舞蛙堂本舗リターンズ!~スタジオMダンスアカデミーblog

ダンス(フラ・ベリーダンス他)と読書と旅行とカエル三昧の日々を綴る徒然日記。

カムエラに学ぶ「フラの美意識」

2014-06-01 04:14:36 | メリーモナーク
今回のメリーモナークで何よりも強く印象に残ったのは、やはりカムエラからミスアロハフラに出場したAsiaさんのこのアウアナの衣装でした。




速報記事にも書きましたように、あの衣装の元ネタはコレです。
我々のデモ衣装であり、福田真澄のオリジナルデザインでございます。
それを昨年2月のイベントで着た際、カムエラのクム・カウイさんが微に入り細に入り撮影してから約1年後、今年のメリモで披露されたのがこの衣装だったわけです。
「元ネタになったのはウチの衣装」というのが我々の勝手な妄想でも何でもない事は、当時の記事にもその顛末を記したとおりです。
何しろカウイさんは全体図だけにとどまらず、我々のドレスの生地のアップもヘッドドレスもくまなく撮影していらっしゃったため、よもや偶然の一致という事はありますまい。


こんな事をわざわざバラすのは、カムエラにデザイン料を請求する為ではもちろんなく(笑)、それ以外のいかなる権利も主張するつもりはありません(そうしたところで先方に「全く記憶にございません」と言われたらそれでおしまいですし)。
むしろ、ツボをしっかりおさえた見事な換骨奪胎には感嘆すべきものがあり、逆に我々の方が学ぶべき事もとても多かったです。


速報記事で具体例を挙げた通り、ただ目立つところを上辺だけ真似したのではなく、ドレス自体のシルエットも装飾品のコーディネートも、元ネタが狙ったものをしっかり踏襲し、劣化コピーではなく換骨奪胎に成功しています。
劣化コピーは簡単だけど(というか皆やってるけどw)、換骨奪胎が出来る人はあんがい多くありません。
元ネタの作り手だけでなく、真似した人の方にも確固たる美意識が無いとダメですね。

某所でカムエラ(のカウイさん)の事を「作り過ぎ」「クムの美意識を前面に出し過ぎ」と評する声を聞きましたが、私ゃその行き過ぎなほどの美意識こそがカムエラの魅力だと思いますよ。
そうでなければ、あの皆から真似されるセンスには決してなり得ません。




フラレアのNo.6(2001秋号)に、カムエラの先代クム、今は亡きパレカ・マトスさんの特集インタビューが載っています。
この特集が凄いの。何が凄いってヴィジュアルが。
13年前の出版ですからお手元にある人は少ないかもしれないけど、是非ご覧いただきたい記事です。

この記事で使われている写真は、すべてパレカさんがロケハンして撮影場所を決め、それぞれに相応しい装いもコーディネイトしたうえで撮られたものだそうです。
そのセンスがとにかくパネェ。
一枚一枚見ただけで鳥肌が立つレベルです。
背景と人物の色彩の相性、構図のバランス、そういった事柄についてこれほど細かい所まで考えている人物が、フラ界に果たしてどれだけいるでしょうか。

お手元に無い方の為にいくつかご紹介します。



私が一番好きな写真がこちらです。
さっき挙げた要素がもう完璧。パレカさんの何気ない立ち姿は全く気負いを感じさせませんが、さり気なく美しいポーズです。正面を向かず横顔にしたのもポイント高いですね。




当時アラカイだったカウイさんと。つうかカウイさん若ぇ(笑)。
よく考えたら今の私よりも10歳近く若いんだもんね…。そりゃ若いよね~。

そして何より、お二人のコーディネイトが素晴らしい。たとえニイハウシェルでも、ここに白いシェルとかもって来てたら完全アウトだったよ(皆やってるけどpart2)。
さっきの画像でパレカさんが白いニイハウシェルを付けていた時は、ちゃんと柄に白色が入っているドレスをお召しになってました。
世の中には「白なら何にでも合う」と思っちゃってる人が悲劇的に多い事を考えると、この「当り前のようでいて重要な事」をよく熟知しておられるパレカさんの美意識は本当に偉大です。




背景に合わせて衣装もレイもすべてお色直しされています。
ドレス・アクセサリー・ロケ現場に咲いているお花までが同系色のグラデーションになっていてとても美しいですね。




このオレンジ系の装いで撮影された写真が一番多く、どれも綺麗です。
おお、このカウイさんのアロハもお揃いですね。
というか、こういう写真ではやっぱりお揃いを着た方が綺麗だよなぁ。
一枚の写真に一緒に写っている人達の装いに何の統一感も無いんじゃ、なんのスナップ写真だよというゴチャッとした感じになってしまうものです。
だからメリモの授賞式をみても、お洒落な先生のお教室は先生同士がお揃いだったり、先生と生徒さんが共通性のある服装だったりして、やはりその方が並んで舞台に立たれた時に美しいですね。
そのあたりのパレカさんの高い美意識を受け継いで、今もカウイさんとクネヴァ様は完璧なお揃いで授賞式にお出になっているのでしょう。



見出しにもこのオレンジの色合いの写真が使われてました。
つーかフラレアさんよ、なんでこの期に及んで題字にピンクなんぞ使うんかいね。
ここはどう考えても題字もオレンジだろう。どうしてもピンクが使いたきゃなぜオレンジ系のを使わぬのだ。
しかもそのピンクも系統の違う2種類を混在させよって、出来上がった誌面をご覧になったパレカさんが「ぅゎぁ…………」とお思いになったであろう事は想像に難くありません。


ともあれ、この記事の鮮烈な印象が12年経っても醒めやらない我々のもとへ、去年のバレンタインコンサート出演時に訪ねていらしたのがカウイさんです。
我々の衣装について細かく訊き、パーツごとの写真を撮りまくるカウイさんの姿に、パレカさんが完全に重なって見えたのはごく当然の事でしょう。

これほど卓越したセンスをお持ちであったパレカさんが早くにこの世を去ってしまった事はカムエラにはもちろんフラ界全体にとって大きな痛手でしたし、何よりもご本人が無念でしたでしょうが、カウイさんはとても大切な事を確実にパレカさんから受け継いでいらっしゃると思います。
そんなカウイさんから我々が学ぶべき事は本当に多いです。


まず「そもそもフラに美意識は必要か」という根本的な事。
保守的な考え方の人達には、フラの衣装が本来の姿からかけ離れた斬新な方向に走ったり、必要以上に華美になりすぎたり、ヴィジュアルにこだわるあまり肝心の意味内容との合致が疎かになったりする事を忌み嫌う人もいるでしょう。
しかしながら、フラが今後も魅力的なものであり続ける為には、高い美意識を持って「より美しく、よりフラを映えさせる装い」を追求する事が必要です。


そしてメリモに限らず人前のステージで踊る場合、装いに気を遣うのはもうほとんど義務と言っていいでしょう。
内輪のパーティーやレッスンじゃあるまいし、普段着や練習着の延長のような格好で踊るのでは観客に対して失礼です。
もちろん全員が全員流行の最先端の衣装で踊らなくちゃならないわけじゃありません。先生の考え方によって敢えて流行を追うのを良しとしない方針であるならばそれでもいいのです。そのお教室なりの「気を遣った装い」であれば良いと思います。
(※ただし、自分が追うか追わないかは別としてフラ業界にも確かにファッションの流行は存在していますし、見る人が見ればそれが最先端なのか、ちょっと遅れているのか、だいぶ遅れているのか、はたまた流行などハナから無視しているのかは一目瞭然である、という事は決して無視出来ない事実です)


とはいっても、自分では何が素敵なのか判断出来ないけど素敵な装いはしたい、流行の最先端とまでは言わずとも追いかけてはいたい、というダンサーやお教室は少なくないでしょう。というかそれが大部分だと思います。
そういう場合、多くの人は「素敵なものを見よう見まねでコピーする」という行動に出ます。
たとえば今回取り上げたカムエラの衣装など、パレカさん時代から今に至るまで、あらゆる場所で「む、こりゃカムエラのマネだな」という装いで踊っている人を数えきれぬほど見て参りました。


しかし、ここで注意せねばならないのは、劣化コピーは却って逆効果という事です。
「劣化コピー」とは、元ネタの意図を全く理解せず、目立つ部分だけ上辺を真似した代物の事であり、カウイさんの「換骨奪胎」とは真逆に位置する行為です。
衣装に限らず、振付けでもコレをやっちゃってるダンサーをしばしば見かけます。


衣装における劣化コピーの例を挙げると、猫も杓子も真似したカムエラの3段スカートが分りやすいですね。
メリモでカムエラのお姉ちゃん達が着ている分にはあまり感じなかったかもしれませんが、実をいうとあの衣装は立っているだけでは着ている人のスタイルを良く見せてくれるようなものではありません。
本領を発揮するのはあくまでも踊っている時です。踊り出すと、そらもう驚くほどの分量の生地が3段それぞれに使われており、それがカムエラ独特の回転の多い振付によってふわりばさりと翻る事で絵が劇的に変わり、覿面の効果をもたらすのです。

ところがどっこい、これを上辺だけ真似したドレスは、確かに3段ではあるけれど、分量が絶対的に足りない為にこの効果がまるで無い。
あのとんでもない分量は意味があっての事なのですぞ。
某アパレル業者の社長さんが「ウチでもカムエラと同じ衣装を作ってるけど、元ネタどおりに作ろうとしたらあまりに生地を使いすぎるので自主的に分量を減らした」とおっしゃった時は、廊下にバケツ持たせて立たせて2時間ばかし説教しようかと思いましたよ。だぁらアンタが作ってるのは「同じ衣装」じゃないッつの(しまった、つい口調が本性を現してべらんめえに)。
そういう風に何も分らず勝手に分量を減らしてしまうと、踊った時の効果がまるで得られなくなり、そうするとそもそもこのドレスは体型を良く見せる効果を持っていませんから、何一つ役に立たない謎の物体になってしまいます。


劣化コピーは、このように元ネタが本来持っている効果を全く再現出来ないばかりでなく、なまじ上辺だけ真似してるもんだから観客には「あ~、アレのマネだな」と無駄にバレてしまうという非常に残念な代物です。
誰かの衣装を真似する際は、カウイさんほど見事な換骨奪胎とまではいかずとも、せめて劣化コピーにだけはならないよう、「どうしてその衣装が素敵なのか」を完全に分析した上で真似する事が必要です。







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…明け方の謎テンションに突入してしまった筆者に憐れみのクリックを頂ければ幸いです。この時期、明るくなるの早過ぎ……。

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