寝転がって気ままに想う事

 世の中ってこんなもんです・・
面白可笑しくお喋りをしましょうか ^^

幸運の女神様(七)

2010年09月02日 08時57分14秒 | 日記
鬼塚課長は公私共に最悪の状況に置かれていました。おまけに本社からの呼び出しは配置転換でしょう。
自棄(やけ)になった鬼塚課長に高辻主任はアドバイスを出しました。
明日の朝一番に東京に戻りまず川中部長に会うことを勧めました。川中部長は鬼塚課長や高辻主任の上司でした。鬼塚や高辻の関西の開拓で部長に昇進したのでした。いわば一蓮托生運命共同体です。 この川中部長を使って事業部長を説得させるのです。高辻主任の調べでは景気の回復は政府の財政投融資の発令が始まっているので遅くとも三か月くらいで回復すると見ています。(凄いねぇ)経済短観でも同様の見方がありました。つまりここしばらくを乗り越えれば景気は回復して自然、業績も戻るのです。
また弱点の品質管理に於いては専門知識を持った人材を育成していくのが急務ですが、即戦力を投入すれば必ず解決していく自信がありました。どちらにしても三か月から半年は我慢の期間でした。問題はこの半年をどう乗り切るかに掛かっています。ここさえ乗り切れば後は馬成りで行けるのです。 ここまで考えて高辻主任は今回の本社からの呼び出し、つまり人事移動は作為的なものを感じました。
『これは別の派が動いているかも…』高辻→鬼塚→川中部長→斉藤役員 はひとつのラインでした。他に幾つかの派があります。ラインや派は世間でよく言う派閥ですが、絶対的な強固さはありませんでした。 特に出来たばかりの事業部でしたから、他の事業部からの寄せ集まりは早く自分の居場所を確保しょうとしていました。派はそのための手段だったのです。
サラリーマンである以上こんな世処術は必要でした。『今回は状況から派の対抗戦になるかもな』高辻主任はこのライン切っての策略家でした。翌日朝早く鬼塚課長は高辻主任から伝授された秘策を胸に新幹線に乗り込みました。
車中鬼塚課長はいろいろ思案を巡らせました。高辻主任からのアドバイスは的確で頭一杯考えてもこれ以上の名案はとても思い浮かびません。 『これで上手く行かなきゃあ仕方ないぜ』開き直った鬼塚課長はふと目を窓の外にやると ちょうど富士山がきれいに臨めました。朝日に差したそのお山は神々しくさえ見えました。思わず見とれていた鬼塚課長はふと思い付いたのでした。
『広子どうしてるかな』頭に広子の顔が浮かんできたのです。
広子…つまり東京の婚約者でした。大阪の赴任問題で喧嘩に成りながらも電話で辛うじて繋いでいました。 最も大阪の彼女が出来てからはしばらく疎遠になっていました。二人の交際は一時停止状態でした。
『いまさら…』一瞬もそんなことは出てきませんでした。携帯の無い時代です。鬼塚課長は直ぐさま電話のある車両へと飛び出していました。
コメント
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