NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#464 ビージーズ「Lonely Days」(Polydor)

2024-07-13 07:37:00 | Weblog
2024年7月13日(土)

#464 ビージーズ「Lonely Days」(Polydor)




ビージーズ、1970年11月リリースのシングル・ヒット曲。バリー・ギブ、ロビン・ギブ、モーリス・ギブの作品。ロバート・スティグウッド、ビージーズによるプロデュース。

英国のロック・グループ、ビージーズは、バリー(46年9月生まれ)、ロビン、モーリス(共に49年12月生まれの双子)のギブ兄弟により1958年に結成され、2012年にロビンが亡くなるまで、半世紀以上にわたって活動を続け、数々のヒット曲を残している。

特に筆者の世代の記憶に残っているのは、70年代後半にディスコ・サウンドを大胆に導入、映画「Saturday Night Fever」の音楽を担当、「Night Fever」をはじめとするヒットを飛ばして、一大ブームとなったことだろう。

だが、その全盛期に至るまでには、いろいろと紆余曲折があり、決して穏やかな道のりばかりではなかった。

グループの歴史を結成当時から紐解き出すと、本欄の1回分の量を大幅に超えてしまうので、それはあえて書かない。

とりあえず、69年時点のビージーズについて、見ていこう。

67年の「New York Mining Disaster 1941」のヒット以来、彼らは2年間で全世界的なヒット曲を数多く出し、押しも押されもしない、そんなトップ・グループに成長していた。未来は順風満帆に見えた。

しかし、問題点はあった。3人兄弟のコーラスが売りのビージーズではあったが、メインボーカルに誰がフィーチャーされるかを、ロビンは非常に気にしていた。多くのヒット曲でリードを取ってきた彼は、自分の声に自信があったからだ。

ところが、彼らのプロデューサー、ロバート・スティグウッドは、長兄のバリーをフロントマンとみなして制作していた。これに対するロビンの不満が高まっていったのだ。また、メンバー間の確執もいろいろとあったという。

同年2月には初の2枚組アルバム「Odessa」をリリース。ロビンはテレビのショー番組への出演を最後に、ライブに登場しなくなる。そして、3月後半にビージーズからの脱退を宣言して、ソロ活動に入ってしまう。

6月にはベスト・アルバム「Best of Bee Gees」をリリース。バリーとモーリスはふたりで次作「Cucumber Castle」のレコーディングを9月まで続ける。ふたりによる先行シングル「Don’t Forget to Remember Me」は英国ではヒットしたが、米国では不発。続く2曲も米国ではウケず、世界のトップ・グループの面影は、もはやなかった。

ロビン抜きのビージーズは、魅力が半減してしまった。その厳しい現実が、これでよく分かる。

70年4月にアルバム「Cucumber Castle」をリリース。全英57位、全米94位という残念な結果となってしまう。

これにより、グループはいよいよ崩壊の危機に晒される。ついにバリーとモーリスも別々の道を歩むようになり、それぞれソロ・アルバムのレコーディングに入ってしまう。ともにリリースされるまでには至らなかったが、バリーはシングル1枚のみリリースしている。これはチャートインしなかった。

一方、ロビンは同年2月にファースト・アルバム「Robin’s Reign」をリリースする。すでに前年6月リリースのシングル「Saved by the Bell」が全英2位のヒットとなっており、それを含んでいたものの、商業的にはヒットしなかった。ロビンの方も、世界的シンガーからローカル・スターレベルに落ちてしまったのだ。

分裂により、いわば一挙両損の状況となってしまったビージーズ=ギブ兄弟は、その後どうしたか。

グループを抜けたロビン本人が、休暇でスペインに滞在していた兄バリーの元に電話をかけてきて「またやろう」と言ったのである。そして、3人で充分に話し合い、再結成を決め、8月21日に発表となった。

これにより、20年以上生活を共にしてきた彼らは、わだかまりなく、再び合流できたのである。やはり、血の絆は何よりも強いものだね。

空中分解状態から脱出した3兄弟は、さっそくレコーディングに入る。そして完成したのが本日取り上げた一曲「Lonely Days」である。

再結成が決まるや、バリーの家の地下室ですぐに書かれたという本曲は、ロンドンのIBCスタジオでレコーディング、11月にリリースされた。

3人のコーラスによる、ゆったりとしたヴァースで始まる。一転してテンポチェンジ、力強いピアノに乗ったユニゾンコーラス、そしてあの強力無比なハーモニーが復活する。これぞ、ビージーズだ!

誰がメインとかいうのでなく、全員がフィーチャーされているのがいい。後半のバリーと、ロビン&モーリスの掛け合いも、ソウルフルでカッコよい。

本曲は前3曲とは違ってたちまち大ヒット、全米3位、全英33位に輝いた。

その後も「How Can You Mend a Broken Heart」を翌71年5月にリリース、彼らとしては初めて全米1位を獲得した。

この2曲は70年11月リリースのアルバム「2 Years On」(全米32位)に収められている。

2年という暗中模索日々を経て、ひとつにまとまったギブ3兄弟。その後は別れることなく活動を続け、70年代後半には過去以上の栄光を掴むこととなる。

兄弟の固い絆が生み出した名曲、「Lonely Days」。このリユニオンなくしては、77年のサタデー・ナイト・フィーバーの熱狂もまたなかった。

彼らの黄金のハーモニーに、70年代ポップの真髄を感じ取ってほしい。