電話の声は女の声でした。しかし経理員にそのことを話すと、『私が取った電話の人は男でしたよ』と首を傾げています。
男と女…
女は冬の天気を訊け、と言うがどうなっているんだろう?
社内規定に照らし合わせるまでも無く誰が内部通報したかよりも不正な事実かどうかを究明することが先決だろう…
部長は頭の中で整理して工場へ来たのでした。そして結果 工場長の自宅を調べても何もなかった。担当部長や××課長もやはりシロでした。その他の社員に訊いても疑惑の噂すら出てきません。
経理部長は同行の経理員と相談の上今回の密告はガセネタと結論づけて帰ったのでした。 ただ最後の日事務所の玄関先で冬の天気を訊いて皆と違う返答をした女子社員がいたことが少し気になりました。
時間の都合で話せなかったが本社に戻って考えて見るとあの密告は現場関係者の告白ではなかったと思えたのです。工場関係の組織は今年刷新されていて工場長以下幹部連中はまだ悪い事が出来るだけの関係が築けていないと見るべきでした。
…じゃあ何のために…経理部長はこの地方工場には全く縁がありませんでした。工場の名簿を見ても知らぬ名前ばかりです。 部下の経理員に訊いてみても同じでした。
内部告発を受理したまでは良かったのですが、いかんせん工場内部の情報に疎く実情が把握できませんでした。
私、つまり比較的近い立場の運転手に探りをいれたがこれもだめ! (意外とボンクラだった(笑)
ここまで考えて工場に着いたのでした。
経理部長は着くとまず一番に総務課長を呼び出しました。
『本橋課長、君はなぜ呼ばれたか分かるかな』
ここはブラフつまりカマをかけたのでした。すると以外にあっさりと
『すみません、私がやりました』と頭を下げたのでした。
そうだったのか… 実は新任の工場長とちょっとした言葉の行き違いから 口論になったそうです。それから事あるごとに本橋課長に辛く当たっていたのでした。
最初は我慢していた本橋課長も遂に堪忍袋が切れて密告(チクった)のでした。ワイロについては証拠はなく単に嫌がらせだったと言います。一通り話をしたあと 『しかしなぜ私だと分かったのでしょう』
本橋課長は涙を浮かべ経理部長に問いました。
『さぁ…』部長は一度言葉を切ってから考えました。 『私は内部告発によって工場の現場関係者を捜した。私は気がつかなかったが後で考えると猟師の後ろに狐が周る話を思い出したんだよ。なにせ私は田舎出身だからね』部長はニヒルな笑いを浮かべながらタバコを咥えました。
『…』本橋課長は何のことか分からないまま経理部長を見ていました。
コンコン!ノックがしました。
『どうぞ』
例の彼女つまり事務員が 『失礼します』と入ってきました。 『お茶をどうぞ』 『ありがとう』
手招きした部長はもう気が付いていたのです。
彼女の顔が生き生きしていることで…
最終電車に間に合うように私は慎重に急いでいました。
部長は朝の饒舌とは変わって真っ暗の外を眺めていました。
多分鬼塚専務にどう報告しようか、と迷っていたのでしょう。
結果として総務の本橋課長のニセの密告とわかりました。 しかしその影には同じ総務の女性事務員がいました。どうやらこの女性事務員は工場長と不倫関係にあるみたいです。本橋課長を追及すれば明白となるでしょう。
事実を鬼塚専務に報告すれば二人の会社人生は間違いなく終わりです。工場ではこの件は完全に伏せてありますからこれは自分の胸三寸でどうにでもなること。会社には被害が無かったとしたら… 狩猟の成果は上がらなかった時猟師は後ろの狐を撃つのだろうか……経理部長は難しい選択肢を選ばなければなりませんでした。(完)
男と女…
女は冬の天気を訊け、と言うがどうなっているんだろう?
社内規定に照らし合わせるまでも無く誰が内部通報したかよりも不正な事実かどうかを究明することが先決だろう…
部長は頭の中で整理して工場へ来たのでした。そして結果 工場長の自宅を調べても何もなかった。担当部長や××課長もやはりシロでした。その他の社員に訊いても疑惑の噂すら出てきません。
経理部長は同行の経理員と相談の上今回の密告はガセネタと結論づけて帰ったのでした。 ただ最後の日事務所の玄関先で冬の天気を訊いて皆と違う返答をした女子社員がいたことが少し気になりました。
時間の都合で話せなかったが本社に戻って考えて見るとあの密告は現場関係者の告白ではなかったと思えたのです。工場関係の組織は今年刷新されていて工場長以下幹部連中はまだ悪い事が出来るだけの関係が築けていないと見るべきでした。
…じゃあ何のために…経理部長はこの地方工場には全く縁がありませんでした。工場の名簿を見ても知らぬ名前ばかりです。 部下の経理員に訊いてみても同じでした。
内部告発を受理したまでは良かったのですが、いかんせん工場内部の情報に疎く実情が把握できませんでした。
私、つまり比較的近い立場の運転手に探りをいれたがこれもだめ! (意外とボンクラだった(笑)
ここまで考えて工場に着いたのでした。
経理部長は着くとまず一番に総務課長を呼び出しました。
『本橋課長、君はなぜ呼ばれたか分かるかな』
ここはブラフつまりカマをかけたのでした。すると以外にあっさりと
『すみません、私がやりました』と頭を下げたのでした。
そうだったのか… 実は新任の工場長とちょっとした言葉の行き違いから 口論になったそうです。それから事あるごとに本橋課長に辛く当たっていたのでした。
最初は我慢していた本橋課長も遂に堪忍袋が切れて密告(チクった)のでした。ワイロについては証拠はなく単に嫌がらせだったと言います。一通り話をしたあと 『しかしなぜ私だと分かったのでしょう』
本橋課長は涙を浮かべ経理部長に問いました。
『さぁ…』部長は一度言葉を切ってから考えました。 『私は内部告発によって工場の現場関係者を捜した。私は気がつかなかったが後で考えると猟師の後ろに狐が周る話を思い出したんだよ。なにせ私は田舎出身だからね』部長はニヒルな笑いを浮かべながらタバコを咥えました。
『…』本橋課長は何のことか分からないまま経理部長を見ていました。
コンコン!ノックがしました。
『どうぞ』
例の彼女つまり事務員が 『失礼します』と入ってきました。 『お茶をどうぞ』 『ありがとう』
手招きした部長はもう気が付いていたのです。
彼女の顔が生き生きしていることで…
最終電車に間に合うように私は慎重に急いでいました。
部長は朝の饒舌とは変わって真っ暗の外を眺めていました。
多分鬼塚専務にどう報告しようか、と迷っていたのでしょう。
結果として総務の本橋課長のニセの密告とわかりました。 しかしその影には同じ総務の女性事務員がいました。どうやらこの女性事務員は工場長と不倫関係にあるみたいです。本橋課長を追及すれば明白となるでしょう。
事実を鬼塚専務に報告すれば二人の会社人生は間違いなく終わりです。工場ではこの件は完全に伏せてありますからこれは自分の胸三寸でどうにでもなること。会社には被害が無かったとしたら… 狩猟の成果は上がらなかった時猟師は後ろの狐を撃つのだろうか……経理部長は難しい選択肢を選ばなければなりませんでした。(完)