南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

自賠責保険

2005年11月20日 | 交通事故民事
 自賠責保険とは、一般には強制保険といわれているものです。
 「自賠責保険」は略語で、自動車損害賠償責任保険と正式にはいわれます。
 なぜ強制といわれるかといえば、法律で保険を契約することを強制されているからです。
 自賠法(自動車損害賠償保障法)は、「自動車は、自賠責保険の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない」と定めており(5条)、自賠責保険つきの車であることを知りながら運転した場合は、刑事罰にまで問われます。
 保険というものは、通常、被保険者が保険金を請求できるものです。
 もちろん、自賠責保険でもそのような保険金の請求ができることになっています(15条)。
 しかし、さらに自賠責保険は保険としての通常の理屈を超えて、特別に被害者請求というものを認めました(16条)。
 これは、被害者から直接自賠責保険会社に損害賠償の請求を認めるものです。
 この被害者請求は、被害者側からは非常に重要な機能を果たすので、次回以降にまたご説明したいと思います。 
  

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交通事故証明書

2005年11月19日 | 交通事故民事
 交通事故証明書とは、自動車安全運転センターが発行する事故にあったことを証明する文書です。
 記載されている内容は、
 ・交通事故にあった日時、場所
 ・当事者
 ・自賠責保険の保険会社、証明書番号
 ・事故態様
です。
 このうち、事故態様は、「追突」とか「出会い頭」などの簡単な記載しかないので、どのような実際に事故だったのかということはこの事故証明書を見てもわかりません。ですから、事故証明があるだけでは、過失が存在するのか、どのような損害があったのかもわかりません。
 申請方法については、自動車安全運転センターのホームページに記載があります。
 交通事故証明書にはまれに誤った記載がなされる場合があります。
 発生場所の住所が違っていたケースを私も経験したことがありますので、事故証明書を入手されたら、間違いがないかどうかよく確認していただいたほうが良いと思います。


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青い本

2005年11月18日 | 交通事故民事
 「赤い本」については説明しましたが、「青い本」というのもあります。 
 「青い本」は正式名称を、「交通事故損害額算定基準」といい、財団法人日弁連交通事故相談センターが毎年出しています。
 2004年版では「非売品」扱いとなっており、弁護士会で「寄付」をすればもらえる仕組みとなっておりました。
 赤い本と青い本では、発行元が違うため、基準についても微妙に異なったり、表現が違うものがあります。
 私の周囲で見ている限り、「赤い本」の方を使用している方が多数派であり、青い本を毎年買い換えている人は見ないですね。
ところで、財団法人日弁連交通事故相談センターは、日弁連の関連の財団法人で交通事故の無料法律相談や示談斡旋、審査を行っています。相談所は、各地の弁護士会に併設されているところが多く、ホームページに相談所の連絡先が載っています。

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赤い本

2005年11月17日 | 交通事故民事
 交通事故の損害賠償実務に携わっている人々が参照する本で、通称「赤い本」と呼ばれています。
 正式名称は、「損害賠償額算定基準」で、従前は非売品扱いでした。 
 といっても、本をもらうのに「寄付」をしなければならなかったので、実質的には買えたのですが・・・。
 今は、どうやら非売品扱いではなくなり、定価が本にも記載してあります。
 この本、毎年改訂版が出ています。
 といっても、基準自体はそう毎年毎年変わるわけではなく、判例を差し替えたり、増やしたりしています。また、東京地裁の交通部の裁判官の講演が毎年行われるようで、その講演録が変わります。この講演録が弁護士にとっては大変勉強になるのですが、一般の方にとっては難しすぎるかもしれません。
 赤い本はあまりにも有名なのですが、この本を読み解くのは容易ではありません。それは解説が書いていないからです。
 なぜ、そのような基準が定立されているのか、どのようにしたらより適切な賠償を勝ち取れるのかということは、この本だけからでは読み取れません。
 弁護士でもこの本をただ漫然と読んでいるだけでは勉強になりませんで、さらにこの本の注解本が出版されていますので、そのような本を頼りに勉強をするわけです。
 赤い本を参考にして、少し勉強すれば、一応損害賠償を算定することはできますが、さらに深い知識と適切な立証手段を獲得していくのは、一朝一夕にはできないものです。
 特に、交通事故関係は、交通事故工学や医学知識が必要とされる場合があるからです。
 赤い本はあくまで法律問題のごく一部の知識を集約したものにすぎませんし、基準というのも変わっていくべきものでありますので、これを絶対視することは避けたほうがよいと思います。


 

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控訴

2005年11月16日 | 交通事故民事
 控訴(こうそ)というのは、一審ででた判決に対して高裁に不服申し立てをするものです。
 控訴できる期間は、一審の判決を受け取った日から2週間以内(受け取った日は入りません)です。
 この場合、控訴状に所定の収入印紙を貼って、一審裁判所に提出しなければなりません(高裁ではありません。ここは間違いやすいところですが)。
 控訴すると高裁で再度審理をすることとなりますが、一審で提出した書類はすべて高裁に引き継がれます。さらに新たな証拠を提出することもできますが、一審で証拠を完璧に提出していれば提出しているほど、高裁で提出するものはないということにはなります。
 高裁で新たな証拠を提出することが少なければ、高裁は1回の審理で終結させ、和解を勧告するというのが流れです。
 高裁での和解は、一審での和解と変わりありませんので、「和解」の項目を参照してください。
 高裁で和解が成立しない場合は、高裁が判決をします。
 高裁の判決に対しては、最高裁に対して「上告」(じょうこく)ができますが、上告は、原則として、憲法違反・判例違反に上告理由が限られているため、交通事故民事裁判では、最高裁で逆転するチャンスは少ないと考えてよいと思います(全事件を通しても最高裁での逆転率は2%程度です)。
 ですから、交通事故民事裁判では、高裁の判断で確定しやすいということはいえます。和解するか判決にするかは、このあたりも念頭においてしなければなりません。



  

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判決

2005年11月15日 | 交通事故民事
 判決(はんけつ)は、原告の訴えに対する裁判官の判断を示したものです。
 和解が当事者の合意を基本とするものであるのに対し、判決は主張と証拠に照らして裁判官の判断が示される点が違います。
 以下、一審の判決について説明します。
 訴状には「請求の趣旨」と「請求の原因」とが大きくわけられると説明いたしましたが、判決もこれにそって、「主文」という部分と「理由」という部分に大きく分かれます。
 「主文」は、交通事故裁判の場合、「被告は、原告に対し、金〇〇円を支払え」というような形になります。つまり、被告が原告に対していくら払うべきなのか(又は払わないのか)を簡潔な形で明らかにするのです。
「理由」では、当事者の主張を要約した上で、裁判官の判断が示されます。
 
 判決期日には、法廷では、「主文」が朗読されるだけなので、詳細な理由は判決文を見なければわかりません。判決文は、弁護士がついている場合は、弁護士事務所に送られてくるので、弁護士は判決期日に立ち会わないことが多いです。ですから、判決期日も出たいという希望のある方は、この点を弁護士にあらかじめ述べておくことが必要でしょう。
 判決は従来から比べればわかりやすい形式で書かれるようにはなってきましたが、まだまだ一般の方にはわかりにくいと思いますので、その内容がよくわからない場合は、弁護士に聞くことが必要です。
 

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訴訟上の和解

2005年11月14日 | 交通事故民事
 訴訟上の和解(わかい)というのは、お互いの合意で双方がある程度歩み寄って合意により訴訟を終了させることをいいます。
 単に、「和解」と呼ぶことが多いですね。
 一般に、民事の裁判官は、判決よりも和解による解決を好みます。
 これは、民事事件では、お互いの合意で事件を終結させたほうが良いという考えのほか、和解のほうが判決よりも裁判官にとっても労力を要しないという理由もあります。
 判決文が10ページ、20ページとなるのは珍しくないですが、和解であれば1,2ページにしかなりませんので、裁判官の労力としては和解のほうが圧倒的に少ないのです。

 交通事故訴訟では、判決をすることを前提として、費目ごとに裁判官が自分の考えを示して、和解案を提示することが多いです。
 これを原告、被告が検討し、双方の案を再度持ち寄り、裁判官の調整を得たうえで、和解できるのであれば和解し、そうでなければ判決に進むという形になります。
 

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調査嘱託

2005年11月13日 | 交通事故民事
 調査嘱託(ちょうさしょくたく)は、裁判所から他の機関に調査をお願いする(嘱託)ものです。
 文書送付嘱託は、裁判所から他の機関に文書の送付をお願いするものですが、文書の送付をお願いするのではなく、調査も依頼することができるわけです。
 この場合、文書送付嘱託とは手続が違うので、調査嘱託と呼ぶことになっています。
 調査嘱託も、原告か被告のいずれかの申請があることが基本で、それに対して裁判所が必要性を認めれば、裁判所から嘱託をすることになります。つまり、何でもかんでも裁判所が嘱託をかけるというわけではありません。
 交通事故民事裁判でよく見られる調査嘱託は、病院への照会です。
 例えば、被害者側が飲酒していたのではないかという疑いがある場合、その有無及び程度を知るために、加害者側が、被害者が入院した病院に対して「アルコールの検知状況」を調査嘱託申請することがあります。
 被害者の病院へは直接照会をかけても、被害者の同意がなければ加害者は調べられませんので、このような方法を使うわけです。
 このように、調査嘱託はどうしても自分では調べられないときに使用されます。自分で調査できるものについては、自分で調査するのが原則ですから、調査嘱託がかならず交通事故民事裁判で行われるというわけではありません。 

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文書送付嘱託

2005年11月12日 | 交通事故民事
 文書送付嘱託(ぶんしょそうふしょくたく)というのは、文字を見てもなんのことやらおわかりいただけない可能性が大です。
 例えば、後遺症の被害者が原告となって、加害者を被告として訴えを提起したとします。
 被害者側は後遺症1級というような主張をしたとしますが、被告側としてはこれは被害者側のカルテを見てみないことには原告の主張を認めるとも認めないともいえないなと考えることが多いのです。
 ところが、加害者側が被害者のカルテを被害者がかかっている病院に要請したとしても、病院側は応じてはくれません。
 そこで、加害者側は、裁判所に対して、「被害者のカルテ(文書)を病院から裁判所に送ってくれるように要請(嘱託)してください」という申立をします。
 これが、文書送付嘱託申立です。
 このように、文書送付嘱託は、当事者が容易に取得できない文書を裁判所を通じて取りよせることのできる手段で、交通事故訴訟では、カルテなどの医療記録や交通事故記録の取り寄せに活用されることがもっとも多いです。
 「文書」送付嘱託となっていますが、純粋な文書だけでなく、CTやMRI等の画像も対象になります。 


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証拠・甲号証・乙号証

2005年11月11日 | 交通事故民事
 証拠(しょうこ)というのは、訴状や準備書面で書かれている事実を裏付けるものです。
 提出する証拠には番号をふって提出しなければなりません。 
 原告が提出する場合は、甲第*号証(こう だい*ごうしょう)、
 被告が提出する場合は、乙第*号証(おつ だい*ごうしょう)
というようにナンバーをふります。
 甲とか乙とかいうとかなり時代めいていますが、今の裁判制度は明治時代からのものが引き継がれているので、そのときからの伝統でしょう。
 ちなみに、外国人の事件で英語通訳さんなどは、甲号証を「A類型の証拠」、乙号証を「B類型の証拠」などと説明しています。この方が、今の日本人にはわかりやすいかもしれません。
 話をもとにもどしますが、
 甲号証(こうごうしょう)は、原告側の提出証拠
 乙号証(おつごうしょう)は、被告側の提出証拠
と覚えておいてください。
 証拠は事実を立証するためのものなので、法律や判例に書いてあることは原則として証拠に提出する必要はありません。
 もっとも、医学的な専門知識、交通工学的な知識など裁判官があまり得意としないような領域については、やはり証拠として提出する必要があります。
 また、普通の人なら知っている常識的なこと(これを法律用語では「経験則」といいますが)も証拠として提出する必要がありません。
 交通事故の場合、どのような損害を生じたかについては被害者側に提出する責任がありますので、証拠の収集を弁護士から依頼される場合も多いと思いますが、ご理解いただきますようお願いします。 


 

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