舞蛙堂本舗リターンズ!~スタジオMダンスアカデミーblog

ダンス(フラ・ベリーダンス他)と読書と旅行とカエル三昧の日々を綴る徒然日記。

He Mele No Lilo

2007-06-05 23:57:53 | 徒然話
3日のアカデミー・オブ・ハワイアンアーツの公演では、マーク・ケアリイ・ホオマル様を一躍有名にしたディズニー映画のテーマ曲「He Mele No Lilo」に使われたチャントも演じられていました。
メリーモナーク出場曲に加え、これも演目に入れてくださるなんて、なかなかサービス精神旺盛ですわマーク様。

でもこの曲、実はちょっとしたイワク付きなんですよ。
He Mele No Lilo、訳すと「リロの歌」という意味ですが、実は歌詞はリロとはまったくの無関係です。
冒頭部分の「Mahalo nui a ke ali'i wahine...」から始まるところはリリウオカラニ女王を讃えたものですし、メインのパートはカラーカウア王に捧げるチャントなのです。
どちらもオリジナルではなく、古くからある有名なチャントですね。
今回のプログラムにも「リロの歌」とはいっさい紹介されておらず、「カラーカウア王に捧げるチャント」と題されていました。
だから、ディズニーバージョンに聞き慣れていても気付かなかったという方がいらっしゃるかもしれません。
リロの歌は激しくアレンジされていて、イプヘケのビートも弱められていますが、このオリジナルチャントバージョンはマーク様の最初のアルバム「Po'okela Chants」にて堪能することができます。
こちらの方がよりソウルフルなので、ぜひ一度お試しを(←宣伝)。

まあそれはともかく、トラディショナルな、しかも高貴な人に捧げるチャントをこのように使って、ハワイの一部のオーソリティの皆さんが黙っているはずがありません。
ということでなんと「リロ&スティッチの主題歌の問題点は何か」という討論番組まで放映されたとか。
ううう、そんなもの放映されて、ガラスの神経のマーク様のご心痛たるやいかに...!!!

そりゃ、私も「なんでリロと無関係な歌詞なんだろう」と漠然と思ったのは確かです。
どうしてマーク様がそうなすったのか、その真意は私にも分かりませんし。
きっとハワイのオーソリティの方々からしてみれば、聖クルアーン(イスラームの聖典コーランのこと)の一節をそっくりそのまま娯楽映画の主題歌に使われちゃったような気持ちだったのかしら。うん、そう考えると私も少し分かる気がします。

でも、もしその歌がものすごく素敵で(ってのは主観の相違があるから一概にいえないけど)、なおかつ粗悪なパロディーではなく肝心の詞はちゃんと元に忠実なのであれば、必ずしも悪いことではないと私は思います。
まずなにより、普通だったら見向きもしないような人がそのジャンル(ここではハワイ語の歌詞やチャント)に興味を持つきっかけになるはず。
実際、うちにもこの映画をきっかけにフラを始めたというディズニーファンの方がいらっしゃいます。
フラに関していえば、本物のダンサーを忠実にアニメ化したというだけあり、某フラ映画の主演女優さんたちよりずっと本物の踊りが映ってますしね(そう考えるとあの映画も女優じゃなくて本物のダンサーを使えば良かったのにという後悔はあるなあ)。
そしてそこから「この歌は何と言ってるんだろう」とか「カラーカウア王って誰?」とかいった方向に興味を持ってもらえるのであれば、なかなか優秀じゃないですか「リロの歌」!!

...と無邪気に喜んでいたら先日、驚愕の映像を目にしてしまいました。
すなわち、現在ディズニーランドでやっているフラ団体のパフォーマンスを見ていたところ、映画で使われたマーク様の振りをそのままパクって踊ってる人々を目撃したのです...!!!
あ、あ、あ、ありえん。それ盗作ですよ。剽窃ですよ。しかもそれを、如何わしい路地裏でこっそり踊っているならまだしも、本家ディズニーランドの前でですよ。

これはパクった人たち(というか指導した先生)も悪いが、ビデオ審査をしたくせに採用したディズニー側も悪いです。
ディズニーはかなり著作権にうるさいという話を聞いていたし、私もこの問題に対しては作者も消費者も毅然とした態度が肝要と思っているからディズニーのその姿勢を評価していただけに、今回の件は残念すぎます。
ダンスの振り付けも「ミッキーマウス」とか「スティッチ」とかと同じ、立派な著作物ですよ。パクリはいけません、パクリは!!
しかもあのずさんな踊り方、意味のことなど一つも勉強せずに、形だけパクったにちがいありません。
マーク様の作品を...いえハワイのアイデンティティーたる高貴なチャントを、そんなふうに安易に扱うなんて許せ~~~ん!!!(怒)

あ、そうか。「リロの歌」を問題視したハワイの人達とすれば、大切な文化がうかつにメジャーな舞台にさらされたためにそんなふうに軽視されて、大安売り状態にされるのを危惧していたのかなあ。

というわけで映画やディズニーランドで「リロの歌」を聞いたら、それはリロのことではなくカラーカウアというハワイの王様をたたえた歌で、彼はハワイ文化を復興した偉大な王様であり、ついでに作曲したマーク様は素晴らしいチャンター&クムフラであることに、思いを馳せていただければ幸いです。

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