読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

離れの人 佐藤愛子 オール読物1月号

2007-01-13 19:47:39 | 読んだ
離れに住んでいる「絹」おばあちゃんは78歳。
このおばあちゃんのお話ですが、ナカナカ色っぽい話です。

この絹おばあちゃんは、神山質店という旧家の一人娘で、大事に育てられて、器量よしでおとなしい娘であった。
婿養子を迎えたが家業は衰退した、今は息子二人が持ち直しているところ。
まあ幸せな人生を送ってきたおばあちゃんなのである。

ところが、なかなかの艶福家であったらしい。
そのことをよく知っているのは、絹の母方の従姉妹で夫が戦死してから神山家に住んでいる菊枝と、関係した男たち。

そんな絹の離れの座敷に「男」がいるらしい。
見えるのは絹とお寺の和尚だけ。従って男は幽霊。その正体を絹は知らない。

面白いのは、菊枝と絹の関係である。
何にもしないのになんだか幸せな人生を過ごしている人(絹)と、一生懸命生きているのにその何にもしない人より劣る人生ではないかと思っている人(菊枝)。
菊枝が絹に対してひどく腹を立ている気持ちがよくわかる。
私もどちらかといえば、というか多くの人が菊絵のタイプだと思う。

幽霊のことと、絹がすごしてきた「あまりな」(うらやましいという意味の)人生がテンポよく語られ、人生をこういうふうに考えたことなかったなあ、と思ったのであった。
コメント
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