福岡市民劇場10月例会で東京芸術座公演『蟹工船』を観劇しました。
この劇は小林多喜二の小説『蟹工船』を舞台化したもので、私はこの小説を読んだことはありませんが、労働者搾取をテーマにしたプロレタリア文学だと、習った記憶があります。
小林多喜二が『蟹工船』を発表したのは約80年前だそうで、この小説が今、又ブームを呼んでいるのは、『蟹工船』の時代が今の日本の社会に似ているからだといわれています。
表面的には当時とは比べものにならない程、豊かな今の社会のどこが、多喜二が生きた時代と似ているのか不思議ですが、ワーキングプア、格差社会等の言葉が身近で語られ、「派遣村」が設けられる現代にあって、もしかしたら『蟹工船』の時代と今は、どこかで深くつながっているのかもしれないと、観劇しながら思いました。
カムチャッカ沖の荒海での4ヶ月に及ぶ過酷な労働。カニを引き上げ、缶詰にする作業を一日16時間してへとへとに。休日も与えられず少しでも手を休めるとひどいリンチ。舞台上ではこの過酷な労働のシーンに多くに時間がさかれていました。
船のへさきの向こう側で波に見立てた布を上下させる事により、時化で船が上下左右に揺れる姿を表現していましたが、なかなか臨場感のある舞台装置で、観客である私も、揺れる船に乗っているような錯覚を覚えるほどでした。
舞台上では常に30人以上の役者さんが演技をされ、群像劇(?)というか主人公がいない劇で、セリフとセリフの間にその30人が一斉に、船の揺れに合わせて前のめりになったり、また後ろにひっくり返りそうになったりの演技をされ、見ている私も何だか船酔いを感じるほどのリアルさがありました。そして多くの登場人物のキャラクターもはっきり描き分けられていて、メリハリの利いた舞台に仕上がっていました。
後半では厳しい環境の中で酷使される蟹工船の労働者や乗組員達が、一つにまとまる事の重要性に気付き、みんなで協力して待遇改善を求める要求書を監督に突きつけます。最後の場面では、蟹工船の労働者達が、自分たちを守ってくれていると信じていた帝国海軍の駆逐艦乗組員が蟹工船に乗り込んできて、無法者の監督らを拘束するのではなく、労働者たちに銃を突きつけて終わりました。
後味の悪い幕切れでしたが、小林多喜二の時代の象徴的な小説であり、当時を表している内容になっていると思う事で納得しました。
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