鬼塚課長の横顔が泣いていました。 それはもういいんだよ…そんな風に見られました。
高辻主任は鬼塚課長の心情が手にとるように判りました。
下手に慰めるのも考え物だね。深読みできる高辻主任はそう考えて違う話題を話始めました。
『最近どこも不景気になりましたね』オイルショックの余韻がなかなか抜け切らない関西では主力先のM電器も苦戦でした。 SやC電器も業績が回復しません。 鬼塚課長、高辻主任のコンビもさすがに音を上げていました。
そして悪いときには重なるもので納品の品質不良が発生したり、納期遅滞が起きたりと踏んだり蹴ったりの連続です。
そして事業部内では鬼塚課長の手腕を疑う声が上がり始めました。
つまり関西で一発当てた鬼塚課長に対するやっかみです。
『言いたい奴には言わしとけばいいんだよ~』強気の鬼塚課長はめげることもなく怪気炎を上げていましたが暫くして本社に呼び出されました
『とうとう来やがったか! 』半分は覚悟はしていましたがいざ、となるとやっぱり鬼塚課長も人の子でした。盟友の高辻主任とミナミで飲み明かしました。
『明日俺東京に戻るけど、もう帰ってこられないかもなぁ~』普段からは見られない弱気な鬼塚課長でした。いつもおおらかで強気な鬼塚課長ですが芯は優しい気配りの細かい人でした。たぶん判っているのは高辻主任くらいでしょうか…最もこんな姿を他の人の前では絶対に見せない人でもありました。
高辻主任も今度はヤバイと思っていましたから、変に同情はせずにいました。ただ
『今夜はゆっくりと飲みましょうや』二人は腰を据えて飲むつもりでした。
ところで…話題を変えました『あの子はどうしているんです?』『あぁ別れちゃったよ…』大阪の彼女でした。
『喧嘩してさ、昨日出て行ったよ』 会社でもそして私生活でも鬼塚課長は荒れていましたから…
仕事に私生活に上手く行かない時期でした。明日の本社からの呼び出しは恐らく職変えを申し渡されるはずでした。つまり違う部署への配置転換です。
折角作り上げた関西の地盤が何の苦労も知らない奴に取って変わるのです。 高辻主任は思いました。『今は底だから』確かに景気は最悪の状態です。おまけに品質管理の弱点も露呈した状態では
もはや打つ手なしでした。
しかし高辻主任には考えがありました。
『鬼塚課長本社への呼び出しは明後日ですよね』
『ああそうだよ。』明後日の朝一番でしたから明日には東京に入るつもりです。
『明日はどうするのですか』
『明日夕方に東京に入るよ』多分埼玉の実家に泊まるつもりなのでしょう。
『明日朝一番で行ったらどうですか』『朝一?』
高辻主任は大きくうなずきました。 どうやら秘策でもあるようです…
高辻主任は鬼塚課長の心情が手にとるように判りました。
下手に慰めるのも考え物だね。深読みできる高辻主任はそう考えて違う話題を話始めました。
『最近どこも不景気になりましたね』オイルショックの余韻がなかなか抜け切らない関西では主力先のM電器も苦戦でした。 SやC電器も業績が回復しません。 鬼塚課長、高辻主任のコンビもさすがに音を上げていました。
そして悪いときには重なるもので納品の品質不良が発生したり、納期遅滞が起きたりと踏んだり蹴ったりの連続です。
そして事業部内では鬼塚課長の手腕を疑う声が上がり始めました。
つまり関西で一発当てた鬼塚課長に対するやっかみです。
『言いたい奴には言わしとけばいいんだよ~』強気の鬼塚課長はめげることもなく怪気炎を上げていましたが暫くして本社に呼び出されました
『とうとう来やがったか! 』半分は覚悟はしていましたがいざ、となるとやっぱり鬼塚課長も人の子でした。盟友の高辻主任とミナミで飲み明かしました。
『明日俺東京に戻るけど、もう帰ってこられないかもなぁ~』普段からは見られない弱気な鬼塚課長でした。いつもおおらかで強気な鬼塚課長ですが芯は優しい気配りの細かい人でした。たぶん判っているのは高辻主任くらいでしょうか…最もこんな姿を他の人の前では絶対に見せない人でもありました。
高辻主任も今度はヤバイと思っていましたから、変に同情はせずにいました。ただ
『今夜はゆっくりと飲みましょうや』二人は腰を据えて飲むつもりでした。
ところで…話題を変えました『あの子はどうしているんです?』『あぁ別れちゃったよ…』大阪の彼女でした。
『喧嘩してさ、昨日出て行ったよ』 会社でもそして私生活でも鬼塚課長は荒れていましたから…
仕事に私生活に上手く行かない時期でした。明日の本社からの呼び出しは恐らく職変えを申し渡されるはずでした。つまり違う部署への配置転換です。
折角作り上げた関西の地盤が何の苦労も知らない奴に取って変わるのです。 高辻主任は思いました。『今は底だから』確かに景気は最悪の状態です。おまけに品質管理の弱点も露呈した状態では
もはや打つ手なしでした。
しかし高辻主任には考えがありました。
『鬼塚課長本社への呼び出しは明後日ですよね』
『ああそうだよ。』明後日の朝一番でしたから明日には東京に入るつもりです。
『明日はどうするのですか』
『明日夕方に東京に入るよ』多分埼玉の実家に泊まるつもりなのでしょう。
『明日朝一番で行ったらどうですか』『朝一?』
高辻主任は大きくうなずきました。 どうやら秘策でもあるようです…