったという大物政治家・熊沢が、病床に板前の竜次を呼び、遺言めいたことを語ったところであった。
大物とか偉い人とか呼ばれるようになったら、自分の言葉が思わぬところまで波紋を及ぼすということを知らないのだろうか?
ましてやいまや死なんとするとき、ああいうことは言うものではない。
死んでも誰かを縛りつけることになるのだ。(だからドラマが生まれるということもあるが・・・)

偉くなったり大物と呼ばれるようになったら、言葉を慎むべきである。
自分の何気ない一言が誰かを縛る、ということを常に頭においておかないといけない。

そういう配慮のなさが、近頃の大人には多いのである。
ということを、倉本さんは言いたかったのか、それとも、今後の物語の大きな伏線となっていくのか。
いずれにしても、彼の大人げのない言葉が、料亭・坂下の今後におおきな影響を与えることになり、物語としては面白くなるのではあるが・・・

主役の二宮和也は「清潔」というのがいい。
梅宮辰夫と高橋克実もいい味を出しているが、ときどきバラエティーのイメージが浮かんだりするのがつらい。

あまりドラマを見たいとは思わないのだが、これは見続けてしまいそうなのである。
コメント (2)
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