南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

弁論準備期日

2005年11月10日 | 交通事故民事
 弁論準備期日(べんろんじゅんびきじつ)は、法廷ではなく、準備室という会議室のようなところで、ある程度時間をかけて争点を整理していく手続です。
 弁論期日と似たような用語ですが、次の点が違います。
1 場所が違う
 弁論期日は法廷で行いますが、弁論準備期日は準備室で行います。
2 かける時間が違う
 弁論期日では5分から10分くらいしかかけられませんが、弁論準備期日の場合30分程度まで時間をとっております。
 これは、弁論準備期日が争点がたくさんある事件でディスカッションをしながら、その争点を整理していくことを目的としているからです。
3 裁判官も法服は着ない
 弁論期日では裁判官は法服を着ておりますが、弁論準備期日では裁判官は法服を着ず、普通のスーツ姿で現れます。
4 傍聴人はたくさんは入れない
 法廷は傍聴人が何人も入れる構造になっていますが、弁論準備期日で使用する準備室はそう広くないところもあります。例えば、東京地裁の交通部の準備室は2~3人の傍聴人しか入れないようになっています。また、傍聴するにも裁判官の許可が必要となります。

 当初は、裁判は弁論期日で行われますが、裁判官の裁量により弁論準備期日にまわされることがあります。
 交通事故事件の場合、細かい争点が複数出る場合が多く、弁論準備期日に回され
ることが多いようです。 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

弁論期日

2005年11月09日 | 交通事故民事
 弁論期日(べんろんきじつ)というのは、公開の法廷で行われる裁判の期日を言います。
 裁判官は当事者よりも高い壇の上に座り、黒い法服というのを着ています。
 傍聴席から裁判官を見ると、左側に原告、右側に被告が座ることとなる法廷が多いようです。
 公開の法廷ですから、誰でも傍聴することが可能です。
 社会的によほど注目されない限り、傍聴券というのは発行されず、自由に法廷を出入りすることが出来ます。
 弁論期日の時間は、5分から長くても10分程度です。
 内容は、既に提出されている準備書面や証拠を正式に提出する手続が行われます。
 訴状や準備書面を正式に提出するのは、
裁判官「訴状(又は準備書面)を陳述されますね。」
代理人「はい、陳述します。」
とこれだけです。
 証拠も、
裁判官「証拠を提出されますね。」
代理人「はい、提出します。」
とこれだけです。
 準備書面や証拠の内容が分からない人からは、何をやっているのかよくわかりませんが、準備書面や証拠の内容をいちいち法廷で述べていたら、時間がかかりすぎてしまうためやむを得ない措置です。
 裁判官は、次回の進行についての当事者の意見を聞き、それに基づいて次回までに何をしてもらうのかを決め、双方又は片方の当事者に「次回までにはこのようなことをやってください」と課題を課します。
 次回期日を決めて、弁論は終わりになります。
 この間、弁護士の代理人がついている事件では、早口で専門用語がとびかうので、お分かりにくいかも知れませんが、弁論期日が終わってから、どのような内容だったのかしっかり弁護士に聞いていただくことが必要だと思います。


 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

準備書面

2005年11月08日 | 交通事故民事
 準備書面(じゅんびしょめん)は、原告や被告の主張を書面で書くものです。
 訴状が、訴訟の大きなテーマを示すものであるとすると、準備書面は、そのテーマに対して個別に深く掘り下げていくことができます。
 準備書面で書く内容は、相手方からの主張に対する反論であったり、自分の主張の補強であったりします。
 なぜ「準備」というかというと、これは「期日の準備」という意味があるからです。民事裁判の期日は、1ヶ月か2カ月おきに開催されますが、期日にいきなり複雑な主張をされても、裁判官も相手方も困りますので、期日の前に(通常は1週間くらい前)書面を提出してくださいということになっており、これが準備書面です。
 準備書面を見て、裁判官も相手方も期日までに、その準備書面に対してどのように対応するのかを準備し、期日においては、その準備書面でよくわからないところを口頭で質問し、次の対応を決めることができるのです。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ひきにげ事件が急増している

2005年11月07日 | 未分類
 全国交通事故遺族の会が、ひき逃げ事件に厳罰を求める署名活動を展開しているという記事が出ていました→こちら
 同記事では、ひき逃げ件数等について次のように紹介しています。

 警察庁によると、昨年のひき逃げ事件は1万9960件で、99年の8781件から5年間で約2.3倍に増えた。ひき逃げ、業務上過失致死罪の罰則はいずれも5年以下の懲役。両罪を併合しても、最高懲役は1.5倍の7年6月だ。
 01年に新設された危険運転致死傷罪は最高懲役20年と重い。大野さんは「ひき逃げにも同等の罰則を与え、『逃げたら損』という意識を持たせるべきだ」と主張する。

 確かに、厳罰も必要かもしれませんが、ひき逃げが増えたのは、”交通関係では厳罰に処せられる、一か八か逃げてしまえ”という心理状況があるからで、この心理状況を変えるには厳罰化だけではだめで、徹底検挙し、”逃げても逃げきれるものではない”という状況をつくることも必要だと思います。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

訴状

2005年11月06日 | 交通事故民事
 訴状(そじょう)は、原告が民事裁判を始めるにあたって裁判所に提出する初めの書面です。
 訴状を提出することを「訴えを提起する」と言います。
 訴状の内容は、大きく分けて二つあります。
 ひとつは、「被告は、原告に対し、金〇〇円を支払え」という部分です。
 ここが判決の主文にもあたるところで、これを「請求の趣旨」といいます。
 もうひとつが「請求の原因」です。
 ここには、どういう理由から、請求の趣旨で書いた金額を求めるのかということを書きます。 
 交通事故の場合は、
 1 どのような交通事故が起こったか
 2 それに対してどのような損害が生じたのか
ということを書いていきます。
 訴状では損害などを漏れのないように一通り書いていくのですが、すべての主張をここに盛り込む必要はありません。というのは、被告の反論などに応じて、適宜主張を追加したり、変更したりすることが可能だからです。
 訴状は、訴訟の中心的テーマとなりますので、弁護士から案を示された時は、その内容をよく説明してもらってください。そして、よく理解したうえで、弁護士に対しオーケーを出すようにしていただいたほうがよいと思います。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

原告・被告

2005年11月05日 | 交通事故民事
 原告は、民事裁判を申し立てた者をいい、申し立てられた者を被告といいます。
 言葉のもともとの意味からいけば、
「原告」は、告げた(=訴えた)もと(原)になった人で
「被告」は、告げられた(被)人
という意味しかありません。
 ところが、日本人には「被告」はかなり悪いニュアンスで響くようで、被告となった人は一様に自分が悪いことをしたのでしょうかという感想を抱くようですが、裁判ではそのようなニュアンスはありません。
 刑事では起訴された人を「被告人」(ひこくにん)というので、それとの混同でそのようなニュアンスが広まってしまったのかもしれません。ただ、「被告人」というのも、「訴えられた人」という意味しかありませんから、悪いことをした人というニュアンスは本来的にはないのですが。
 交通事故民事裁判では、通常、被害者側が原告、加害者側が被告ということになることが多いです。
 これは被害者側が加害者側に、これこれの支払いをせよということを求める訴訟となるからです。
 もっとも、例外はあり、加害者側が原告、被害者側が被告という場合もあります。
 これは、加害者側から「これこれ以上の支払い義務はない。」または「まったく支払い義務がない」
ということを求められた場合です(これを「債務不存在確認訴訟」といいます)。
 原告・被告は1名ずつとは限りません。
 それぞれ数名いるときもありますし、片方が1名で他方は数名という場合もあります。
 交通事故の内容によって、原告・被告の数は変わってきます。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

交通事故民事裁判用語集(使い方)

2005年11月04日 | 交通事故民事
 この交通事故民事裁判用語集は、交通事故民事裁判に関してよく出てくる用語の解説をしていきたいと思います。
 法律用語は、日本語ではありますが、明治時代に作られたものが多く、漢語で今の日本人から見るとかなり堅い用語や、使用されない用語、また、日常用語で使用されていてもニュアンスの違う用語というものがあります。
 これらについて、法律家は特に解説をしないで使用してしまいますので、一般の方にはとてもわかりにくいのかと思います。
 そこで、よく使われる用語の解説集があればよいのかなと思い、用語集を気のついたときに書いていこうと思います。
 カテゴリにおいても「交通事故民事裁判用語集」というものを作りましたので、画面左側でご確認いただければ幸いですし、このブログの検索もできるようになっているので、そこから検索していただくのもよい方法かと思います。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

諸費用ー遷延性意識障害(植物状態)者について 3

2005年11月03日 | 遷延性意識障害
 最後に、特別仕様自動車の購入費です。
 遷延性意識障害の方が使用する形態の自動車にするためには、それ相応の改造費が必要となりますから、その改造費の代金を請求しました。
 自動車については、6年が減価償却期間となっておりますので(税務上の扱い)、これをもとに、6年ごとの買い換えと考えて請求しました。
 民事交通事故訴訟損害賠償算定基準(赤い本)においても、
 「被害者の受傷内容、後遺症の程度・内容を具体的に検討し、必要性が認められれば相当額を認められる。風呂場・トイレ・出入口・自動車の改造費などが認められている」
とされており、自動車の改造費相当分については当然認められるべきものと考えておりましたが、裁判所はこれをそのままでは認めませんでした。
裁判所は、
 1 原告が在宅介護を受けるとしても、医師は原告宅に通ってくるのだから通院のために車を用いる必要性は少ない。
 2 特別に外出する場合は、タクシーなどを利用する方法がありうる
 から、特別仕様車までは不要である
として、請求の半分以下である200万円をタクシー利用代などとして認めました。
 これは、遷延性意識障害者の外出を特別扱いするものであり、不当であると思います。
 遷延性意識障害者でも、戸外に外出し、刺激を与えることが必要であるという認識がこの裁判官にはなかったのではないかと思えてなりません。

 以上、遷延性意識障害者について、
 1) 平均余命の認定の問題
 2) 介護料の問題
 3) その他の諸費用の問題
と連載をしてきました。
 遷延性意識障害についての連載はひとまずこれで終えることとします。
(完)



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

諸費用ー遷延性意識障害(植物状態)者について 2

2005年11月02日 | 遷延性意識障害
 次に、光熱費の増額分ですが、これは自宅で介護をしますと介護器具等の使用や洗濯などにより、光熱費が増加することを報告書として作成し、その増額分を認めたものです。
 私が担当したケースでは、年間9万6000円(1ヶ月あたり8000円)を認めました。
 
 介護器具代金及び将来雑費についても請求し、認められました。
 介護器具代金については、それぞれの器具の必要性を立証し、耐用年数ごとに中間利息を控除して請求したところ、請求額全額を認められました。
 将来雑費は、紙おむつ、ガーゼ、カテーテルなどの介護器具代金という範疇には収まらないものを請求しました。
 請求額全額は認められませんでしたが、年額50万円を裁判所は認めました。
(続)
 
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

諸費用ー遷延性意識障害(植物状態)者について 1

2005年11月01日 | 遷延性意識障害
 遷延性意識障害においては、介護に際して様々な費用がかかってきます。
 この費用関係についても法律上請求できるものがありますので、本連載においては、これらを紹介いたします。
 私が担当したケースで請求し、認められたものは以下のとおりです。
 1 家屋改造費
 2 光熱費増額分
 3 介護器具代金・将来雑費
 4 特別仕様自動車の購入費
 以下、順番に説明します。
 まず、家屋改造費ですが、これは自宅で介護することを前提とすると、通常の家屋で遷延性意識障害者を介護することは不可能ですので、自宅をバリアフリー仕様に改造する必要があります。
 民事交通事故訴訟損害賠償算定基準(赤い本)においても、
 「被害者の受傷内容、後遺症の程度・内容を具体的に検討し、必要性が認められれば相当額を認められる。風呂場・トイレ・出入口・自動車の改造費などが認められている」
という記載があり、遷延性意識障害が自宅介護を要するケースにおいて家屋の改造費用がまったく認められないということは多分ないのではないでしょうか。
 もっとも、家屋の改造費用を請求しても、全額が認められるかというとなかなかそうはいきません。
 裁判所は、
「家屋改造は家屋の改良にもなり、家屋改造の予定の中には他の家族の生活利便性が向上するものも含まれているから、本件事故との相当因果関係を全部認めるのは相当ではない」
という論理で、請求費用を一定金額に制限する傾向が根強いです。
 私が担当したケースにおいても、請求額の6割は認めるが、4割は事故との因果関係はないとされました。
(続)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする